1.はじめに
商業施設・公共施設に設置されているおむつ替え台は、育児中のママパパが小さなお子さまを連れて安心して外出できるために欠かせない設備である。しかし、外出先でのおむつ替えには衛生面や使いやすさに関する課題が多く、利用者が不便を感じる場面も少なくない。そこで、0歳以上のお子さまを持つ女性1,639名を対象に、外出先でのおむつ替え台の利用状況や抱えている不満・悩みについてアンケート調査を実施した。
2.調査概要
調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:0歳以上の子を持つ女性1,639名
調査期間:2024年9月24日(火)〜 2024年10月8日(火)
3.結果・考察
約86%のママが「外出先でおむつ替え台を利用したことがある」と回答
0歳以上の子を持つ女性1,639名のうち、外出先の商業施設・公共施設などでお子さまのおむつ替えのために「おむつ替え台」を利用したことがあるのは86.15%(1,412名)であった(図1)。
図1 外出先でのおむつ替え台利用経験の有無(SA; n=1,639)
そのうち、「ショッピングモール」が最も多く88.95%(1,256名)であり、次いで「ベビー用品店」「病院」「デパート」が約50%と上位を占めた(図2)。他にも、「レストラン」、「ホテル・旅館」、「駅」など幅広い商業施設・公共施設においておむつ替え台は利用されていることが分かる。
図2 おむつ替え台を利用したことがある外出先(MA; n=1,412)
おむつ替え台が利用されやすいのは「他人が出入りしにくい場所」
外出先にあるおむつ替え台を利用するママのうち、72.30%が「他人が出入りしにくい場所(授乳室、だれでもトイレなど)」でおむつ替えをする頻度が高いと回答しており、「他人が出入りできる場所(女性用トイレ、男性用トイレなど)」の27.69%を大きく上回った(図3)。
図3 利用することが多いおむつ替え台の場所(SA; n=1,412)
つまり、外出先でのおむつ替えにおいて、プライバシーの保たれた環境が重要であることが分かる。ママ達は、他人の視線を気にせずにおむつ替えができる安心感や、ゆったりとお子さまのケアに集中できる快適さを望んでいるのだろう。
おむつ替え台の利用時間は10分未満と短時間
外出先の商標施設・公共施設内のおむつ替え台を利用する際、「5分未満」が32.57%、「5~10分未満」が56.01%であり、約90%が10分未満でおむつ替えを終えていることが分かった(図4)。
図4 おむつ替え台の利用時間(SA; n=1,412)
短時間での利用が多い背景には、なるべく効率的におむつ替えを済ませたいという意識や、おむつ替え台の周りに他の利用者がいる場合、長時間の占有を避けるために配慮している可能性も考えられる。
悩み・不満のうち「おむつ替え台が不衛生」「狭い」が上位
外出先のおむつ替え台を利用する際に感じた悩み・不満として、「おむつ替え台が不衛生」(61.26%)が最も多く、他にも「使用済みおむつを捨てることができない」(39.51%)、「親自身が手を洗いづらい」(23.37%)という回答も見られ、衛生的な環境の維持が不可欠であることが分かる。
また、「おむつ替えをする場所が狭い」(45.25%)、「おむつ替えをする場所が少ない」(42.77%)、「荷物やベビーカーなどを置く場所がない」(40.43%)といった空間や利便性に関する不満も多く、前問で挙げられた効率的なおむつ替えという観点でも、物理的なスペース不足が顕著な課題となっている(図5)。
図5 外出先でのおむつ替えに関する悩み・不満(MA; n=1,412)
その他の悩み・不満として、パパが使用できるおむつ替え台や年齢体重に応じたおむつ台の不足などが挙げられた。
<おむつ替えをする際に感じた悩みや不満(FA)>
・夫と協力できる場所にない。または授乳室と兼用だったり授乳室と近かったりと男性が入りづらい。
・女性専用が多いため、男性も入れる、もしくは男性トイレにも設置して欲しい。
・おむつ台の対象年齢が2歳くらいまでのものが多く、それ以上の年齢になってもおむつをしている場合、使用に不安を感じている。
・立っておむつを変える場所が少ない。大きくなるとおむつ台の対象年齢、体重から外れる。
外出先でおむつ替えをする際、ママがお子さまについて考えていること
外出先でおむつ替えをする際に、ママがお子さまについて考えていること(考えているだけで実行できなかったことを含む)を聞いた。
その結果、お子さまの健康状態に関わる項目が多いことが分かった。具体的には、「おしっこやうんちの状態」(47.87%)が最も多く、「子どもの肌の状態(かぶれ・赤みがないかなど)」(40.22%)、「おしっこやうんちのにおい」(28.54%)と続いており、体調や肌の状態に対して高い意識を持っていることが分かる。また、「機嫌の良さ」(46.52%)も上位に挙げられ、機嫌の良いうちにおむつ替えを済ませたい、空腹や体調が影響してぐずっていないか、などを考えていると推測される(図6)。
図6 お子さまについて考えていること(MA; n=1,412)
外出先でおむつ替えをする際、ママが自分自身について考えていること
外出先でおむつ替えをする際に、ママが自分自身について考えている(考えているだけで実行できなかったことを含む)ことを聞いた。
その結果、自分自身の衛生面を気にかけるママが多いことが分かった。特に、「手洗い・消毒」(63.10%)が最も多く、これは衛生管理に対する強い関心と不安の表れと考えられる(図7)。おむつ替えの後、お子さまを清潔に保つことはもちろん、親自身も衛生管理を徹底することで二次感染のリスクを防ぎ、親子の安全を保とうとする意識が伺える。
図7 自分自身について考えていること(MA; n=1,412)
また、「トイレで用を足すこと」(51.91%)、「生理用品の交換」(15.36%)といった生理現象への対処、「疲労・ストレス」(20.25%)、「足・腰の痛み」(15.43%)といった健康不安、「身だしなみ・服装を整える」(19.33%)、「髪型を整える」(12.60%)といった美容面などについても考えていることが分かった。
上記の項目は、考えているだけで実行できなかったことも含まれているため、ママ達がお子さまや自分自身に関して、我慢せずに実行できる環境整備も必要であろう。
4.おわりに
今回の調査により、多くのママが外出先でおむつ替え台を利用しており、共通して抱える悩み・不満の上位が、「衛生面への配慮不足」、「スペースの狭さ」、「場所の少なさ」であった。また、外出先では、プライバシーが保たれるだけでなく、お子さまの健康や機嫌を気にかけながらスムーズにおむつ替えができる環境が強く求められている。
こうした結果を踏まえ、商業施設・公共施設において、清掃の頻度を増やすなど衛生的な環境の維持や、人の出入りが少ない場所でのおむつ替え台の設置、十分な広さのスペース確保や間取り、使用済みおむつを捨てられる設備の設置など、親子が快適に過ごせる環境を見直す必要がある。
本調査結果が、各施設において快適で利便性の高い育児環境の整備を進める一助となり、育児中の家庭がより安心して外出できるようになることを期待する。
(子育てマーケティング研究所 村尾)
【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。
出典:「商業施設・公共施設におけるおむつ替え台利用実態調査(株式会社コズレ)」
(子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)