1. はじめに
少子化が進行する一方で、子育て世帯を取り巻く住宅市場は大きな転換期を迎えている。共働き世帯の増加、保育・教育環境への関心の高まり、住宅価格や金利動向の変化などを背景に、住まい選びは「家を買う・借りる」という単純な判断から、生活全体を最適化するための戦略的意思決定へと変化している。
特に近年の特徴として顕著なのが、住まい選択プロセスにおける母親の関与度と影響力の高まりである。立地や周辺環境、間取り、家事動線、教育・保育へのアクセスといった要素は、日常生活と直結するがゆえに、実務的な視点を持つ母(ママ)が主導して判断するケースが増えている。一方で、価格や住宅ローンといった数値的要素はパートナーが担うなど、意思決定の分業構造もより明確化しつつある。従来の「世帯主=意思決定者」という前提は揺らぎつつある。誰が・どの段階で・何を基準に判断しているのかを正しく捉えることが、商品設計やコミュニケーション設計の成否を分ける時代に入った。
本レポートでは、2025年12月~2026年1月に実施した「住まいの選択における母の関与と重視点」の結果を基に、妊娠・出産を契機とした住まいの変化に着目し、住まい選択における母の関与度、意思決定構造、重視点などを多角的に分析する。
本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部である。「4.調査項目」記載のうち、掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。
2. 調査
調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:生後0歳以上の子を持つ親
調査期間:2025年12月17日(水)〜2026年1月21日(水)
有効回答者数:849名
3. 結果・考察

転居のタイミングの最多は「0歳児」

妊娠以降に引っ越しを経験、あるいは具体的に予定している世帯は45.47%に上る。その内訳を転居時の子どもの年齢別で見ると、「0歳」が37.92%と突出して高く、次いで「妊娠中」が19.10%となっている。
特筆すべきは、実際に転居する「0歳」の時期に対し、その検討や情報収集が行われる「妊娠中」という期間の重要性である。出産というライフイベントを機に、それまでの住環境(手狭さや階段の多さなど)が育児に適さないことが明らかになることがありうる。そのため、この「妊娠中から出産直後」の極めて短いウィンドウが、住まい見直しの最大のトリガーとなっている。この時期は、情報収集・比較・意思決定が短期間に集中するため、初期接点での情報設計が住まい選択全体の方向性を左右する。
住み替えの主流は「新築戸建て」

引っ越し後の住居形態は「購入」が54.40%を占め、「賃貸(37.82%)」を大きく上回る。新居のタイプとしては「新築戸建て」が45.22%と半数近くに達し、次いで「中古集合住宅(26.40%)」、「新築集合住宅(15.17%)」の順となった。
母の8割以上が最終決定に関与

住まい変更における最終決定者は「パートナーと自分(ママ)で共同」が67.77%、「主に自分」が12.95%となり、合計で約8割の世帯でママが最終決定に直接関与している。
意思決定プロセス別の関与度を見ると、「物件見学(61.45%)」や「候補からの絞り込み(56.02%)」において「非常に関与した」という回答割合が高い。一方で、「住宅ローン・契約手続き」のみ「非常に関与」が36.14%に留まる。
資金的な事務手続きを除き、住まいの品質や立地といった「実生活」に関わる要素の主導権は実質的にママが握っていることを示唆している。
最優先事項は「立地」と「周辺環境」

ママが重視した点の上位は、「立地(最寄り駅・職場・実家との距離)」が60.24%で最多となり、次いで「周辺環境の利便性(41.57%)」、「建物の広さ(39.76%)」、「学区・園へのアクセス(39.46%)」が続く。
これは、仕事と育児を両立させることを強く意識した結果であると考えられる。現代の共働き世帯にとって、住まいの選択は「時間の創出」と同義であると言える。
母が主導するのは「間取り・家事動線」と「教育環境」

パートナーとの住まい選びにおける判断軸の役割分担を分析すると、ママが特に主導した項目は「間取り・家事動線」「収納量・収納の配置」「学区・園へのアクセス」である。一方で、パパ(パートナー)が主導するのは「物件価格・諸費用」や「住宅ローンの返済負担」といった資金面に集約されている。
日常のオペレーションを担うママが「生活の質」を設計し、パパが「財務的な裏付け」を行うという構造が見て取れる。そこで、育児を機とした住み替えニーズを捉えるには、ママの抱く「具体的な生活イメージ」をいかに刺激するかが鍵となるといえる。
パパ(パートナー)との意見のズレたポイント


住まいの選定においてパートナーと重視点のズレを経験した世帯は、計34.03%(一部ズレ30.72%+大きなズレ3.31%)に上る。さらに、全体の約23.40%のママが「もっと自分の意見を通しておけばよかった」と後悔を表明している。
後悔の内容は「間取り・家事動線(26.03%)」や「立地(24.66%)」、「収納量(17.81%)」が上位を占める。実際に生活を始めてから家事効率の悪さや収納不足に直面し、その不便さを日々痛感している実態が見て取れる。
情報源は「不動産店舗」「不動産ポータルサイト」「SNS」

情報収集源は、「不動産会社・店舗(40.96%)」「不動産ポータルサイト(24.40%)」、と専門情報、次いで「SNS(19.28%)」であった。住まい選びのプロセスとして、住宅に求める条件を整理し、専門的かつ必要な情報を集めていくことがまず前提として考えられる。その上でSNS上の「リアルな口コミ」や「後悔ポイントの共有」、「ルームツアー動画」による第三者の検証などが参考にされていると推察できる。SNSは、「失敗談」「後悔ポイント」「生活感のある実例」といった情報を補完する役割を担っており、意思決定の最終確認フェーズで重要性を増しているのではないだろうか。
ママが求める理想の設備は「安全性」と「家事効率」に集約

ママ視点で求める設備には、将来の成長を見越した明確なインサイトが存在する。
まずは安全性。「子どもが遊ぶ場所が見渡せる間取り(55.97%)」や「子どもが落ちにくい設計(54.21%)」が上位。乳児期の購入でありながら、歩き始めるトドラー期の危険を先読みしてリスク回避を求めている。
次に収納・効率。「リビング収納(40.50%)」や「パントリー(39.87%)」、「ベビーカー対応の玄関収納(44.03%)」など、散らかりにくい工夫や確実に増える子育て関連用品を隠せる機能も重視されている。
続いて快適性や可変性。「高断熱・高気密(44.65%)」や「防音性の高さ(30.44%)」など建物の機能性の高さや「将来仕切れる子ども部屋(29.18%)」といった長期的な柔軟性へのニーズも高い。
4. 調査項目
- 妊娠・出産後の引っ越し経験(引っ越し予定含む)
- 引っ越し後の新居(購入か賃貸か)
- 新居の住宅タイプ
- 引っ越し時の子どもの年齢
- 住まい選び各段階による母の関与度
- 住まい選択の最終決定者
- 住まい選択時に母が重視した点
- 住まいを選ぶ際の主導権
- 母と父の重視点のズレ
- 重視点のズレたポイント
- 母が「自分の意見をもっと通しておけばよかった」と思う点の有無
- 「自分の意見をもっと通しておけばよかった」と思う点
- 情報収集した方法
- 最も参考にした情報源
- ママ視点で欲しいと思う設備・工夫
※本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部。掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。
5. おわりに
本調査を通じて明らかになったのは、子育て世帯における住まい選択が、ママが生活設計者として主導的に関与する意思決定プロセスであると想定されることである。
妊娠中から0歳児期という短期間にニーズが高まる住み替え検討は、単なるライフイベント対応ではなく、「これから数年間の育児・家事・仕事をどう成立させるか」という、極めて現実的で戦略的な判断である。その判断において、「生活の質」をママが、「財務の合理性」をパパ(パートナー)が見るという役割分担があることが分かった。
なお、約3割の世帯で意見のズレが生じ、約4人に1人のママが「もっと自分の意見を通せばよかった」と後悔している点は、見過ごすべきではない。この後悔は、実際に生活を始めてから初めて顕在化する不便さに基づくものであると想定される。
だからこそ、住まい関連の事業者にとって重要なのは、「夫婦で話し合ってください」という促しに留まらず、ママ・パパが感じている潜在的な不安や将来の生活イメージを、言語化・可視化する支援ではないだろうか。
以上より、ママが「納得して選んだ」と言える状態をつくるべく、ターゲット層への有効なアプローチとして、弊社は以下の戦略を提案する。
「後悔回避型」のコンテンツ展開
調査データで判明した「ママが後悔しやすいポイント(間取り・収納・立地)」を逆手に取り、選定フェーズ段階のママに対し「将来後悔しないための住まい選び」をテーマにしたタイアップ記事やSNS施策を展開する。
妊娠中・0歳児ママへのピンポイントアプローチ
検討が本格化する前の「妊娠中(19.10%)」から、実際に転居のピークを迎える「0歳(37.92%)」の世帯に対し、コズレの属性データを活用した正確なターゲティング広告を実施し、リードを取得する。
SNSを活用した「検証型」プロモーション
公式サイトのスペック提示ではなく、SNS上で影響力を持つママ層を活用し、収納力や家事動線の実利を「ママ目線」で検証するコンテンツを制作。公式サイトへの誘導率を高める。
タイアップ記事による「共感」と「理解」の醸成
住宅の魅力をママ・パパの視点で深掘りし、コズレ独自の「読了者調査(定型)」を通じて、記事接触後の態度変容を定量的に可視化する。これにより、感覚的な訴求に留まらない施策検証が可能となる。
株式会社コズレでは、こうした妊娠中のママや子育て中ママのリアルな声をお伝えすると共に、市場動向を明らかにしていきます。
本調査の詳細レポート、及び子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。
(コズレ子育てマーケティング研究所 早川、水島)
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【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。
出典:『住まいの選択における母の関与と重視点2025~主導権・意思決定・選択要因の分析~(株式会社コズレ)』https://cozre.co.jp/17728/
(コズレ子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)
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