1. はじめに
男性の育児休業取得率は、産後パパ育休をはじめとする制度整備の進展とともに年々上昇しており、夫婦で育児を担うことが子育て世帯の選択肢として市民権得つつある。一方で、取得「率」の高まりに比べ、育休の「中身」、すなわち取得期間や育休中の家庭内での関わり方の実態は、十分に明らかになっていない。育休が家庭にもたらす効果は、取得期間や関わり方によって大きく異なる可能性がある。そこで本調査では、長子0歳以上の子を持つママを対象に、夫の育休取得の実態と育休中の関わり方を聴取し、あわせて育休期間による差異を明らかにした。
本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部である。「4.調査項目」記載のうち、掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。
2. 調査
調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:長子0歳以上の子を持つママ
調査期間:2026年5月27日(水)〜2026年6月12日(金)
有効回答数:384名(うち夫の育休取得者180名に育休中の実態を聴取)
3. 結果・考察

📊 本章で言及する全グラフ(図1〜図24)は、記事末尾にまとめて掲載しています。
各小見出しの「→ 図〇」の番号と対応していますので、あわせてご参照ください。
夫の育休取得率は約46.9%、期間は「1ヶ月以上〜3ヶ月未満」が最多(→ 図1・図2)
夫が育休を取得した(または取得中)と回答した家庭は約46.9%であった(→ 図1)。取得期間は「1ヶ月以上〜3ヶ月未満」が約33.9%で最多となり、1ヶ月以上の取得が合計で約56.1%を占めている(→ 図2)。背景には、産後パパ育休など制度面の整備に加え、企業・社会全体での取得促進の機運の高まりがあると考えられる。
夫の育休は特別な選択ではなく、子育て世帯にとって一般的な選択肢として定着しつつあることが示唆される。
1日の関与時間は「8時間超」が約39.4%で最多、期間が長いほど深く関与(→ 図3・図4)
育休中に夫が1日あたりに家事・育児へ実質的に関わっていた時間は、「8時間超」が約39.4%で最多であった(→ 図3)。育休期間別に見ると、「8時間超」の割合は1ヶ月未満で約26.6%、1〜3ヶ月未満で約44.3%、3ヶ月以上で約57.5%と、期間が長いほど高まっている(→ 図4)。長期の取得では、生活全体を育児中心に組み立て直す必然性が生じ、関与が自然と深まる構造があると考えられる。
育休期間の長さは、家事・育児への関与の「深さ」と連動している可能性が示唆される。
主体的に行った家事・育児は「沐浴」「おむつ替え」が8割前後(→ 図5)
夫が育休中に主体的に行っていた家事・育児は、「お風呂(沐浴)」が約80.6%、「おむつ替え・着替えの補助」が約76.7%で上位となり、「ミルク作り・授乳」約65.0%、「洗濯・掃除・ゴミ出し」約61.7%が続いた(→ 図5)。一方、「特になし」は約3.3%にとどまっている。大多数の夫は育児・家事の複数領域に自ら関与しており、いわゆる「形だけの育休」は実態としては少数派であることがうかがえる。
育休を取得した夫の多くは、複数の領域で主体的に家事・育児を担っていると考えられる。
育休中の様子は「主体的に担ってくれた」が約61.7%で最多(→ 図6・図7)
夫の育休中の様子について、ママの実感として最も多かったのは「主体的に家事・育児を担ってくれた」で約61.7%であった。「指示すれば動いてくれたが受動的だった」は約33.3%、「ほとんど関与がなかった」は約5.0%にとどまる(→ 図6)。育休期間別では、「主体的」の評価は1ヶ月未満で約51.9%、1〜3ヶ月未満で約68.9%、3ヶ月以上で約70.0%と上昇している(→ 図7)。短期間の取得では、家事・育児に習熟する途上で育休が終了してしまう可能性がある。
主体性は当人の資質だけで決まるのではなく、育児に向き合う時間の長さの中で育まれる可能性が示唆される。
育児以外の時間の過ごし方と、伝えられなかった「本音」(→ 図8・図9)
夫が家事・育児以外の時間に行っていたこととしては、「スマートフォン・PCの操作」が約67.2%、「普段通り・普段以上の睡眠」が約40.6%であった(→ 図8)。また、育休中に夫へ伝えられず我慢した本音としては、「自分で調べて主体的に動いてほしい」「スマホより子どもの様子を見てほしい」と「特に我慢した本音はない」が、いずれも約34.4%で並んでいる(→ 図9)。休息やリフレッシュは継続的な育児参画のためにも必要である一方、その過ごし方を巡る夫婦間の認識のずれが、言葉にされないまま蓄積されやすい構造がうかがえる。
期待する役割分担を事前に言語化して共有することが、認識のずれの予防につながると考えられる。
ママの負担・ストレスは「減った」が合計約77.2%、1ヶ月以上で効果が顕著(→ 図10〜図12)
夫の育休中のママの休息については、「多少は休めた」が約60.0%、「しっかり休めた」が約24.4%であった(→ 図10)。負担・心理的ストレスは「大幅に減った」約40.0%と「多少減った」約37.2%をあわせ、約77.2%が軽減を実感している(→ 図11)。育休期間別に見ると、「大幅に減った」は1ヶ月未満で約27.8%にとどまる一方、1〜3ヶ月未満で約49.2%、3ヶ月以上で約50.0%と、1ヶ月以上の取得で約5割に達している(→ 図12)。
夫の育休はママの負担軽減に総じて寄与しており、1ヶ月以上の取得がその効果を質的に高める可能性が示唆される。
満足度は「満足」が合計約72.2%、夫婦喧嘩は「変わらない」が約58.3%(→ 図13〜図15)
夫の育休中の関わり方への満足度は、「非常に満足」約40.6%と「ある程度満足」約31.7%をあわせ、約72.2%が満足と回答した。不満(「やや不満」「非常に不満」の合計)は約12.2%にとどまる(→ 図13)。「非常に満足」は育休期間が長いほど高く、1ヶ月未満の約35.4%に対し3ヶ月以上では約47.5%となっている(→ 図14)。また、育休中に夫婦喧嘩が増えたかについては「変わらない」が約58.3%で最多であった(→ 図15)。
夫の育休は大半の家庭で肯定的に評価されており、取得期間の長さが満足度をさらに押し上げる傾向が示唆される。
「形骸化」を感じた背景には、家庭・職場双方の準備不足(参考値)(→ 図16・図17)
育休が形骸化したと感じた層(回答者数が少ないため参考値)にその理由を尋ねると、「夫自身の育児への当事者意識の低さ」が約77.3%で最多となる一方、夫婦間で役割分担や期待値を事前に共有できていなかったことも約40.9%にのぼった(→ 図16)。勤務先の対応については、「男性育児のノウハウや教育が会社側になかった」が約40.9%を占めている(→ 図17)。形骸化は夫個人の問題に還元されるものではなく、夫婦間の役割共有の不足や、企業側の受け入れ準備の不足が複合した結果であると読み取れる。
「とるだけ育休」は個人の資質ではなく、家庭と職場の双方における準備不足という構造的な課題として捉える必要があると考えられる。
取得率向上のアピールは「良い傾向」が約41.7%、論点は「率」から「質」へ(→ 図18・図19)
世間や企業が男性の育休取得率向上をアピールすることについては、「非常に良い傾向だと思う」が約41.7%で最多となる一方、「数字が進むのは良いが、中身(質)が伴っていない」が約32.2%で続いた(→ 図18)。また、本当に救われたと感じる育休の形としては、「期間を長く取り、家事育児の半分を完全に分担する」が約46.1%、「期間は短くても、24時間体制で交代できるレベルで関わる」が約41.7%となり、「育休は取らずに仕事に専念してくれる」は約10.6%にとどまった(→ 図19)。育休そのものはママから強く支持されており、議論の焦点は取得の有無から取得の「中身」へと移行している。
今後は取得率に加え、期間と関わり方という「質」の設計が問われる段階に入っていると考えられる。
再取得意向は合計約92.8%、期間が長いほど「ぜひ」が増加(→ 図20・図21)
次の機会(第二子以降など)に夫へ育休を再取得してほしいかについては、「ぜひ取得してほしい」が約65.6%、「条件付きで取得してほしい」が約27.2%となり、あわせて約92.8%が取得を希望している(→ 図20)。「ぜひ取得してほしい」は育休期間別に、1ヶ月未満で約58.2%、1〜3ヶ月未満で約70.5%、3ヶ月以上で約72.5%と、期間が長いほど高まっている(→ 図21)。
夫の育休は一度の経験を経てなお大多数の家庭で求められており、家庭にとって価値ある制度として受け止められていることが示唆される。
育休経験は夫の働き方も変える、「変化した」が合計約67.8%(→ 図22〜図24)
育休を形骸化させないために企業・社会が取り組むべきこととしては、「男性社員への『育児の基礎研修』の義務化」が約35.6%、「取得率だけでなく期間や中身を評価する仕組みへの転換」が約33.9%で上位となった(→ 図22)。また、育休前後で夫の仕事への意識・働き方に変化があったかについては、「非常に変化した」約28.3%と「多少変化した」約39.4%をあわせ、約67.8%が変化を実感している(→ 図23)。「非常に変化した」は育休期間が長いほど高く、3ヶ月以上では約40.0%に達した(→ 図24)。育休の経験が効率的な働き方への意識転換を促していると読み取れる。
男性の育休は家庭への貢献にとどまらず、企業にとっても従業員の働き方を見直す契機となる可能性がある。。
4. 調査項目
- 夫の育休取得の有無
- 夫が取得した育休の期間
- 育休中に夫が1日あたりに家事・育児へ関わっていた時間
- 夫が育休中に主体的に行っていた家事・育児
- 夫が家事・育児以外の時間に行っていたこと
- 夫の育休中の様子についての実感
- 育休中のママの睡眠・休息
- ママの負担・心理的ストレスの変化
- 夫の育休中の関わり方への満足度
- 育休中の夫婦喧嘩の増減
- 育休中、夫に伝えられず我慢した本音
- 育休が形骸化したと感じた理由
- 夫の勤務先の対応で形骸化を助長したと感じた点
- 「男性の育休取得率」向上のアピールへの受け止め
- 本当に救われたと感じる育休の形
- 次の機会の育休再取得意向
- 形骸化させないために企業・社会が取り組むべきこと
- 育休前後での夫の仕事への意識・働き方の変化
- 育休中のエピソードやご意見(自由回答)
- 回答者属性(年齢・就業状況・居住地・世帯年収)
※本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部。掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。
5. おわりに
本調査ではまず、夫の育休取得の広がりが確認された。約46.9%の家庭で夫が育休を取得しており、期間は「1ヶ月以上〜3ヶ月未満」が最多で、1ヶ月以上の取得が過半を占めている。夫の育休はもはや特別な選択ではなく、子育て世帯の標準的な選択肢になりつつある(図1・図2)。
育休中の関わり方を見ると、約61.7%のママが夫は「主体的に家事・育児を担ってくれた」と評価しており、沐浴・おむつ替えをはじめ複数の領域で自発的な関与が確認された。一方で、過ごし方を巡る夫婦間の認識のずれが、言葉にされない本音として残るケースも一定数存在する(図3〜図9)。
家庭への効果としては、約77.2%のママが負担・ストレスの軽減を実感し、満足度も約72.2%と高い水準にある。特筆すべきは育休期間との関係であり、関与時間・主体性の評価・ストレス軽減・満足度のいずれも、期間が長いほど高まる一貫した傾向が確認された(図10〜図15)。
そして、約92.8%が次の機会にも夫の育休取得を希望しており、育休経験は夫自身の働き方の効率化にもつながっている。今後の論点は取得「率」から取得の「質」、すなわち期間の確保と関わり方の設計へと移っていくと考えられる(図16〜図24)。
コズレ子育てマーケティング研究所では、こうした妊娠中のママや子育て中ママのリアルな声をお伝えすると共に、市場動向を明らかにしていきます。
本調査の詳細レポート、及び子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。
(コズレ子育てマーケティング研究所 早川)
【グラフ】図1〜図24(全グラフまとめ)

出典
【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。
出典:「『夫の育休』実態調査2026(株式会社コズレ)」https://cozre.co.jp/blog/19770
(コズレ子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)



