調査レポート

ママたちは何を考え、どう行動したか ~コロナ前からコロナ流行後までの定点調査で見えてきたこと~

  • LINEで送る
妊婦,ママ

1.はじめに

社会・経済に大きな影響を与えたコロナ禍も3年目に入った。社会・経済だけでなく人々の価値観にも変化を及ぼしたことは言うまでもない。

コズレ子育てマーケティング研究所では、とくに妊婦さんや子育て中ママに焦点を当て、彼女たちの価値観の変化を追ってきた。

今回は、コロナ前からコロナ流行後までの定点調査の結果をお伝えする。「新型コロナウイルスの流行」という社会不安の中で、妊婦さんや子育て中ママが自らをどう捉え、何を考え、どう行動したかなどについてお伝えする。

2.調査

主体:コズレ子育てマーケティング研究所

方法:インターネット・リサーチ

対象:妊娠中、ならびに末子1歳以下の子を持つ女性2,440名

期間:2022年10月25日(火)~2022年11月26日(土)

3.結果・考察

ママの自己肯定感の変化

コロナ前より、コロナ流行後の方が「自己肯定感」が高い妊婦さん・子育て中ママが多い

妊娠中、および末子1歳以下の子を持つ女性に対して、自己肯定感を測る10の質問(Mimura & Girffiths (2007)による日本語版RSES-J 自尊感情を測定する尺度)を行った。ここでの自己肯定感とは、「自分は大切な存在」「自分はかけがえのない存在」だと思える心の状態のことを言う。

<自己肯定感を測る10の質問項目>

1.私は、自分自身にだいたい満足している。
2.時々、自分はまったくダメだと思うことがある。
3.私にはけっこう長所があると感じている。
4.私は、他の大半の人と同じくらいに物事がこなせる。
5.私には誇れるものが大してないと感じている。
6.時々、自分は役に立たないと強く感じることがある。
7.自分は少なくとも他の人と同じくらい価値のある人間だと感じている。
8.自分のことをもう少し尊敬できたらいいと思う。
9.よく、私は落ちこぼれだと思ってしまう。
10.私は、自分のことを前向きに考えている。

これらの各項目に対して、「4=強くそう思う、3=そう思う、2=そう思わない、1=強くそう思わない」という4段階で回答してもらった。ただし、2,5,6,8,9の質問に対しては「4=強くそう思わない」「3=そう思わない」「2=そう思う」「1=強くそう思う」で測る。また、自己肯定感の高低基準は、上記10の質問結果の合計が「30点以上を高い、20点以下を低い」とされている。

コロナ前の2019年9月、コロナ流行後の2021年11月、2022年10月の調査結果を比較したのが以下である(図1)。

図1 妊婦さんと子育て中ママの自己肯定感の変化

 

コロナ前の2019年9月調査では、自己肯定感の高い妊婦さんは18.30%、子育て中ママは17.50%であった。

対して、コロナ流行後の2021年11月調査では、自己肯定感の高い妊婦さんは20.99%、子育て中ママは19.02%とやや増加傾向にあり、2022年10月調査では、妊婦さんは20.42%、子育て中ママ20.07%と、引き続き増加傾向にあることが分かる。

今回の2022年10月調査でも、自己肯定感が高い妊婦さんや子育て中ママが引き続き増加傾向であることに驚く。そこで、「どのような時に自己肯定感が高まると感じますか?」という質問に対して、自由回答形式で回答してもらった。

その内容の多くは、「妊娠してからは、赤ちゃんのことを考えると私がいないとダメだと思うから」「2歳の子どもと生後6ヶ月の子ども、どちらの子にもまだまだ私は必要だと感じている」など、子どもの存在が大きく関係している。これはコロナ前の調査でも同様の回答は多かった。

コロナ流行後は、コロナ前に比べ、「子どもを守らねばならない」という使命感をより強く抱くようになったのかもしれない。その結果として、ママ自身の自己肯定感は高くなるのだろう。

子育て中ママの育児用品・自身のモノ(洋服・化粧品)の購入に対する考え

「他人の意見を気にせず、自分が良いと思うものを購入したい」割合は、新型コロナウイルスの流行度合により変動する

次に、末子1歳以下の子どもを持つ子育て中ママに、「育児用品を購入したり選んだりする際の、あなたの考えに近いものをお選びください」という質問と「あなた自身の洋服や化粧品を購入したり選んだりする際の、あなたの考えに近いものをお選びください」という2つの質問を行い、2020年8月(n=1,164)、2021年1月(n=4,600)、2021年11月(n=778)、そして2022年10月(n=1,196)の調査結果を比較した。

これら2つの質問に対して、5つの項目を用意し「非常にそう思う・そう思う・どちらともいえない・そう思わない・全くそう思わない」の5段階でそれぞれ回答してもらった。

<育児用品や自身の洋服・化粧品に対する5つの質問項目>

1.他人の意見を気にせず、自分が良いと思うものを購入したい。
2.高機能・高性能なものを選びたい。
3.高価格なものを選びたい。
4.長い期間使用できるものを選びたい。
5.失敗したくないと思う。

4回の調査結果を比較したのが以下である(図2)。

図2 育児用品・自身のモノ(洋服・化粧品)の購入に対する考えの変化

子育て中ママの9割弱が育児用品に対しても、自身の洋服や化粧品に対しても「長い期間使用できるものを選びたい」「失敗したくないと思う」と考えていることが分かる。

まず、5つの項目のうち「他人の意見を気にせず、自分が良いと思うものを購入したい」に注目したい。育児用品に対する考えについての割合は、2020年8月調査では50.26%、2021年1月調査では41.15%、2021年11月調査では53.09%、2022年10月調査では53.01%となっており、2021年1月調査時の割合が一時的に低くなっている(=他者に同調する傾向が強くなっている)ことが分かる。

同様に、自身の洋服や化粧品に対する考えについての割合も、2020年8月調査では66.49%、2021年1月調査では59.11%、2021年11月調査では62.34%、2022年10月調査では67.80%となっており、2021年1月調査時の割合が一時的に低くなっている(=他者に同調する傾向が強くなっている)のである。

では、2021年1月に何が起きていたかというと、新型コロナウイルス感染拡大に伴う2回目の緊急事態宣言が発令されていた時期※1である。新型コロナウイルスの蔓延が子育て中ママの同調意識を強め、育児用品や自身のモノの購入にも影響を与えたのかもしれない。今後、新たな社会不安が起きた場合、彼女たちの同調意識は強くなり、他人が良いと思うモノやサービスを選択する可能性が高まるかもしれない。

さて、2022年10月調査においては、「他人の意見を気にせず、自分が良いと思うものを購入したい」と考えている割合が育児用品では約5割、自身の洋服や化粧品に対しては7割弱という結果になっている。この結果に関連して、前述した自己肯定感調査において紹介した「どのような時に自己肯定感が高まると感じますか?」という質問に対しての自由回答のひとつで、興味深いものを紹介する。

マイノリティな選択をしても不安に思わなかった時。日々の買い物などの小さな選択でも、自分の意見を尊重できたな、自分を信じられているなと感じることがあります。」

この自由回答からは裏を返せば、「他人と違う選択をすることに不安を感じることがあり、それは、日々の買い物などの小さな選択でも生じる」ということが読み取れる。日々の買い物でも他人と違う選択をすることに不安を感じているとすれば、我が子に購入する育児用品を選択するときは、一層不安を感じるかもしれない。

そのため、育児用品の商品やサービスを提供する側は、ママたちが例えどのような選択をしたとしても「これを我が子に購入してよかった」と安心させ満足させてあげる必要があるだろう。

※1 国立感染症研究所 「新型コロナウイルス感染症の直近の感染状況等(2021年1月13日現在)」

ライフスタイル・商品やサービス購入についての考え・意識・行動の変化

「とにかく安くて経済的なものを購入する」割合は増加しており、「多少値段が高くても品質の良いものを購入する」割合は減少している

最後に、妊娠中、および末子1歳以下の子を持つ女性に「以下の各項目に対するあなたの考え・意識・行動を教えてください。」という質問に対して10の項目を用意し、2018年2月(n=1,207)、2020年8月(n=2,538)、2021年1月(n=4,600)、2021年11月(n=1,426)、そして2022年10月(n=2,440)の調査結果を比較した。

<考え・意識・行動に関する10の質問項目>

1.とにかく安くて経済的なものを購入する
2.多少値段が高くても品質の良いものを購入する
3.自分のライフスタイルにこだわって商品を選択する
4.自己表現の手段としてものを購入する
5.できるだけ長く使えるものを使う
6.自分の好きなものはたとえ高価でも購入する
7.安全性に配慮して商品を購入する
8.仕事より家庭を優先する
9.休日は家族と過ごす
10.家事は家族と分担する

5回の調査結果を比較したのが以下である(図3)。

図3 ママの考え・意識・行動の変化

約9割の妊婦さんと子育て中ママが「休日は家族と過ごす」、約8割が「できるだけ長く使えるものを使う」「安全性に配慮して商品を購入する」と回答しており、これらに関しては5回の調査結果を見てもそれほど大きな変化は見られない。

しかし、「とにかく安くて経済的なものを購入する」割合を見てみると、2018年2月調査では58.82%、2020年8月調査では59.54%、2021年1月調査では61.55%、2021年11月調査では62.77%、2022年10月調査では64.50%と上昇傾向であることが分かる。

一方、「多少値段が高くても品質の良いものを購入する」割合は、2018年2月調査では58.82%、2020年8月調査では56.78%、2021年1月調査では54.09%、2021年11月調査では51.61%、2022年10月調査では51.77%と減少傾向である。

「とにかく安くて経済的なものを購入する」割合が上昇し、「多少値段が高くても品質の良いものを購入する」割合が減少している理由のひとつとして、物価上昇の影響が考えられる。光熱費や食費だけでなく、紙おむつや乳児用ミルク、ベビーカーなどの子育て用品の値上げも相次いでいる。

これからの妊婦さんや子育て中のママは、代用できるものは購入を見送る、中古品をリユースする、ブランドや機能の対価として見合った価格であることをより重視して商品を選ぶなど、今まで以上に賢く家計のやりくりをしていくことになるのだろう。

4.おわりに

本レポートでは、ママの価値観の変化についてお伝えした。

妊婦さんと子育て中ママの自己肯定感調査では、コロナ前よりもコロナ流行後の方が、自己肯定感が高い割合は増加傾向にあることが分かった。これは、社会不安の中で母親としての使命感がより強くなったことがひとつの要因なのかもしれない。

子育て中ママの育児用品と自分自身のモノを購入する際の考えの変化では、コロナ感染者が増加するにつれて「他人の意見を気にせず、自分が良いと思うものを購入したい」と考える割合は低くなる。これはママたちの同調意識が強くなる影響だと考えられる。

また、ライフスタイル・商品やサービス購入についての考え・意識・行動の変化では、「とにかく安くて経済的なものを購入する」割合が上昇傾向にあり、「多少値段が高くても品質の良いものを購入する」割合は減少傾向にある。

自己肯定感が高いママが増加していることは多少安堵できるが、もし、その理由が社会不安による自助努力の結果であるなら軽視できないだろう。妊娠・出産・子育てに関連するサービスを提供する側は、ママたちのエンパワーメントに貢献していく必要があることは言うまでもない。ママたちがどのような選択をしたとしても「我が子のために選んでよかった」と安心させ満足させてあげることが、これまで以上に求められるのではないだろうか。

(コズレ子育てマーケティング研究所 山内)

【出典の記載についてのお願い】

調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。

出典:「ママの価値観変化に関する調査(株式会社コズレ)」

https://cozre.co.jp/9246/

(子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)

(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)

  • LINEで送る

コズレは子育て世帯マーケティングの
新たな視点をご提供します

自社や自社製品・サービスが、どのように認知されているのかを知りたい方、そもそもどのように消費者に認知させるべきなのか、もしくはプロモーション策を立てる必要があるのか等でお悩みの方は、ぜひともコズレ子育てマーケティング研究所にご連絡ください。
新たな視点をご提供させていただきます。また、具体的企業名など、本調査の詳細レポート等はお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら