Cozre Report
調査レポート

「液体ミルク」~消費者の意識とメーカーの課題 パート1~


1.はじめに

今、乳児向け製品市場で最も注目度が高いのは、(粉)ミルク市場ではないだろうか。国産「液体ミルク」が登場したからである。

そもそも液体ミルクの商品化には、厚生労働省による製造承認と、乳児用食品を記載するための消費者庁の許可が必要で、欧米などで普及しているそれは、日本国内では輸入品に限られていた。しかし、江崎グリコと明治は、2019年1月に厚労省の承認を、3月に消費者庁の許可を得て製造・販売が可能になった。

3月より発売された江崎グリコの乳児用液体ミルク「アイクレオ赤ちゃんミルク」は紙パックで125ミリリットル。哺乳瓶などに移し替えて授乳するが開封しなければ常温で6ヶ月保存でき、価格は税別200円。これまで、乳児向けミルク市場で後塵を拝してきた江崎グリコ(アイクレオ)は、本製品により市場シェア浮上のきっかけをつかむかもしれない。

一方、市場シェアの約4割を占めるとされるリーダー企業の明治は、4月末より乳児用液体ミルク「明治ほほえみ らくらくミルク」を発売すると発表している。こちらは、スチール缶入りで240ミリリットル、かつ、江崎グリコ同様、哺乳瓶などに移し替えて授乳するが開封しなければ常温で1年間保存でき、価格は税別215円。市場のリーダーとして、液体ミルクの市場そのものを拡大していくことが望まれるが、主に外出用・災害用などとして使用されている「明治ほほえみ らくらくキューブ」とのすみ分けも課題になる。

いずれにせよ、2018年9月に発生した北海道地震では「国内で使用例がない」「衛生管理が難しい商品」との理由で北海道庁が各自治体に液体ミルク使用の自粛要請を行っていたことからも、国内では正確に商品特性が認知されていない状況がある。また、実際に発売するメーカーにとっても、国内でどれほど需要があるのか、どのように利用されるのかなど不透明なことが多い。
そこで本レポートでは、第1に現在授乳中(生後0~12ヶ月)の子を持つママの生活や育児の状況、意識を鑑みつつ「液体ミルクに対する意識」を把握するとともに、第2に企業(メーカー)が液体ミルクを普及させるにあたり、どのような点に留意すべきかを明らかにする。

 

2.調査

調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:現在授乳中(生後0~12ヶ月)の子を持つママ
調査期間:2018年12月28日(金)~2019年1月7日(月)
有効回答者数:1,073名

 

3.トピック

① 認知

「(よく)知らない」が8割弱と、2019年1月時点での認知/理解度は低い。
(注;「名前を聞いたことはあるがよく知らない(36.72%)」+「聞いたことがない(40.07%)」=76.79%)

② 使用意向

「使用してみたい」が4割強と一定数存在するが、「どちらとも言えない」も同様に4割強存在する。
(注;「ぜひ使用してみたい(15.94%)」+「どちらかと言うと使用してみたい(27.31%)」=43.25%)

③ 気になる点

「使用したくない」と考える被験者グループは、価格より「保存料などの添加物は入っていないのか(18.18%)」「熱をかけずに飲ませて衛生的に大丈夫なのか(14.69%)」「常温で長期保存して大丈夫なのか(11.89%)」を気にしている。

④ 望ましいこと

「災害時の授乳に有用である(94.78%)」「日本国内生産品である(92.26%)」「外出時(自宅外)の授乳に有用である(86.86%)」「預け時の授乳に有用である(85.64%)」ことが、とくに望ましいと考えられている。

 

4.結果・考察

【① 認知】

まず、「液体ミルク」について知っているかについて質問した。結果、「詳しく知っており使用している、または使用したことがある」0.75%、「詳しく知っているが使用したことはない」4.94%、「ある程度知っている」17.33%、「名前を聞いたことはあるがよく知らない」36.72%、「聞いたことがない」40.07%であった。
このことから、液体ミルクの認知度は2019年1月時点ではまだ低い(「名前を聞いたことはあるがよく知らない(36.72%)」+「聞いたことがない(40.07%)」=76.79%)ことが分かる。液体ミルクの登場は業界的には大きな出来事であり、かつ、災害時に大きくニュースでも取り上げられ話題になったことからも、「聞いたことがない」が約4割を占める結果は驚きである。

image001

 

 

【② 使用意向】

次に、「液体ミルク」を使用したいかについて質問した。結果、「ぜひ使用してみたい」15.94%、「どちらかと言うと使用してみたい」27.31%、「どちらとも言えない」43.43%、「どちらかと言うと使用してみたくない」7.27%、「まったく使用してみたくない」6.06%であった。
前問で液体ミルクについて「知っている」と回答した被験者が2割強(「詳しく知っており使用している、または使用したことがある(0.75%)」+「詳しく知っているが使用したことはない(4.94%)」+「ある程度知っている(17.33%)」=23.02%)に留まったにも関わらず使用してみたい(「ぜひ使用してみたい(15.94%)」+「どちらかと言うと使用してみたい(27.31%)」=43.25%)と回答した被験者が4割強にも上ったことは、液体ミルクへの期待の表れと言えそうだ。また、「どちらとも言えない」が43.43%と多いことは、消費者がメディア等から収集できる液体ミルクの情報が少なく、もしくは理解できておらず、使用についての判断ができていないためだと考えられる。

image003

「どちらかと言うと使用してみたくない(7.27%)」と「まったく使用してみたくない(6.06%)」と回答した被験者143名に、なぜ使用してみたくないのかと自由回答形式で尋ねたところ、下表のとおり「母乳で育てたい」「安全性が不安」「よく知らない・聞いたことがない」「衛生面が気になる」の順で多かった。母乳で育てたいという人たちに対するミルクメーカーとしての施策は難しいが、その他の理由に対しては、たとえば安全性や衛生面に考慮した訴求が重要であり、かつ液体ミルクそのものを知らしめる活動を丁重かつ継続的に行っていく必要がある。

image005

 

【③ 気になる点】

次に、「液体ミルク」の最も気になることについて質問した。そして、前問の使用意向で「使用したい(=「ぜひ使用してみたい(15.94%)」+「どちらかと言うと使用してみたい(27.31%)」=43.25%(464人)」と回答したグループと、「使用したくない(=「どちらかと言うと使用してみたくない(7.27%)」+「まったく使用してみたくない(6.06%)=13.33%(143人)」と回答したグループとの結果差異を分析した。

ともに上位4つの選択肢は、「熱をかけずに飲ませて衛生的に大丈夫なのか」「保存料などの添加物は入っていないのか」「常温で長期保存して大丈夫なのか」「価格は手ごろか」で、共通していた。ここで注目したいのは「価格は手ごろか」という選択肢よりも上位に挙がる選択肢だ。「使用したくない」と考える被験者グループは、価格より「保存料などの添加物は入っていないのか(18.18%)」「熱をかけずに飲ませて衛生的に大丈夫なのか(14.69%)」「常温で長期保存して大丈夫なのか(11.89%)」が上位に挙がっており、「安全性」や「衛生面」への不安が使用に対する妨げになっていることが分かる。今後、広く液体ミルクを普及させるためには、安全性や衛生面といった内容を丁寧に説明・訴求することが重要となろう。

image007

また、現在の授乳状況別(完全ミルク;n=156、母乳とミルクを併用(ミルク中心);n=125、母乳とミルクを併用(母乳中心);n=323、完全母乳;n=455)についても分析を試みた。

結果、「熱をかけずに飲ませて衛生的に大丈夫なのか」を完全ミルクのママや母乳とミルクを併用(ミルク中心)のママはより気にしているのに対し、母乳とミルクを併用(母乳中心)のママは「保存料などの添加物は入っていないのか」をより気にしていることが分かった。よって、ミルク利用頻度の高い人たちには衛生面を、ミルク利用頻度の低い人たちには添加物が入っていないことを、より訴求することが重要となろう。

image009

 

 

【④ 望ましいこと】

最後に、「液体ミルク」を購入する際の望ましさについて10項目質問した。「望ましい(=「非常に望ましい」+「まあまあ望ましい」)」と答えた割合が最も多かったのは「災害時の授乳に有用である(94.78%)」で、これは災害時に多くのメディアに取り上げられたことからも理解できる。次いで、「日本国内生産品である(92.26%)」「外出時(自宅外)の授乳に有用である(86.86%)」「預け時の授乳に有用である(85.64%)」の順に多かった。ここで注目したいのは、「現在使用している粉ミルクメーカーからの発売品である」に「望ましい」と回答した被験者割合が相対的に少ない(71.20%)ことだ。他の要因に比べ、それほど消費者にとってメーカーに対する強いこだわりが無いということは、使用者の信頼を獲得し、購入意欲を高められるような施策を実施しさえできれば、これまでのミルク市場のシェアに影響されず、液体ミルクでのシェアを新たに獲得できるということになるのかもしれない。逆に、現状、ミルク市場において一定のシェアを獲得している企業も、液体ミルクに限れば、その戦略・戦術次第でシェアを獲得できない可能性がある。

また、「起床~就寝前まで(自宅内)の授乳に有用である」と回答した被験者割合も相対的に少なく(60.95%)、液体ミルクは災害時や外出時(自宅外)、預け時での使用が望まれているようだ。

image011

 

5.おわりに

本レポートでは、現在授乳中(生後0~12ヶ月)の子を持つママの、2019年1月時点における「液体ミルクに対する意識」を調査した。結果、メーカーが液体ミルクを普及させるにあたり、どのような点に留意すべきかが明らかになったので、以下に簡潔にまとめたい。

第1に、まだ液体ミルクの認知率が低いという状況を認識することだ。今回の調査結果では、「(よく)知らない」が8割弱(注;「名前を聞いたことはあるがよく知らない」+「聞いたことがない」)であった。メーカーとして、自社の製品訴求を行うことは当然のこととして、それとともに「液体ミルク」そのものの訴求、つまりは「液体ミルク」市場の開発・発展を考えることが重要である。液体ミルクの紹介(例;粉ミルクと液体ミルクの製品/特徴比較など)を広く丁寧に説明することである。

第2に、使用意向について、「使用したい」が4割強(注;「ぜひ使用してみたい」+「どちらかと言うと使用してみたい」存在した一方、「どちらとも言えない」という中間層も4割強存在したという状況を認識することだ。使用したい・使用したくない、好き・嫌いなど態度が明確に表れていないということは、現状、消費者が液体ミルクについて理解していないということだ。メーカーとして、新たな市場シェア獲得のチャンスはあるので液体ミルクの理解を促進することが重要である。機能性、便利性、使用例・方法などを広く丁寧に説明することである。

第3に、気になる点について、そもそも液体ミルクを「使用したくない」と考える人たちは、価格より「保存料などの添加物は入っていないのか」「熱をかけずに飲ませて衛生的に大丈夫なのか」「常温で長期保存して大丈夫なのか」等、安全性や衛生面への不安が使用に対する妨げになっているという状況を認識することだ。「使用したい」と考えている人たちは囲い込みつつ、いかに「使用したくない」という人たちを獲得していくかが重要となる。彼らが不安に思っている安全性や衛生面の訴求を広く丁寧に説明することである。

第4に、望ましいことについて、「災害時の授乳に有用である」「日本国内生産品である」「外出時(自宅外)の授乳に有用である」「預け時の授乳に有用である」ことが、とくに望ましいと考えられている一方、「現在使用している粉ミルクメーカーからの発売品である」に「望ましい」と回答した被験者割合が相対的に少ないという状況を認識することだ。つまり、消費者がそれほどメーカーにこだわりが無いとしたら、これまでのミルク市場のシェアに関係なく、液体ミルクでのシェアを新たに獲得できるということになる。これまでミルク市場で獲得してきた市場シェアは、いったんゼロベースに考えなおして今後の戦略・戦術を構築していくことが重要となる。

 

ところで、ママ・パパが母乳ではなくミルクでの授乳時に大変さや苦労を感じるのは、調乳作業や片付け、外出時の荷物としての持ち運びなどだ。これらは「液体ミルク」に代替することで解決できる可能性が大きい。「液体ミルク」が災害時、外出時、預け時等の使用を期待されていることを考慮すると、このようなシーンに対応可能な「液体ミルク」ならではの利便性を消費者に十分理解してもらい、容量、価格、流通(含、販売場所)、広告コミュニケーションの組み合わせをいかに最適化できるかが、今後の普及ポイントになろう。

 

子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。
(コズレ子育てマーケティング研究所 飯野・甲斐田)

 

参照;
『乳児用液体ミルク』国内製造・販売解禁 ~ママ・パパ使用意向調査
https://www.atpress.ne.jp/news/164547