1.はじめに
2020年という世界的・歴史的パンデミックな1年が、もうすぐ終わろうとしている。
目に見えないウィルスとの闘いにおいて、高齢者同様、感染予防に細心の注意を払いながら生活をおくっているのが、妊婦や乳幼児を育てているママパパ達だろう。
しかし、紙おむつや乳幼児用ミルクなど子どものための身の回り品の消費は激しく、買い物をしないわけにはいかない。
コロナ禍で不安を抱える子育て世帯にとって、育児用品の売り場に求めることは、コロナ前とで変化はあったのだろうか。
2020年11月に実施した「withコロナの売り場づくり調査」の結果をもとに、考えてみたい。
2.調査概要
調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:子どもがいる(妊娠中を含む)男女
調査期間:2020年11月13日(金)~2020年11月19日(木)
有効回答者数:1,487名
3.結果・考察
(1)子育て世帯が重視する売り場の特徴とは?
まず、紙おむつや粉ミルクなど11商材の育児用品をいずれか1つでも「店舗で購入」したと答えた1,373名に、「店舗に育児用品を購入しに行く際、以下の各項目をどのくらい重視しますか。」という質問を行った。
聴取項目は下記の18項目であり、「コロナ前から重視している」「コロナ後から重視している」「どちらでもない/わからない」「コロナ前から重視しなかった」「コロナ後から重視しなくなった」から1つ選び回答してもらった。
「1. そこでしか買えない商品がある」「2. 品揃えがよい」「3. みんなが利用している」「4. 新しいモノやコトの提案がある」「5. お買い得感がある」「6. 自宅の近くである」「7. 客数が少ない」「8. 接客が最小限である」「9. 店員がマスクを着用している」「10. 消毒液が常備されている」「11. 検温システムが導入されている」「12. レジにビニールシートが設置されている」「13. 車で来店しやすい」「14. 商品についてわからないことが気軽に聞ける」「15. 悩みを相談できる人や場所がある」「16. 子どもの一時預かりができる」「17. 親子で楽しめるイベントがある」「18. 店員が顔をおぼえてくれる・声をかけてくれる」
結果、「コロナ前から重視している」と回答した割合が多い上位3項目は「お買い得感がある」(74.95%)、「品揃えがよい」(74.44%)、「車で来店しやすい」(61.76%)であった。
子育て世帯は、商品の比較検討がしやすく、ワンストップで買い物を完結できる「お買い得感があって、品揃えの良い売り場」を重視していることがわかった。また、荷物が多くなりがちな子育て世帯にとって、車での来店のしやすさも重要なようである。
次に、「コロナ後から重視している」と回答した割合が高い上位3項目は、「店員がマスクを着用している」(64.89%)、「消毒液が常備されている」(60.09%)、「レジにビニールシートが設置されている」(37.07%)であった。
コロナ後は、従業員のマスク着用や消毒液、飛沫防止シートの設置など、感染防止に努める“目に見える対策”を重視しているようである(図1)。
(図1:店舗選択時の重視点)
(2)子育て世帯の実店舗来店意向
最後に、「あなたは育児用品を実店舗に購入しに行きたいと思いますか」という質問をした。結果、81.17%が「店舗に購入しに行きたいと思う」と回答している(図2)。
(図2:実店舗来店意向割合)
実店舗来店意向が高い回答者の来店理由についての自由回答
・実際に手に取って見て、使うかどうかを判断したい。初めて買う物ばかりだし、安い買い物ではないことが多いので失敗したくない。
・自分が使うものはほとんどネット通販の購入だが、赤ちゃんが使うものは、直接手にとりたいと考えている。
・子どもの物なので、出来れば直接目で見て、サイズ、使い心地、素材など確かめたいし、分からないことや迷うことは店員さんに相談したい。
・ネット通販だと配送時間枠が長くて、待ち時間が長くなるのが嫌。
コロナ感染を心配しながらも、店舗で実際に商品を目で見て選びたいという子育て世帯の強い意欲がわかった。
おそらく、育児用品は購入者と使用者が異なるとともに、(多くの場合)初めて購入するものだから、より失敗したくないという気持ちが生じることなどが、理由として考えられるのではないだろうか。
4.おわりに
今回の調査結果から分かったことは、子育て世帯が売り場に求めるのは、「お買い得感があって品揃えが良い」ことである。また、コロナ禍においては、感染防止に努める「目に見える対策」を行っていることも重要なポイントとなりそうだ。
そして、コロナ禍であっても、実店舗に訪れて育児用品を購入したいと考える子育て世帯の割合は高いものであった。
今後は、感染症対策を万全にしながら納得した育児用品選びができるような売り場づくりがポイントとなりそうだ。
(コズレ子育てマーケティング研究所 後藤)