1. はじめに
2026年度から本格実施された「こども誰でも通園制度」は、親の就労状況を問わず、生後6か月から満3歳未満の未就園児を時間単位で保育施設に預けられる新しい仕組みである。少子化や子育て家庭の孤立が課題となるなか、「家庭だけでがんばりすぎない子育て」を地域で支える制度として期待を集めている。一方で、制度がどの程度知られ、誰が「自分ごと」として捉え、実際の利用や利用意向にどうつながっているのかは、本格実施初年度の今、なお明らかになっていない。そこで本調査では、自宅で子どもを保育している親を対象に、制度の認知・対象理解・利用意向・利用実態、そして社会的な受け止めを明らかにした。
本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部である。「4.調査項目」記載のうち、掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。
2. 調査
調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:自宅で未就園児を保育している親
調査期間:2026年5月20日(水)〜2026年6月5日(金)
有効回答数:190名
3. 結果・考察

📊 本章で言及する全グラフ(図1〜図10)は、記事末尾にまとめて掲載しています。
各小見出しの「→ 図〇」の番号と対応していますので、あわせてご参照ください。
回答者は0〜1歳児の親が中心、約7割が専業主婦(主夫)(→ 図1・図2)
回答者の長子年齢は0歳が合計で約74.7%、1歳が約15.8%と、低年齢児の親が中心であった(→ 図1)。家庭の状況では、「日中は主に専業主婦(主夫)として育児をしている」が約74.2%と最多で、ワンオペ育児になりがちが約32.6%、頼れる親族が近くにいないが約24.2%と続いた(→ 図2)。これは、就労を理由とした保育利用の枠外に置かれてきた層が回答者の中心であり、かつ育児の孤立リスクを一定程度抱えていることを示している。
本制度が重視する「子どもの育ち」と「保護者支援」の観点から見ても、自宅保育中の親は重要な利用対象層の一つと考えられる。
内容まで理解しているのは約3割、4人に1人は「初めて知った」(→ 図3)
制度を「名前も内容もよく知っている」と回答した親は約30.5%にとどまり、「名前は聞いたことがあるが内容は知らない」が約43.7%、「今回の調査で初めて知った」が約25.8%であった(→ 図3)。本格実施初年度であり、名称の認知は広がりつつある一方、内容理解は途上にある段階と考えられる。
認知の「量」は広がりつつあるものの、内容理解の「質」が追いついていない可能性がある。
制度を知っていても約54%が「自分が対象か分からない」(→ 図4)
制度を認知している親に限っても、自分や家庭が利用対象になるかを「はっきりと理解している」のは約46.1%にとどまり、約53.9%が「対象になるかどうか、よく分からない」と回答した(→ 図4)。就労要件を問わないという従来の保育とは異なる枠組みであるため、対象範囲が直感的に伝わりにくいことが背景にあると示唆される。
認知を獲得した次の段階として、「自分が使える制度だ」と自分ごと化してもらう情報設計が、利用の前提になると考えられる。
制度を知った情報源は「自治体の広報」が約51%で最多(→ 図5)
制度認知者が制度を知った情報源は、「自治体の広報誌やホームページ」が約51.1%で最多であった。次いで「SNS(Instagram、Xなど)」が約29.8%、「子育て専門メディアやブログ」が約17.0%と続いた(→ 図5)。公的制度であるため自治体発信が一次情報として機能し、SNSやメディアがそれを補完する構図がうかがえる。
自治体チャネルを起点に、SNSや専門メディアで対象理解を補強する二段構えの情報提供が有効と考えられる。
認知者の約9割が未利用、利用はまだ立ち上がり段階(→ 図6)
制度認知者のうち「利用したことはない」が約92.2%を占め、「単発・緊急時に利用したことがある」が約4.3%、「定期的に利用している(経験を含む)」が約3.5%であった(→ 図6)。本格実施初年度であり、利用がようやく立ち上がり始めた段階にあると考えられる。
認知から利用への転換は、これからが本番の局面にあるといえる。
未利用者の約8割が「利用してみたい」と回答(→ 図7)
未利用者に利用意向を尋ねたところ、「ぜひ利用してみたい」が約17.7%、「機会があれば利用してみたい」が約62.3%で、両者を合わせた利用意向は約80.0%に達した(→ 図7)。前述のとおり実際の利用はまだ限られるが、潜在的なニーズは極めて大きいことが分かる。
認知や対象理解の壁を越えれば利用に転じうる、強い潜在需要が存在していると考えられる。
最大の障壁は「手続きが分からない」約48%、次いで心理的な壁(→ 図8)
「利用してみたいが利用していない」理由としては、「具体的な利用方法や手続きが分からない」が約47.7%で突出して多かった。次いで「預けること自体への心理的な不安や心配」が約25.4%、「就労していないのに預けることへの罪悪感」が約20.0%、「近くの保育施設に空きがない」が約17.7%と続いた(→ 図8)。利用を阻む最大の要因は情報・運用の分かりにくさであり、それに罪悪感や周囲の目といった心理的な壁が重なっている構図が読み取れる。
少なくとも未利用理由を見る限り、利用意向の低さよりも、「分かりにくさ」と「後ろめたさ」が大きな壁になっている可能性がある。
(参考)利用者の目的は「集団生活に慣れさせる」「親の休息」(→ 図9)
実際に利用した親の目的としては、「子どもを集団生活に慣れさせるため」が約54.5%、「親の休息・孤立回避のため」と「自分自身の通院や体調不良のため」がともに約36.4%であった(→ 図9)。子どもの育ちを支える目的と、親のレスパイト(休息)を支える目的の双方が確認できる。なお、利用経験者の回答数は限られるため、傾向を読む際の参考値として捉える必要がある。
子の発達支援と親のレスパイトという二つの価値を併せて訴求できる制度であると考えられる。
自宅保育中の親の約78%が制度に肯定的、残るは「気が引ける」層(→ 図10)
「就労を問わず誰でも子どもを預けてよい」という社会の風潮について、「育児負担を減らすため、もっと気軽に頼るべき」が約48.4%、「子どもの発達や社会性のためにも良い制度」が約29.5%で、肯定的な回答は合計で約77.9%に達した。一方で、「必要性は理解できるが、自分が使うのは少し気が引ける」が約14.7%、「家庭で見られるなら預けるべきではない」が約7.4%であった(→ 図10)。制度への社会的受容は進む一方、「自分が使うのは気が引ける」という心理的ハードルが一定数残っている。
社会的受容は総じて高く、残された心理的ハードルの解消が、利用拡大に向けた次の鍵になると考えられる。
4. 調査項目
- 長子の年齢
- 家庭の状況(複数回答)
- 現在の就園状況
- 「こども誰でも通園制度」の認知度
- 自分が利用対象かどうかの理解
- 制度を知った情報源(複数回答)
- 制度の利用経験
- 制度の利用意向(未利用者)
- 利用したいが利用していない理由(未利用者・複数回答)
- 実際に利用した目的・理由(利用経験者・複数回答)
- 「就労を問わず誰でも預けてよい」風潮への本音
※本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部。掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問い合わせいただきたい。
5. おわりに
本調査からは、本格実施初年度の「こども誰でも通園制度」が、認知の入口にいる段階であることが浮かび上がった。制度名を聞いたことのある親は多いものの、内容まで理解しているのは約3割にとどまり、約4人に1人は今回初めて制度を知った(図3)。さらに、制度を知っていても自分が対象になるかを理解していない親が約54%にのぼり、認知の「量」に対して理解の「質」が追いついていない実態が確認された(図4)。
一方で、利用意向は極めて高い。未利用者の約8割が「利用してみたい」と回答しており、潜在需要の大きさは明らかである(図7)。にもかかわらず、実際の利用者はまだ限られている(図6)。この「期待は高いのに使われない」というギャップを生んでいるのが、「具体的な利用方法や手続きが分からない」という情報・運用の壁(約48%)と、「就労していないのに預けることへの罪悪感」や「心理的な不安」といった心の壁である(図8)。
自宅保育中の親の間では、制度を肯定的に受け止める回答が約78%にのぼり、受容は着実に進んでいる(図10)。利用者の目的も、子どもを集団生活に慣れさせる、親が休息をとるなど、制度が掲げる「子どもの育ち」と「保護者支援」の双方に重なっていた(図9)。つまり、制度の方向性そのものへの共感は高く、課題は「どう伝え、どう自分ごと化してもらい、どう後ろめたさを取り除くか」という、コミュニケーションと運用の設計に集約されると考えられる。
認知から対象理解へ、そして利用へ。各段階の壁を一つずつ越える情報設計こそが、潜在需要を実際の利用へと転換する近道になるだろう。
コズレ子育てマーケティング研究所では、こうした妊娠中のママや子育て中ママのリアルな声をお伝えすると共に、市場動向を明らかにしていきます。
本調査の詳細レポート、及び子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。
(コズレ子育てマーケティング研究所 早川)
【グラフ】図1〜図10(全グラフまとめ)

【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。
出典:「「こども誰でも通園制度」認知・利用意向調査(株式会社コズレ)」https://cozre.co.jp/blog/19617
(コズレ子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)
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