調査レポート

コズレ子育てマーケティング研究所発表『子育て用品・サービス市場 2023年度下期トレンド予測レポート』

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はじめに

『どんな商品・サービスが売れるかを知りたい』

多くの人の、まさに「心の声」でしょう。

その気持ち、分かります。我々も知りたいです。

 

一方、皆さんが『どうせ、将来何が起こるかなんて分らないし、何がヒットするか、誰にも分からないよ』と思っていることも、分かります。

どんなに勉強しようとも、どんなに経験を積もうとも、将来起こることなんて誰にも分かりません。ましてや、どんな商品・サービスが売れるかなんて。

しかし、商品・サービスを売るためのいずれかの工程に関わる私たちにとって、この「心の声」から逃れることはできません。

 

そこで、少しでも皆さんのお力になれないかと思い、コズレ子育てマーケティング研究所として設立以来初めて、子育て用品・サービス市場において、2023年度下期にどんな商品・サービスがヒットするかを考えてみました。各々真剣に考え、また議論を重ねる中で、我々は気づいたのです。

『なにがヒットするかを当てる(=結果)より、なにがヒットするかを考えぬくこと(=過程)が大切なのだ』と。

 

皆さんが、こんな当たり前のことにすでにお気づきであることも、分かります。でも、改めて自らの行動を振り返ってみて下さい。

巷では多くの企業・研究所などが、トレンド予測を発表しています。多かれ少なかれ、目にしたことがあるのではないでしょうか。そして、それを眺めては、『へぇ、こんなイベントがあるから、こんなものが流行るのか』と「受け身」になって感想を述べていませんか。

将来何が起こるか分からない以上、何を仮説におくかで、100人いれば100通りの予測が生まれます。だからこそ、各人が自分自身で考える「自分なりの予測」が重要になるのです。

 

今回我々も、2023年度下期子育て用品・サービス市場において、どんな商品・サービスがヒットするか、予測を皆さんにお伝えしようと決めてから、いつも以上に市場について、企業について、ママパパについて、乳幼児について考え、議論しました。

皆さんも、自らが関わる商品・サービスに限らず、それに影響を及ぼしそうなものも含め幅広く考えることで、2023年度下期にどんな商品・サービスがヒットするかを予測してみて下さい。

そして、予測した後には、我々が今回皆さんに発表するものと比較してみて下さい。全く異なるものが予測されていたりして、「なんでこんな予測をしたのだろう」と思いを巡らすことになり、きっと、ワクワクするはずです。

 

今回我々は、妊活中の女性、妊婦さん、乳幼児(~3歳頃まで)を育てるママパパを念頭に、彼らの今の思考、消費・行動様式を整理することから、2023年度下期に流行するであろう商品やサービスを挙げることにしました。詳細は表の通りで、「衣」「食」「住」「遊」「金」「健」「美」「技」「職」「経」の10視点から、各々予測しています。

予測内容には、若干、我々の主観・希望も含まれます。このような商品・サービスが広まってほしいな、広まれば子育てをするママパパの喜びも、もっと大きくなるだろうな、という想いからです。

皆さん、まずは自分で考えてみましょう。

そして、他人の考えと比較してみましょう。

見えない将来に起こるであろう「事実」に一歩近づけるはずです。

2023年9月末日 コズレ子育てマーケティング研究所

注記

・本レポートでご紹介しております商品・サービスは、いずれも調査時のものです。

・商品・サービスの詳細につきましては、提供されている企業様にお問合せください。

目次

  1. 衣 衣料、ファッション
  2. 食 食事
  3. 住 住まい
  4. 遊 遊び
  5. 金 マネー
  6. 健 健康、運動
  7. 美 美容
  8. 技 技術
  9. 職 仕事、働き方
  10. 経 企業、経営

1.衣

おむつのサイズアウトロス問題を解決「ネピアGenki! おむつ無料交換便」

子どもの成長はうれしいものですが、開けたばかりの、もしくは買いだめしておいたおむつを未使用のまま廃棄しなければならない状況は悩ましいものです。このような「おむつのサイズアウトロス」が、ママパパの隠れたストレスになっているようです。

赤ちゃん用紙おむつ「nepia Genki!」で“赤ちゃんも、ママパパも、おむつストレスフリー”をめざす王子ネピア株式会社は独自調査により、ママパパの間で「おむつのサイズアウトロス」が悩みのひとつになっていることを明らかにし、「おむつ無料交換便」の取り組みを2023年4月から7月まで実施しました※1。

出典:王子ネピア株式会社

サイズアウトで余ってしまった小さなサイズのGenki!を、大きな新サイズのGenki!と無料交換するサービスです。応募フォームから余った枚数を記入して申し込むと、配送会社が自宅に引き取りに来てくれ、その場で新サイズに交換してくれることが特徴です。

サイズアウトしたおむつをもったいないと思い使い続けるのは、赤ちゃんの尿漏れ・うんち漏れの原因になります。「おむつ無料交換便」を使えば赤ちゃんにやさしく、また、おむつ替えのストレスも減少し、ママパパにもやさしいのです。環境にやさしいのは言うまでもありません。

赤ちゃん、ママパパ、地球に、おむつストレスフリーを願うネピアの「おむつ無料交換便」は、現在応募終了していますが、ぜひ再開してほしいですね。

※1 王子ネピア株式会社「nepia公式ファンサイト イィネピア!」

2.食

タイパ重視!「レンジで簡単、レトルト食品」が進化

在宅勤務や夏休みなどでおうち時間が増え、毎日の食事に頭を悩ますご家庭も多かったことでしょう。温めるだけで食べられたり、万が一に備えてストックできる、レトルト食品や冷凍食品が重宝されました。コロナが落ち着きつつある現在ですが、これらのレトルト食品はタイパが良いと再評価されたことで、さらなる拡大が見込まれています。

2023年3月に発売された永谷園のパスタソース「パキット」は、パスタソースの袋の中に水と乾を折り入れて、電子レンジでチンして混ぜるだけでパスタ料理が完成します※1。大鍋で麺を茹でる工程をなくしたことが、この商品の画期的なところと言えるでしょう。調理時間が短縮され、タイパの良さを実感したママパパは多かったのではないでしょうか。また、今年の記録的な猛暑の中での夏休みに、大鍋で麺を茹でたくないというママパパにとって一役買った商品になったかもしれません。

画像提供:株式会社永谷園

離乳食期の子どもを持つママパパから支持されている、キユーピーの「ベビーフードシリーズ」からも、「レンジでチンするハッピーレシピ」が登場しています※2。パウチのまま電子レンジで加熱できるので移し替えるお皿が必要なく、何よりパウチの底が広く自立性があり置きやすいため、そのまま赤ちゃんに食べさせることができるのが特徴です。

「別皿に移し替える」というひと手間をなくすことで、少しの時間的な余裕が生まれ、離乳食期のママパパにとって心の余裕につながるのかもしれません。

出典:キユーピー株式会社

「レトルト食品を食卓に出すのは引け目を感じる」とネガティブなイメージを持っていたママパパも、コロナ禍を機に試し使いしてみたのではないでしょうか。消費者のニーズをうまく取り入れたレトルト食品が今後も多く登場することを期待します。

※1 株式会社永谷園「パキット ブランドサイト」

※2 キユーピー株式会社「レンジでチンするハッピーレシピのおすすめポイント」

3.住

家族とちょっと離れて過ごすための「ヌック」

コロナ禍を機に、在宅勤務のための場所を急いで整えたママパパは多かったのではないでしょうか。最初は「とりあえず仕事ができればよい」という思いだったのが、コロナ禍が長引くにつれて、「気持ちよく仕事ができる空間にしたい」「居心地のよい自分だけの空間にしたい」と、徐々に意識変化が生じたママパパも少なくないでしょう。

コロナ禍を経て住まいは、より居心地のよさが求められる場所となっています。そこで注目されつつあるのが「ヌック」です。「ヌック」とは、「こぢんまりとして居心地のよい空間」のこと。例えば、以下の画像のように、廊下などに設けられた小さな空間のことを指します。

ヌック

出典:PIXTA

セキスイハイム※1は、リビングの一角やスキップフロア等を「ヌック」として活用する間取りやリフォーム事例を数多く紹介しています。

セキスイハイム

画像提供:積水化学工業株式会社(セキスイハイム)

ステイホーム中に家族の距離が近くなったことで、会話が増えたり家事分担が進んだりという良い面があった一方、ママもパパも子どもも「逃げ場」がなくなったというネガティブな面の増加も考えられます。

日本の住宅事情を考えた場合、家族全員の個室をつくるのは容易ではありません。しかし、幸いなことにヌックは「こぢんまりとした空間」であるため、これから住まいを購入しようと考える子育て世帯には、比較的取り入れやすいことでしょう。

子どもが自分だけの秘密基地を欲しがるように、ママもパパも子どもも、ホッと一息つける居心地のよい空間を求めるようになるのかもしれません。

※1 積水化学工業株式会社 セキスイハイム #ヌック間取り(プラン) イメージヒント集

4.遊

おもちゃにも広がる「ジェンダーフリー」

日本おもちゃ大賞から「ボーイズ・トイ部門」「ガールズ・トイ部門」が廃止※1になってから2年が経ち、日本のおもちゃ市場にも「ジェンダーフリー」という言葉が浸透してきています。

これまでは、「かわいいおもちゃ」と言えば女の子、「かっこいいおもちゃ」と言えば男の子が惹かれると刷り込まれた大人も少なくないでしょう。現代の子どもたちの親世代は、いまだにそう思い込んでいる方もいるかもしれません。しかし実際は、男の子の中にもかわいいお姫様のおもちゃが好きな子はいますし、女の子の中にもかっこいい恐竜のおもちゃが好きな子もいます。

大人が子どもたちのおもちゃに対して配慮したほうがよいことは、いずれも男女問わずに遊べることを「暗に」示すことでしょう。売り場を男女で分けない、性別でおすすめ商品を分けない、広告に男女両方を起用するなどが考えられます。

2023年下期、子どもたちはハロウィンで仮装したり、クリスマスプレゼントを考えたりする時期がやってきます。大人は「今はジェンダーフリーだから……」と思考が混乱してしまうこともあるかもしれませんが、「子どもが好きなもの」を第一に考えれば答えは意外とシンプルなのです。

※1 一般社団法人 日本玩具協会

5.金(マネー)

ベビーグッズも「売る」を前提に購入する?

「産まれてくる赤ちゃんには新品のベビーグッズを購入したい」と考えるママパパは多いのではないでしょうか。しかし、ほとんどのベビーグッズは、新品を購入しても子どもの成長に伴いすぐに使えなくなってしまいます。使えなくなったベビーグッズは処分するにも費用がかかることもあるため、ママパパの間ではフリマアプリやリサイクルショップで売りに出すことが増えつつあるようです。

セカンドストリート※1は、大人用ファッションアイテムのほかに、キッズアイテムの買い取り・販売も行っています。また、ショッピングモールで目にする機会が増えてきたECOLIFE COCO(エコライフココ)※2は、子ども服・雑貨・育児用品の買い取りと販売を行っています。お客さまとのコミュニケーションを大切にしているため、買い取りは100%店頭で行い、一方、実物を試用することによって、使用者にぴったりの商品を見つけてもらいたいという思いから、販売も店頭中心なのが特徴です。

画像提供:(左)株式会社セカンドストリート、(右)ECOLIFE COCO(エコライフココ)

昨今の物価高の影響もあり、今後、消費者の節約志向がより高まれば、「売る前提で新品のベビーグッズを購入する」という購買行動が増えていくことも予想されます。そのため、人気ブランドのベビーカーや子ども服などを購入した場合、なるべく清潔に使用したり、売る前にクリーニングをしたり、といった「売るための行動」を行うママパパも増えていくことでしょう。

※1 株式会社セカンドストリート

※2 株式会社AVANCE  ECOLIFE COCO

6.健

① 「ソフィ妊活タイミングをチェックできるおりものシート」

2022年4月に不妊治療の保険適用が開始され※1、これまでよりも「妊活」に対する社会的意識が高まっています。

妊活中の女性にとって、妊活に適したタイミングを把握することは容易ではありません。

ユニ・チャームは、この悩みを解決するため長年研究を続けてきた結果、妊活に適したタイミングを知るために重要な「妊活おしらせ物質」がおりものの中に含まれることを発見しました※2。この「妊活おしらせ物質」を検出し、妊活に適したタイミングである「排卵時期を含む約6日間」を把握できる画期的商品「ソフィ妊活タイミングをチェックできるおりものシート」が2023年11月に発売されます※2。

画像提供:ユニ・チャーム株式会社

このおりものシートをつけている期間に「妊活おしらせ物質」を検出すると、妊娠検査薬のように判定サイン部分に2本線が現れるようになっているのです。

これまでは基礎体温表や生理管理アプリでタイミングをはかったり、排卵検査薬で検査を行ったりする方法が広く用いられており、負担を感じていた女性も少なくないでしょう。しかし、このおりものシートは、つけるだけでよいので負担が少なく、交換時に見ればよいのでシンプルで分かりやすいのが特長です。パッケージも既存のおりものシートとほぼ変わらず、これから妊活を始める女性でも店頭で手に取りやすい商品と言えるでしょう。

※1 厚生労働省 不妊治療に関する取組

※2 ユニ・チャーム株式会社 ソフィ妊活タイミングをチェックできるおりものシート

② 切れ目のない家族の連帯感をはぐくむ「産後ケア」

妊娠期から子育て期にかけての切れ目のない支援のひとつとして挙げられるのが「産後ケア」です。これまで、産後ケアを受けるには所得制限や条件が設けられていましたが、こども家庭庁により利用要件を撤廃する動きがあります※1。こうした国や自治体の動きを受け、産後ケアを希望するママパパが増えると予想されます。

埼玉県川越市の短期入所型産後ケア事業を実施しているのが、愛和病院の運営する産後ケア施設「パタニティ・マタニティハウス」です。「2泊3日のセカンドハネムーン」と称したパパも泊まれるケアプランを提案しています※2。

産後ケア施設

(左)画像提供:愛和病院、(右)画像提供:三菱地所株式会社

また、民間企業でも産後ケア事業に参入する動きがあります。三菱地所株式会社は、本格的な事業化に向け、2023年6月から9月まで東京都中央区にある「ロイヤルパークホテル」の一部客室で期間限定の産後ケアサービスを提供しており※3、水天宮前駅直結という好立地を活かし、「仕事を休めないパパ」もホテルに立ち寄って子育てを学ぶ機会が提供できることを訴求しています。

制度改革や民間企業の参入によって産後ケアの重要性が理解され、第三者の力を借りながら徐々に家族の連帯感を高めて、子育てに臨める家庭が増えることを期待せずにはいられません。

※1 厚生労働省 産後ケア事業

※2 愛和病院 パタニティ・マタニティハウス

※3 三菱地所株式会社 産後ケアサービス

7.美

ぶら下げられるともっとうれしい?「ミニサイズグッズ」

キャッシュレスの普及などにより、女性の間では、ミニサイズの財布やバッグ、化粧品など「ミニサイズ」に注目が集まっています。子育て中のママは、ただでさえ自分の荷物に加えて子どもの荷物もあり、荷物そのものが多くなりがちなため、持ち運びに便利なミニサイズグッズは既に多くのママから支持されてきました。

2023年上期は、子どもと外出する機会が増えた家庭も多かったようです。春夏の子連れでのおでかけ時に持ち歩くものの中に、虫よけや日焼け止めがあります。

アース製薬「サラテクト ミスト 60mL」は、外出の持ち運びに便利なサイズの虫よけミストです。独自の虫よけロングキープ処方により、朝使って夜まで1日しっかりガードします※1。また、ボンポワンの「サンスクリーンストラップ」は、赤ちゃんから大人まで使える日焼け止め「サンスクリーンスプレー」を首から下げたり斜め掛けにしたりすることができます(サンスクリーンスプレー本体は別売り)※2。

アース製薬 ボンポワン

画像提供:(左)アース製薬株式会社、出典:(右)ボンポワンジャポン株式会社

最近では、スマホショルダーを斜め掛けにしているママの姿も多く目にするようになりました。また、アルコール入りハンドジェルをバッグにぶら下げている方も少なくありません。子育て中のママにとって「ぶら下げられる」ということは、気になったときに、サッと使える手軽さとスマートさを持ち合わせた重要な機能なのかもしれません。

これから秋の行楽シーズンや年末の帰省シーズンが訪れます。子育て中のママパパにとって「ぶら下げられたらいいのにな」と思うのは、どのようなグッズやシーンでしょうか。考えてみると面白いかもしれません

※1 アース製薬株式会社「製品情報」

※2 ボンポワンジャポン株式会社「ギフト商品一覧」

8.技

企業タッグによる「ベビーテック・子育テック」

2023年上期、「VR/AR」は、より実体験に寄り添った「体験型・没入感イベント」として、その技術が大いに活用されました。また、「ChatGPT」が大きな話題となり、その技術を今後どのように活用していくのか、企業や大学などで対応に追われています。

技術革新においては、IoTがあらゆるモノに拡がっており、「ヘルステック」「フェムテック」などの健康系から、「ベビーテック」「子育テック」などの子育て系に至るまで幅広く導入されており、とくにこの「ベビーテック」「子育テック」は、子育て市場に今後どう切り込んでくるか注視したいところです。

企業タッグによる「ベビーテック・子育テック」にも注目です。

エンジン音が流れるぬいぐるみ「赤ちゃんスマイル Honda SOUND SITTER」が「日本おもちゃ大賞2023」エデュケーショナル・トイ部門の大賞を受賞し、10月に発売されます※1。

画像提供:株式会社タカラトミーアーツ

2018年、Hondaは実証実験を重ね“クルマのエンジン音には赤ちゃんを安心させる可能性がある”※2ことを明らかにしました。発表当時は非売品であったにも関わらず、消費者からは製品化を望む声が多く、ついに2023年、タカラトミーアーツとタッグを組むことによって発売が実現した「ベビーテック」なのです。

また、ポーラは、産後の生活をより豊かにする情報を提案する産後ケアアプリ「mamaniere(ママニエール)」の配信を7月4日から開始しました※3。顔写真からママの心身の状況を分析し、今のママの心とからだの状態や赤ちゃんの月齢を加味して必要な情報を提案します

出典:株式会社ポーラ

このアプリでは、ポーラのプロジェクトに共感した多数の企業と協働して、子育てファミリーを手助けするサービスや、月齢に合わせた育児情報を作成しており、協働企業の提供するサービスや割引クーポンなども配信されます。「産後ケア」の重要性が高まる今、注目したい「子育テック」と言えるでしょう。

子育て以外の分野で培ったデータを活用した子育て市場への参入や、子育て関連の企業がタッグを組むことでサービスの実現が加速化する動きは、既存の子育て関連企業としては注視していく必要があります。

※1 株式会社タカラトミーアーツ「赤ちゃんスマイル Honda SOUND SITTER スペシャルサイト」

※2 本田技研工業株式会社「Honda SOUND SITTER」

※3 株式会社ポーラ「2023年7月4日 News Release」

画像元は、特設WEBサイト(https://mamaniere.pola.co.jp/

9.職

企業が「育児する男性」にできること、「健康に関わる悩みをもつ女性」にできること

少子化対策のひとつとして男性の育休取得促進を掲げる政府により、2022年10月に「出生時育児休業(産後パパ育休)」が新設されました。子どもの出生後8週間以内に合計4週間まで取得でき、とくに期間を2回に分割でき取得しやすくしたことが特徴です。

こうした施策にもかかわらず、男性の育休取得率は女性に比べ圧倒的に低いのが現状で、男性を雇う企業としての取り組みが求められています。

出典:PIXTA

清水建設は、eラーニングをはじめ、男性育休取得者へのインタビューを社内イントラネットで公開するだけでなく、「キャリアと育児の両立支援ハンドブック」を作成するなどし、男性の積極的な育児参加を支援しています※1。

また、ANAホールディングスは、出産から一定期間、3日間の特別有給休暇を取れる制度について、男性社員の取得率を2023年度末までに100%にするという目標を掲げるとともに、業務を1人で抱えず複数の人で分担できるよう各職場の仕事の仕方を見直すなどして育休を取りやすくすることにしています※2。

一足飛びに少子化が改善されることはありません。少しずつ少しずつ、企業が、社会が、男性の育休取得を「あたりまえのこと」と捉えられる日が来ることを願います。

一方、「女性特有の体調を考慮した取り組み」は男性の育休取得より、若干進んでいます。フェムテック(Femtech)という「生理・月経」「妊活」「妊娠期・産後」など女性特有の健康課題をテクノロジーの力で解決するための製品・サービスを指す単語を目にすることも増えてきました。男性の育休取得促進と同様、女性特有の健康課題に対し、女性を雇う企業としての取り組みも求められています。

出典:PIXTA

ポーラは、月経や出産など働く女性の健康課題を考える異業種合同参加型プロジェクト「タブーを自由にラボ」を2023年5月から始動しています※3。このラボでは、16社の企業とポーラが共創し、女性の体についてのメカニズムやフェムテック市場について学び、実際に解決策を企画するとのことです。自社の社員に限定した閉じた情報交換会ではなく、共感と対話を通じて企業の枠を超えた「仲間づくり」が、このラボのユニークな点です。

働く女性が日常に我慢することなく、平等に働くことができる職場環境こそ「あたりまえのこと」となる日も、そう遠くはないと思います。

今や、国力向上のため、それが自らの生活の豊かさに直結するような「仕事第一」の社会ではありません。昇進や高い給与より「プライベートと仕事を両立したい」若者も増えています。だからこそ、これまで以上に経営陣は従業員が働きやすい組織をつくり、選ばれる会社になる必要があります。その条件のひとつが、パパの育児参加しやすい仕組みであり、女性特有の体調を考慮した仕組みを構築することなのかもしれません。

※1 清水建設 ホームページ「ワークライフバランス」

※2 ANAホールディングス ホームページ 「ANA GROUP STORIES『男性社員の育児休暇100%へ ANAグループ目標を策定』」

※3 ポーラ ホームページ「ニュース『ポーラ、フェムケアプロジェクトを始動』2023年5月10日」

10.経

海外市場に進出する企業、撤退する企業

2022年の出生数(日本人)は770,747人で、前年の811,622人より大幅に減少しました※1。少子化の流れは止まらず、乳幼児向け商品やサービスを製造・販売する企業は、今後の経営戦略の構築に頭を悩ませていることでしょう。諸外国、とくに韓国や中国も急速に少子化が進んでいるとはいえ、日本国内市場における伸長の限界を考えると、日本と似た文化圏を目指して、アジア諸国への進出を一層進めるのも自然の成り行きと言えるでしょう。

出典:PIXTA

子ども服の「ミキハウス」を製造・販売する三起商行(大阪府八尾市)は台湾で出店を拡大する※2とのことです。ミキハウスは富裕層向けに高額品を取りそろえており、主要な営業地域である日本や中国本土と同様に、すみ分けができるとみている※2からのようです。

一方で、撤退を余儀なくされる企業もあります。

花王は2023年8月3日、中国での紙おむつ生産を同日付で終了(筆者注:日本国内から輸出し、紙おむつの販売自体は継続)したと発表しました※3。日本メーカーはいずれも、高付加価値を強みに、中国の紙おむつ市場において好調を維持してきましたが、ここ数年は中国現地企業のシェアが伸び、他の日本メーカー同様に花王の採算も悪化していたようです。ひとえに中国ブランドの品質向上に加えて、1990年代以降に生まれた自国ブランドへの愛着が強い世代が親となり、「碧芭宝貝」「ベビーケア」といった中国ブランドを好むようになっている※3ことが原因とも言われています。

乳幼児向け商品やサービスを製造・販売する企業にとって、少子化に歯止めがかからず、また飽和状態でもある国内市場の魅力は薄く、海外市場へ出ていくか、国内における他の将来有望な事業分野へ進出するくらいしか、考えらえる術がありません。一概に、海外市場に進出したからといって、業績はその国の政治・経済状況にも左右され、また、国民性を理解した現地企業との戦いにも対処しなければならず、仮に現地工場に生産協力してもらった場合には、その工場自体が技術力を享受し、将来的に取引上のパワーを有してしまうリスクもあります。いずれにせよ、各社がとる今後の経営戦略に注目したいと思います。

※1 『令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況』厚生労働省

※2 『ミキハウス、台湾出店拡大』日経MJ 2023年4月10日、日経電子版(参照2023年4月15日)

※3 『花王、中国で紙おむつ生産終了』日本経済新聞 2023年8月4日、日経電子版(参照2023年8月6日)

 

【出典の記載についてのお願い】

調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。

なお、商品やサービスの画像の引用については、各企業様にお問合せください。

 

出典:「子育て用品・サービス市場 2023年度下期トレンド予測レポート(株式会社コズレ)」

https://cozre.co.jp/blog/10396

(子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/

(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/

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