1. はじめに
共働き世帯が標準となるなか、育児休業から職場へ復帰するママにとって、仕事と育児の両立は大きな関心事である。とりわけ、自ら望まないにもかかわらず補助的な業務へ固定化され、キャリアを諦めざるを得なくなる「マミートラック」への懸念は根強い。しかし、復職前に抱く「予感」が、復職後にどの程度「現実」となっているのかは、これまで十分に可視化されてこなかった。そこで本調査では、育休中ママが抱く両立不安とマミートラックの予感、そして復職済ママが直面した現実の壁を対比し、両者のズレと、その背景にある構造を明らかにした。
本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部である。「4.調査項目」記載のうち、掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。
2. 調査
調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:妊娠中および0歳以上の子を持つコズレ会員のうち、仕事を持つ産後のママ(育休中・復職済を含む)
調査期間:2026年6月2日(火)〜2026年6月16日(火)
有効回答数:393名
3. 結果・考察

📊 本章で言及する全グラフ(図1〜図9)は、記事末尾にまとめて掲載しています。
各小見出しの「→ 図〇」の番号と対応していますので、あわせてご参照ください。
育休中ママの約88.6%が復職時の両立に不安を抱える(→ 図1)
育休中のママに復職を控えた両立への不安を尋ねたところ、「とても不安がある」「やや不安がある」の合計が約88.6%に達した(→ 図1)。不安を感じていない層はごくわずかである。
復職は、生活リズムや働き方が一変する大きな転機であり、見通しの立たない段階で不安が高まることは自然な反応と考えられる。
育休中は両立への不安が最も高まる時期であり、両立を支える商品・サービスの訴求が最も届きやすいタイミングであると考えられる。
不安の最大要因は「保育園の急な呼び出し」約68.1%(→ 図2)
両立に不安を感じる理由としては「保育園の急な呼び出しへの対応」が約68.1%と突出して高い(→ 図2)。次いで「自身のスキル・効率化能力の不足」が約34.9%、「時短で補助業務(マミートラック)化しそう」が約20.1%と続く。
上位を占めるのは、キャリアそのものよりも、突発的な事態に日々どう対処するかという運用面の不安である点が特徴的である。
育休中の不安の核は、抽象的なキャリア像ではなく「突発対応をどう乗り切るか」という運用面にあると考えられる。
育休中ママの約54.1%がマミートラックを予感(→ 図3)
復職後に意に反して補助業務へ配置転換されたり、キャリアを諦めたりするマミートラックを予感しているかを尋ねたところ、「強く予感している」「やや予感している」の合計が約54.1%となった(→ 図3)。復職前の段階で、半数を超えるママが望まぬキャリアの停滞を覚悟していることになる。
復職を経験していない段階での回答であり、周囲の事例や報道などから形成されたイメージが反映されている可能性がある。
育休中は「キャリアを諦めずに済む」という安心を提供するメッセージが響きやすい時期であると考えられる。
復職後も約90.5%が両立を「大変」と実感(→ 図4)
一方、すでに復職済のママに両立の実感を尋ねると、「とても大変」「やや大変」の合計が約90.5%に上った(→ 図4)。これは育休中ママの不安(約88.6%・図1)とほぼ一致する水準である。
両立の負担そのものは、予感の段階からほぼ正確に見通されており、復職後も総論として現実化していることがうかがえる。
両立負担そのものは確実に発生する課題であり、その解決策を提供する市場性は高いと考えられる。
現実の壁は「保育園対応」約68.6%と「時短での処遇引き下げ」約21.0%(→ 図5)
復職後に実際に直面した壁を見ると、「保育園の呼び出しによる早退・欠勤」が約68.6%で最多であった(→ 図5)。次いで「時短を理由とした基本給・賞与の削減」が約21.0%、「残業不可を理由とした評価ダウン」が約16.2%と続く。一方で「補助業務(マミートラック)への配置転換」は約1.9%にとどまった。
育休中の予感では「補助業務化しそう」が約20.1%(図2)であったのに対し、現実の配置転換は約1.9%と大きく乖離している。漠然と恐れられた配置転換よりも、処遇面と日々の運用こそが実際の壁となっている。
恐れられる「補助業務化」は現実には稀であり、実際の痛点は「呼び出し対応」と「時短に伴う収入減」にあると考えられる。
マミートラックの実感は約41.9%、予感を下回る(→ 図6)
復職後にマミートラックに陥っていると「強く感じる」「やや感じる」の合計は約41.9%であった(→ 図6)。育休中のママが抱く予感(約54.1%・図3)を約12ポイント下回る。なお、育休中と復職済は別の回答者集団であり、同一個人を追跡したものではないため、あくまで傾向としての比較である。
それでもなお、予感が現実をやや上回る方向にズレている点は、マミートラックが「恐れていたほどには起きていない」可能性を示唆している。
マミートラックの恐れは実態よりやや先行しており、過度な不安を払拭すること自体が価値提供になりうると考えられる。
約54.8%が「長時間労働者が優遇される」評価風土を実感(→ 図7)
長時間労働ができる社員が優遇・評価される空気や評価システムが勤め先にあるかを尋ねたところ、「明確にある」「なんとなくある」の合計が約54.8%となった(→ 図7)。
マミートラックを生む土壌として、労働時間の長さを前提とした評価のあり方が、半数を超える職場で意識されていることがうかがえる。
両立の難しさは個人の問題ではなく評価制度という構造に根があり、構造へ寄り添う訴求が共感を得やすいと考えられる。
「復職時ハラスメント」の空気を約42.2%が感じる(→ 図8)
時短勤務や残業ができない働き方を選ぶことで肩身の狭い思いをする、いわば「復職時ハラスメント」のような空気を感じる(または懸念する)ママは、「強く感じる」「少し感じる」の合計で約42.2%に上った(→ 図8)。
制度の有無とは別に、選択そのものへ向けられる無言の圧力が、両立の継続を妨げる要因となっている可能性がある。
制度だけでなく職場の空気そのものが障壁となっており、心理的負担への配慮が求められると考えられる。
最も求められる変革は「カバーし合うチーム体制」約69.5%(→ 図9)
復帰ママに必要なサポートや変革を尋ねると、「欠勤・早退をカバーし合うチーム体制」が約69.5%で突出した(→ 図9)。次いで「パートナーの長時間労働是正・家庭進出」が約39.8%、「周囲の意識改革・ハラスメント防止」が約38.6%、「成果・効率で評価する仕組みへの刷新」が約35.9%と続く。
最優先で求められているのは制度の刷新よりも、突発時に支え合える運用であり、最大の壁であった保育園対応(図2・図5)と整合する結果である。
復帰ママが求めるのは特別扱いではなく、突発対応を吸収できるチーム運用であると考えられる。
4. 調査項目
- 長子の年齢
- 現在の就労状況
- 【育休中】復職にあたっての仕事と育児の両立不安の有無
- 【育休中】両立に不安を感じる理由(複数選択)
- 【育休中】マミートラック(補助業務への配置転換・キャリアの諦め)の予感
- 【復職済】復職後に実感する両立の大変さ
- 【復職済】両立において直面した壁(複数選択)
- 【復職済】マミートラックに陥った実感
- 長時間労働ができる社員が優遇される評価風土の有無
- 時短・残業不可の選択に伴う「復職時ハラスメント」の体感・懸念
- 復帰ママに必要なサポート・変革(複数選択)
- 仕事と育児の両立および職場の評価体制に関する自由記述
※本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部。掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。(お問い合わせはこちら)
5. おわりに
本調査では、育休中ママが抱く「予感」と、復職済ママが直面する「現実」を対比した。まず予感のフェーズでは、育休中ママの約88.6%が両立に不安を抱え、約54.1%がマミートラックを予感していた。その不安の核は「保育園の急な呼び出しへの対応」(約68.1%)であった(図1〜図3)。
次に現実のフェーズでは、復職後も約90.5%が両立を大変と実感し、両立負担という総論的な不安はほぼ的中していた。しかし、育休中に約20.1%が恐れた「補助業務化」は、現実には約1.9%にとどまり、実際の壁は「保育園対応」(約68.6%)と「時短を理由とした処遇の引き下げ」(約21.0%)であった。マミートラックの実感も約41.9%と、予感をやや下回った(図4〜図6)。
こうしたズレの背景には、長時間労働者が優遇される評価風土(約54.8%)や、時短選択に向けられる「復職時ハラスメント」の空気(約42.2%)という構造的要因がある。そして復帰ママが最も求める変革は、制度の刷新よりも「欠勤・早退をカバーし合うチーム体制」(約69.5%)であった(図7〜図9)。
総じて、復帰ママへの支援においては、漠然とした「キャリアの諦め」への対処よりも、「突発対応をどう支えるか」という運用面と、「時短に伴う収入減」という処遇面に焦点を当てる方が、実際の痛点に即していると考えられる。
コズレ子育てマーケティング研究所では、こうした妊娠中のママや子育て中ママのリアルな声をお伝えすると共に、市場動向を明らかにしていきます。
本調査の詳細レポート、及び子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。
(コズレ子育てマーケティング研究所 早川)
【グラフ】図1〜図9(全グラフまとめ)

【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。
出典:「産後ママの「マミートラック」予感と現実 調査2026(株式会社コズレ)」https://cozre.co.jp/blog/19806
(コズレ子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)



