1.はじめに
先に報告した『育児用品におけるレンタル・サブスクリプションサービス利用状況に関する調査~Part1 レンタル編~(注1)』では、使用期間が限られる「育児用品」であっても、そのレンタルには消極的であるという現状が明らかになった。
近年、レンタルと類似するサービスとして、音楽配信サービス等の「サブスクリプション」をよく耳にするが、育児用品の場合はどうであろうか。第2弾では、育児用品におけるサブスクリプションの利用状況について報告する。
(注1)『育児用品におけるレンタル・サブスクリプションサービス利用状況に関する調査~Part1 レンタル編~』はこちら
2.調査
調査主体:子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査期間:2021年6月15日(火)~6月23日(水)
調査対象:妊娠中および生後0ヶ月~2歳の子を持つママパパ
有効回答者数:1,505名(妊娠中551名、生後0ヶ月~2歳954名)
3.考察
(1)育児用品のサブスクの認知率は約4割
全被験者のうち「サブスクリプション(以下 サブスク)」を知っていると回答した被験者(n=1,109)に「育児用品のサブスクサービスをご存じですか」という質問を行ったところ、「知っている」と回答した人の割合が41.84%と半数に満たないことから、いまだ認知度が低いことが分かる(図1)。
「育児用品のレンタルサービス」について同様の質問をした結果、「知っている」と回答した人の割合が90.35%であったことと比較すると、その認知度の低さは明白である(図2)。
(2)育児用品のサブスクの利用経験者は非常に少ない
次に、前問で「育児用品のサブスクを知っている」と回答した被験者のうち、生後0ヶ月以上のお子さまを持つママパパ(n=301)に育児用品のサブスクの利用経験について聞いたところ、利用経験があると回答したのはわずか12.96%であった。育児用品のサブスクを知ってはいるが利用したことがない人たちが約9割もいるということである。
さて、利用商品ごとに見ると、「おもちゃ(8.31%)」「絵本(3.65%)」「ベビーベッド(2.99%)」の順に多かった(図3)。とくにおもちゃは、赤ちゃんの成長にあわせて繰り返し商品を選ぶことができる点が、サブスクの特徴とマッチしたと言えそうだ。
世帯年収ごとに比較すると、年収が高くなるほど「サブスク」の認知度および利用度が高くなることがわかる。年収が高い世帯ほどサブスクと購入を使い分けている傾向があると考えられる(図4)。
(3)育児用品をサブスクした理由は「ものを増やしたくなかったから」
育児用品をサブスクした理由としては、「ものを増やしたくなかったから」が56.41%と最も多く、次に「使用期間が限られているため買わずに済ませたかったから(30.77%)」が多かった。
レンタルにおいては「買わずに済ませたかったから(64.80%)」が最多であったことから、レンタルはひとつの商品を一定期間継続利用するサービスであるため「必要なものを購入せず利用したい場合」に、一方、サブスクは特定のカテゴリー内の商品を繰り返し利用するサービスであるため「多くの種類のものを利用したいがものを増やしたくない場合」に向いていると考えられる。
(4)育児用品サブスクのメリットは「収納での悩み解決」、デメリットは「価格」に対する不満
続いて、育児用品のサブスク利用経験がある生後0ヶ月以上のお子さまをもつ被験者(n=39)に、そのメリット・デメリットを聞いた。メリットは「収納スペースや管理に悩む必要がなかったこと(51.28%)」「多くの商品を気軽に試せたこと(46.15%)」「初期費用が安いため利用開始のハードルが低かったこと(23.08%)」が上位にあがった(図6)。
収納・管理スペースに悩まなくて済むという魅力は、レンタル・サブスクともに強く認識されていたが、「多くの商品を気軽に試せたこと」はレンタルにはないメリットであり、差別化ポイントとして消費者に支持されていることが分かった。
しかし、「利用すればするほどお得だったこと(2.56%)」をあげる声は少なく、現状のサービスでは、利用回数や利用点数に制限があるケースが多いためだと考えらえる。また、「利用したいときに利用できたこと(15.38%)」をあげる声も少なく、登録から利用開始までのハードルの高さがうかがえる。
一方、デメリットを見ても、「長期間利用すると割高になってしまったこと(33.33%)」「契約期間中は利用しなくても料金が発生してしまうこと(25.64%)」が上位にあげられている。こうしたことから、「サブスク」がより浸透するには「利用しやすい料金プラン」の設定や「利便性」の見直しが一層必要になると思われる。
また、育児用品サブスクのメリットについて、共働きと共働きでない世帯に分けて分析したところ、共働き世帯のほうが共働きでない世帯に比べ、「多くの商品を気軽に試せたこと」が16.29pt高いことから、共働きだとなかなか詳しく情報を調べる時間がないため、サブスクの気軽に様々なものを試すことができる点に魅力を感じているのではないだろうか。
情報探索する時間を要するより、実際に試用してしまおうという思考である。また、「定期的に配達されることで買いに行く手間を減らせたこと(20.00%)」という回答も共働き世帯の方が5.71pt高かったため、負担を減らすことができる点に魅力を感じている傾向にあるようだ。
(5)育児用品サブスクを利用しない理由は「抵抗感」と「所有意向」
育児用品サブスクを知っていて利用経験がない被験者のうち、「第一子妊娠中」「第二子以降妊娠中」の2グループに未利用理由を聞いたところ、いずれのグループにおいても「他の人が使ったものを使うことに抵抗があるから」が最も多くなった。
汚れ・清潔感に対する抵抗感は育児用品レンタル利用者のデメリットでもあげられていた点であるため、レンタルとサブスクに共通する課題であるといえる。
また、「第一子妊娠中」の被験者グループの方が「所有したいから」という回答が10.25pt高いことが明らかになった。1人目のお子さまに対しては2人目以降と比べると「買ってあげたい」という強い思いがあると考えられる。
一方、既に育児経験のある「第二子以降妊娠中」の被験者グループは、育児経験を通して「所有しなくてもよい」という考えにシフトしていることから、こうした「所有にこだわらない先輩ママパパの声」を届けることが利用推進につながるかもしれない。
(6)利用すれば良かった育児用品サブスクは「ベビーベッド」
最後に、お子さまの月齢別に今後のサブスクの利用意向を聞いた(図10)。「妊娠中」の被験者グループ(n=551)では、「ベビーベッド(29.58%)」「おもちゃ(22.14%)」「バウンサー(19.24%)」「チャイルドシート(15.97%)」が上位にあがった。一方、「生後0ヶ月~2歳のお子さま」を持つ被験者グループ(n=954)では、「おもちゃ(34.80%)」「絵本(18.97%)」「チャイルドシート(11.95%)」「ベビーベッド(10.06%)」が上位にあがった。
妊娠中の方はベビーベッドやバウンサーなどの大型の育児商品に対する利用意向が高く、生後のお子さまがいらっしゃる方は、おもちゃや絵本などの月齢によって買い替えを伴うものへの利用意向が高いことがわかる。
さらに、「生後0ヶ月~2歳のお子さま」を持つ被験者グループ(n=954)に、実際に子育てをしている中で「利用すれば良かった育児用品サブスク」を聞いた(図11)。その結果、「ベビーベッド(18.45%)」「バウンサー(12.37%)」「ベビーバス(10.38%)」が上位にあがった。
このことから、2割弱のママパパたちは、ベビーベッドなどの大型商品に対して、サブスクを利用すれば良かったという思いを抱いていることがわかった。
4.おわりに
今回、育児用品のレンタル・サブスク利用の状況について調査・考察を行ない、Part1・Part2に分けて報告したが、育児用品のレンタル・サブスク共通の課題として「利用率」が低いことが明らかになった。
とくに育児用品のサブスクにおいては認知度が低いことがわかり、なによりサービスそのものの認知度を高めていくことが重要で、そして興味関心を持たせ、利用につなげていく施策を実行していく必要がある。
とはいえ本調査結果から、サブスク利用したことのある育児用品では「おもちゃ」「絵本」が多く、レンタルで多かった「ベビーベッド」「チャイルドシート」とは異なることも分かった。
おそらく、レンタルはひとつの商品を一定期間継続利用するサービスであるため「必要なものを購入せず利用したい場合」に、一方、サブスクは特定のカテゴリー内の商品を繰り返し利用するサービスであるため「多くの種類のものを利用したいがものを増やしたくない場合」に向いているのではないだろうか。
また、育児用品サブスクを知っていて利用経験がない被験者がその理由としてあげるものが「他の人が使ったものを使うことに抵抗があるから」であり、汚れ・清潔感に対する抵抗感をいかに減らしていくかは今後の課題といえる。
そして、「所有したいから」という理由が多かった第一子妊娠中の買ってあげたい願望の人たちより、育児経験を通して「所有しなくてもよい」という考えにシフトしている割合が高まる「第二子以降妊娠中」の人たちに対して、「所有にこだわらない先輩ママパパの声」を届けることで利用推進につなげられないだろうか。
いずれにせよ、ママパパの各属性とサブスクの特性がうまく合致したサービスを提供することで、育児用品サブスクが育児をもっと楽しく、快適にさせることを期待したい。
(子育てマーケティング研究所 向後)
【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。
出典:「育児用品におけるレンタル・サブスクリプションサービス利用状況に関する調査(株式会社コズレ)」
http://www.cozre.co.jp/blog/6641
(子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)