Cozre Report
調査レポート

『消費者の見えない気持ちを読み取るためには?』~家事代行サービス業者を選択する際に消費者が重視すること~


1.はじめに

私は家事が苦手だ。正確に言うと、必要最低限のことしかやらないため、苦手かどうかさえわからない。洗濯と目に見える範囲内の掃除のみだ。料理はしない。目に見えない箇所はずっと綺麗なままと信じ掃除はしない。そんな私でさえ、それしかしない私でさえ、洗濯も目に見える範囲内の掃除も面倒くさく思えるときがある。夫婦共働き家庭にとっては、何をか言わんやであろう。

近年、政府による女性活躍社会の推進、共働き世帯の増加による家事に対する価値観の変化等により「家事代行サービス」の事業機会が増加していると頻繁に耳にするようになった。本レポートでは、そんな「家事代行サービス」に対し消費者が真に望むものは何なのか、つまりは事業機会が増加するとともに企業間競争が激化するなかで、消費者が家事代行サービス事業者を選択する際に何を重視するのかを明らかにしたい。

 

2.家事代行サービス

弊社コズレ子育てマーケティング研究所が以前行った調査によると、家事代行サービスを「現在、利用している」もしくは「過去、利用したことがある」人の合計はおよそ4%にすぎなかった。一方で、利用したい人は65%にものぼる。「利用したい人」の割合に比べ「利用経験者」の割合が圧倒的に少ないことから、家事代行サービスなるものは、おそらく消費者の購買行動上、購買意欲(=利用したい)と実際に選択購入する(=利用する)間に大きな溝が存在するのかもしれない。この大きな溝を埋めるためにも、実際の消費者が選択購入する際に何に戸惑いを感じ、なぜ選択購入という最終の意思決定に躊躇するのか、そしてその改善策を呈示することは極めて意義のあることだと思う。

ところで消費者は、もし「家事代行サービス」を利用しようと考えたとき、何を重視して事業者を選択するのだろうか。私が今、思い浮かぶだけでも「サービス内容」、「サービス提供時間帯」、「営業日」、「スタッフの国籍」、「スタッフの技術力」、「申込み方法(webやmailで可能)」、「会社の信頼性」、「サービス価格/料金体系」等、さまざまある。マーケターとしては、この数多くある選別対象の中で、消費者が何を重視するのか、何らかの調査・分析を通じて知りたいだろう。

ここで、あなたがノートパソコンを購入するときの選択理由を思い浮かべてほしい。ノートパソコンにも、重さ、CPU、デザイン(色)など多くの属性が存在し、あなたはそれらを比較検討し選択に至る。もちろんこれまで、あなたがた消費者がいかなる属性を重視するのかさまざまな調査が行われてきた。通常のアンケート調査では、「あなたは以下の属性をどの程度重視しますか」という質問に対し、例えば属性として、重さ、CPU、デザイン(色)、価格が並べられ、それらを1(全く重視しない)~5(非常に重視する)の5段階評価をするよう求められたりする。そこであなたは、重さ、CPU、デザイン(色)、価格のすべてが重要であるから、すべての回答に5(非常に重視する)をチェックする。そのような結果を多くの被験者が行った場合、つまりはいずれの属性の平均値も同様に高くなった場合、分析者はどの属性が真に重要なのか見出すことができるだろうか。どの属性を優先して準備してよいのか、機能として内包すべきなのかわからず、非現実的な提案しか出来なくなってしまうだろう。

上記例では、調査項目間が相互に独立していることが前提になっているが、つまり、消費者が各製品属性を相互に独立して評価しているということが前提になっているが、はたしてそうだろうか。事実、私自身、ノートパソコンを購入する際、各属性を各々評価することはなく、重さと価格のみセットで考慮し製品を比較したりする。要は、消費者は全ての条件を同時に見比べて、いずれかの条件を優先したり妥協したりしているのであって、条件間の相対的重要度が大切になるのである。それらを考慮した分析法が「コンジョイント分析」という手法である。

コンジョイント分析とは、複数の要因間でどの要因が重視されているのかを相対化して推定することにより明らかにすることができ、何より複数の条件を同時に考慮する処理方法であるため、実際に消費者が購買行動時に思考する形態に類似していると考えられている。マーケターにとっても水準の組み合わせ評価をシミュレーションすることができ、かつ最適な水準の組み合わせを考えることができる。いずれにせよ、相対的に重要な属性がわかり、消費者の心の奥底に潜んだ(ことばに表現できない)心理を明らかにすることができる分析手法である。

簡単にノートパソコンの事例で「コンジョイント分析」のイメージを記したい(図1参照)。今、ノートパソコンA, B, Cがあり、各ノートパソコンの比較対象として4つの属性(価格、重さ、デザイン(色)、CPU)、また各属性にはそれぞれ3水準(価格;9.8万円・12.8万円・14.8万円、重さ;764g・964g・1,200g、デザイン(色);白色・黒色・ゴールド、CPU;Core i3・Core i5・Core i7)があるとする。ノートパソコンAは、9.8万円・1,200g・黒色・Core i5であり、ノートパソコンBは、12.8万円・964g・ゴールド・Core i3、ノートパソコンCは、14.8万円・764g・白色・Core i7であるとき、被験者にA, B, Cのノートパソコンのうち購入したい順に1位から3位まで記述してもらうだけで、消費者がどの属性を重視しているのか(=相対的重要度)、また各属性の中でどの水準を重視しているのか(=効用値)、かつ最適な水準の組み合わせを呈示することができるのである(注;上記例を実際にコンジョイント分析する場合、4つの属性に各3水準ずつあるので直交表を用いても9枚のカードを作成する必要があるが、ここではあくまでも分析イメージをお伝えすることを優先した)。

 

図1 ノートパソコンの各属性と水準例

notepc

 

本レポートでは、「利用したい人」の割合に比べ「利用経験者」の割合が圧倒的に少ない家事代行サービスにおいて、その大きな溝を埋めるべく消費者が心の奥底に抱いている家事代行サービス事業者を選択する際に重視する属性を、コンジョイント分析を用いて明らかにする。

 

3. 調査

弊社コズレ子育てマーケティング研究所では、2018年3月14日(水)から3月20日(火)にかけて、「家事代行サービス」の現状についてインターネットを用いたアンケート調査を行った。調査対象は主に妊娠期~3歳のお子様(末子)を持つママパパ4,018名である。

さて、コンジョイント分析を見越した調査において重要になるのが「属性」と各属性の「水準」決めである。まず、主要な家事代行サービス事業者のホームページを閲覧し、差異があるものとして「営業日」と「営業時間」を抽出し、これらを属性として採用することに決めた。次に、弊社コズレ子育てマーケティング研究所が以前行った調査から、家事代行サービスを実際に選択購入する(=利用する)には、信用性の問題などから知らない人を自宅にあげることに不安があったり、そもそも他人を自宅にあげることが嫌であったりすることがわかっていたため、「守秘義務契約に関する詳細情報の開示」と「研修プログラムに関する詳細情報の開示」も採用することにした。以上4つの属性の各水準は、営業日が2水準(土日祝日除く・年中無休)、営業時間が3水準(9時から18時まで・9時から20時まで・24時間)、守秘義務契約に関する詳細情報の開示が2水準(なし・あり)、研修プログラムに関する詳細情報の開示が2水準(なし・あり)とした。

以上、4属性、各属性の水準は2, 3, 2, 2ずつあり、合計で2×3×2×2=24通りの組合せが考えられるが、直交表により8通りの組み合わせを準備すればよく、この8通りのカードを被験者に呈示し、1位から8位までを順位付けして頂いた(注;実際は2通りのホールドアウトカードも合わせた10枚のカードを呈示している)。

 

4. 分析と結果考察

コンジョイント分析結果の要約が図2である。まず、相対的重要度をご覧頂きたい。それによると4つの属性のうち、最も重要なのは属性B(29.572)であり、次に重要なのが営業時間(29.038)で、以下、属性C(23.066)、属性A(18.324)と続く。もちろん本調査結果は、消費者が家事代行サービスを実際に選択購入する(=利用する)際に、「営業日」、「営業時間」、「守秘義務契約に関する詳細情報の開示」、「研修プログラムに関する詳細情報の開示」の4属性を重視するであろうとの仮説のもとでのものであり、他の属性を新たに加えたりした場合には結果は異なるものとなる。いずれにせよ、本調査結果から言えることは、属性Bが最重要視されており、ほぼ同じく営業時間も重視されているということ、そして属性Aはそれほど重視されていないということである。次に、効用値をご覧頂きたい。今、属性Bが最も重要視されている属性であることは分かったが、なかでもどちらの水準が重視されているかは効用値により、ここでは水準(キ)のほうであることが分かる。ちなみに2番目に重視されている属性の営業時間では、水準(オ)が重視されていることが分かる。

以上、本調査結果から、コンジョイント分析に用いた4つの属性では「属性B」、「営業時間」、「属性C」、「属性A」の順に重視されており、また属性Bの中では「水準(キ)」が重視され、「営業時間」の中では「水準(オ)」が重視されていることが分かった。

 

図2 コンジョイント分析結果

図2 コンジョイント分析結果

 

5. まとめ

本レポートでは、通常のアンケート調査(例;「あなたは以下の属性をどの程度重視しますか」という質問に対し、属性として、重さ、CPU、デザイン(色)、価格が並べられ、それらを1(全く重視しない)~5(非常に重視する)の5段階評価をするよう求められる)から得られるデータでは、ときにマーケターが非現実的な提案しか出来なくなってしまうことに対し、現実的なマネジメント施策に採用できるような結果を見出すことができるよう、より消費者の購買行動時の思考に合致したコンジョイント分析を用いることを前提とした調査を行った。そして事例として「利用したい人」の割合に比べ「利用経験者」の割合が圧倒的に少ない家事代行サービスを対象とすることで、一連の消費者の購買行動のうち、購入意欲(=利用したい)と購入(=利用)の間に存在する大きな溝、つまりは消費者の見えない気持ちを明らかにしたいと考えた。

結果、4つの属性では「属性B」、「営業時間」、「属性C」、「属性A」の順に重視されており、また属性Bの中では「水準(キ)」が重視され、「営業時間」の中では「水準(オ)」が重視されていることが分かった。また、コンジョイント分析の優れている点は、図2に記した効用値を用い、最適な属性・水準の組み合わせを考えることができるのみならず、各企業が有す現状の経営資源を考慮した現実的な属性・水準の組合せをシミュレーションできることにある。

さて、家事代行サービスを選択購入する(=利用する)際に重視する属性は上記のような結果であったが、これは子育て関連製品を製造・販売する企業のマーケターにとっても大きな示唆がある。つまり、子育て関連製品をマーケティング・マネジメントする際に常に問題となる「購入者と使用者の違い」から購入者の真の商品・サービス選択理由が曖昧であることに対して、その明確化に何らか可能性が見込めるからである。すなわち、コンジョイント分析を用いることで、より消費者の購買行動時に思考する形態に類似した調査を行うことができ、またメーカーのマーケターとしても現実的な属性・水準の組合せをシミュレーションし、製造・販売することができるからである。おそらく多くの子育て関連製品を製造・販売する企業は、消費者の真の選択理由が曖昧で悩んでいることだろう。1つのヒントとして本調査における分析方法・結果が活かせるのではないだろうか。

 

以上、子育て関連製品をマーケティングする際に、製品・サービス購入者の真の選択理由が曖昧で悩まれている方、ぜひともコズレ子育てマーケティング研究所にご連絡ください。各種調査の実施はもちろん、分析・提案・コンサルティング業務まで一連のマーケティング支援をさせて頂きます。また、A~Cの具体的属性名ならびに(ア)~(ケ)の具体的な水準名など、本調査に関することはお気軽にお問い合わせください。

 

(コズレ子育てマーケティング研究所 飯野)

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