1.はじめに
ワクチン接種が始まった今日でも、いまだ新型コロナウイルスの終息には時間を要することが危惧されている。
コロナ禍での経済的な打撃は計り知れないが、一方、コロナ禍で成長を遂げたサービスとして、サブスクリプション(以下 サブスク)が挙げられる。外出自粛を余儀なくされた状況で利便性の高いサブスクを利用し始めた人が多く、従来サブスクが抱えていた「認知が進んでも利用が進まない(矢野経済研究所, 2020)」という課題の解決への糸口が見え始めたのが2020年であったといえる。
直近では、駅での「ベビーカーレンタルサービス(東日本旅客鉄道株式会社)」を開始した事例もあり、育児用品においてはレンタルも新たな発展段階にあるといえる。
そこで、今回はサブスクと類似したサービスであるレンタルと合わせて、育児用品におけるこれらのサービスの利用状況について報告する。なお、本レポートでは第1弾としてレンタルに関する調査結果を、今後第2弾でサブスクに関する調査結果を報告する。
2.調査概要
調査主体:子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査期間:2021年6月15日(火)~6月23日(水)
調査対象:妊娠中および生後0ヶ月~2歳の子を持つママパパ
有効回答者数:1,505名(妊娠中551名、生後0ヶ月~2歳954名)
3.結果考察
(1)モノを所有しない消費・購買活動
『モノを所有せずにシェアする』-こうした新しいスタイルの消費・購買活動として「レンタル」「サブスク」などが挙げられる。これらのサービスの特徴は以下のようにまとめられる(表1)。
(表1)シェアサービス一覧
1960年ごろの高度経済成長期においては「マイホーム」「マイカー」のように、物を所有することが庶民の憧れであったが、生活スタイルの変化が著しい今日のような状況では「レンタル」や「シェアリング」が、また流行の移り変わりが激しいものでは「サブスクリプション」が受け入れられていることが見えてくる。
こうしたことを背景に、利用期間が限られる「育児用品」というジャンルにおいても、近年「レンタル」や「サブスク」を展開する企業が増えてきている。
育児用品のレンタルサービスは、レンタル事業を展開している様々な企業が、ベビーカー、ベビースケールなどの育児用品を包括的に取り扱っている。商品としても様々なものがあるが、弊社が2018年に実施した調査によると、ベビーベッド、ベビーカー、チャイルドシート、ベビーバスなどがレンタルの人気の高い商品として挙げられる(※1)。
また、育児用品のサブスクサービスとしては、子ども服(※2)、おもちゃ(※3)、絵本(※4)などが人気を集めている。
なお、本調査では「育児用品」とは「おもに生後2歳頃までの子育てのなかで必要となるもの」と定義する。
(参考)
※1.「赤ちゃん用品、何をレンタルしたらいい?【プレママお悩み相談】」
コズレ2018年(https://feature.cozre.jp/77700)
※2.KIDSROBE(kidsrobe.jp)
※3.トイサブ(toysub.net)
※4.森のえほん館 (ehonkan.jp)
(2)育児用品のレンタルの認知度は高いが、利用経験者は少ない
全被験者のうち「レンタルサービス」を知っていると回答した被験者(n=1,244)に、「育児用品のレンタルサービスをご存じですか」という質問を行ったところ、90.35%の方が「知っている」と回答したことから、「育児用品のレンタル」の認知度は高いといえる(図1)。
次に前問で「育児用品のレンタルサービスを知っている」被験者のうち、生後0ヶ月以上のお子さまを持つママパパ(n=694)に育児用品のレンタルの利用経験に関して聞いたところ、「ベビーベッド(10.81%)」「チャイルドシート(4.61%)」「ベビーカー(3.60%)」の順に利用が多いことがわかった(図2)。
一方、「育児用品をレンタルしたことがない」被験者が81.99%にも上ることが判明した。このことから、育児用品のレンタルにおいては「認知が進んでも利用が進まない」という課題が存在することがうかがえる。
さらに世帯年収ごとに比較すると、年収が高くなるほど「レンタルサービス」の認知度および利用度が高くなることがわかる。年収が高い方ほど複数の選択肢のなかから、レンタル商品と購入する商品を効率よく使い分けていると考えられる(図3)。
(3)育児用品をレンタルした理由は「使用期間が限られているから」
育児用品をレンタルした理由として、「使用期間が限られているため買わずに済ませたかったから」が64.80%と最も多く、次に「ものを増やしたくなかったから(37.60%)」、「レンタルの方が買うよりお得だと思ったから(25.60%)」となった(図4)。
育児用品のような使用期間が限られる商品については、買わずにレンタルで済ませたいと考えるママパパが一定程度いるようだ。
(4)育児用品レンタルのメリットは「利用したいときに利用できる」融通の良さ。デメリットは「汚れや清潔感に対する不安」
最後に、育児用品のレンタル利用経験がある生後0ヶ月以上の子をもつ被験者(n=125)に、メリット・デメリットを聞いた。育児用品レンタルのメリットについては、「利用したいときに利用できたこと(56.80%)」「収納スペースや管理に悩む必要がなかったこと(55.20%)」が上位にあがった(図5)。これは先ほどの「レンタルを選択した理由」とも一致している。
一方、育児用品レンタルのデメリットについては、「赤ちゃんが汚してしまいそうで心配(36.80%)」、「傷や汚れが気になる(26.40%)」、「他の人が使ったものを使うことに抵抗がある(23.20%)」の順で多く、ママパパが汚れや清潔感に対して不安を感じていることが読み取れる(図6)。
6.おわりに
今回の調査を通じて、利用期間が限られる「育児用品」であっても、育児用品のレンタルには消極的であるという現状が明らかになった。
「育児用品」のレンタルの認知度は9割弱と高い一方で、生後のお子さまを持つママパパの利用経験は2割弱に留まっている。そのようななかで、世帯年収によって利用経験に差が見られることもわかった。
利用者からは、「利用したいときに利用できる」、「収納スペース・管理に困らない」というメリットが認識されているが、一方で、汚れや清潔感に対して不安を感じていることから、このような不安を軽減することが育児用品レンタルの今後の課題であると考えられる。
(子育てマーケティング研究所 向後)
【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。
出典:「育児用品におけるレンタル・サブスクリプションサービス利用状況に関する調査(株式会社コズレ)」
http://www.cozre.co.jp/blog/6607
(子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)