1.はじめに
思い通りにいかないのが子育てであるが、子どもの歯みがきもまた、思い通りにいかないことのひとつではないだろうか。とくに、歯みがきをする目的がきちんと理解できていない年齢の子を持つママにとって、子どもが虫歯になって痛い思いをさせないよう懸命に行い続けることは、日々戦いであるに違いない(ワタシもそうでした・・・)。
親の気持ちなど知らずに子どもは嫌がり逃げ回る。ママはそれを追いかけまわし、半ば無理やりに歯みがきをして終わらせる。時間がかかるわりには、「きれいにみがけていない」「毎日、精神的にもつらい」と苦痛すら感じてしまうママも多いのではないだろうか。
そこで今回は、就寝前の歯みがきに着目し、歯みがきにかかる時間とママの苦痛度合いについて、さらにはどうすればママの苦痛が軽減されるのかを考えてみたい。
2.調査
調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:0歳~3歳の子を持つ女性(子どもに歯みがきをさせたことがあると回答した被験者)
調査期間:2020年7月20日(月)~2020年8月3日(月)
有効回答者数:514名
3.結果・考察
(1)就寝前の子どもの歯みがきについて苦痛を感じるママの割合
「就寝前の歯みがきについて、お子様の歯みがきをするのを見守ったり仕上げみがきしたりすることを苦痛に感じますか。」という質問に対して、とても苦痛である(6.23%)、苦痛である(17.32%)、どちらともいえない(32.88%)、苦痛ではない(25.10%)、まったく苦痛ではない(18.48%)という結果になった。
「とても苦痛である」または「苦痛である」と答えたママを歯みがきが「苦痛と感じるグループ(6.23%+17.32%=23.55%;121人)」として、「苦痛ではない」または「まったく苦痛ではない」と答えたママを歯みがきが「苦痛と感じないグループ(25.10%+18.48%=43.58%;224人)」として分類し分析することにした。
(2)「歯みがきが苦痛である」理由
歯みがきが「苦痛と感じるグループ」に属するママ121人へ、苦痛である理由を聞いてみたところ、「仕上げみがきを嫌がるから(65.29%)」、「子どもが歯みがき自体を嫌がるから(57.02%)」の2つの回答が際立って多い結果になった。
その次に多い「無理やり歯みがきをさせていると感じるから(34.71%)」という回答からは、「子どもの歯の健康を守らなければならない」という親としての責任と、「子どもが嫌がることはやらせたくない」という親としてのやさしさの間に葛藤する気持ちが垣間見ることができる。
さて本レポートでは、「歯みがきに取り掛かるまでに時間がかかるから(30.58%)」、「仕上げみがきに時間がかかるから(15.70%)」という「時間がかかるから」という苦痛理由について探っていきたい。
(3)苦痛と感じるグループと苦痛と感じないグループの比較
歯みがきにかかる時間
「就寝前の歯みがきにかかる時間はどのくらいですか」という質問に対する回答を「苦痛と感じるグループ」と「苦痛と感じないグループ」に分けて比較してみた。
ここでいう「歯みがきにかかる時間」とは、ハブラシを準備するところから仕上げみがきを終えて口をすすぐまでの時間とする。
・5分未満と回答したのは、苦痛と感じるグループは52.89%、苦痛と感じないグループは63.39%であり、後者の割合が高い。
・5分~10分未満と回答したのは、苦痛と感じるグループは37.19%、苦痛と感じないグループは31.25%であり、前者の割合が高い。
・10分~20分未満と回答したのは、苦痛と感じるグループが8.26%、苦痛と感じないグループは4.91%であり、前者の割合が高い。
⇒5分以上と回答したのは、苦痛と感じるグループは47.11%、苦痛と感じないグループは36.61%であり、前者の割合が高い。
これらの結果から、「苦痛と感じないグループ」の方が「苦痛と感じるグループ」に比べ5分未満で歯みがきを終える割合が高く(63.39%)、「苦痛と感じるグループ」は「苦痛と感じないグループ」に比べ5分以上かかる割合が高い(47.11%)ことがわかった。ゆえに、歯みがきに5分以上かかる場合、苦痛と感じるママの割合は高くなる可能性が高い。もちろん、ママの気持ちや子どもの歯みがきに対する姿勢などが、要する時間に影響を及ぼしている可能性もあるが。
(4)苦痛と感じるグループと苦痛と感じないグループの比較
子どもが一日に行う歯みがきの回数
次に「お子様は一日に何回歯みがきをしますか。」という質問に対して、歯みがきが「苦痛と感じるグループ」と「苦痛と感じないグループ」の回答を比較した。
その結果、「苦痛と感じないグループ」の方が「苦痛と感じるグループ」に比べて、歯みがきを1日に2回以上行っている割合が高いことが分かる(苦痛と感じるグループ(48.76%)、苦痛と感じないグループ(55.35%))。
ゆえに、1日に1回歯みがきを行うよりも、2回以上行ったほうが歯の健康維持につながるのだとしたら、ママの苦痛度合いによって子どもの歯の健康に差が出てしまう可能性がある。
(5)苦痛と感じるグループと苦痛と感じないグループの比較
子どもが歯みがきをするように工夫していること
では、ママの苦痛度合いによって子どもの歯の健康に差が出てしまうのだとすれば、どのようにして苦痛度合いを軽減することができるのだろうか。
歯みがきが「苦痛と感じるグループ」と「苦痛と感じないグループ」それぞれに属するママ達が行っている「子どもが歯みがきをするように工夫していること」の回答を比較し、そこから解決策を探ってみたいと思う。
「苦痛と感じるグループ」の方が「苦痛と感じないグループ」に比べて、「歯みがきができたことをほめる」割合が高いということがわかった。(苦痛と感じるグループ(59.50%)、苦痛と感じないグループ(48.21%))
また、「苦痛と感じるグループ」は「苦痛と感じないグループ」よりも、味付き歯磨剤の使用や子どもが好きなキャラクターのハブラシを使用していたり、絵本で歯みがきの大切さを教えたりご褒美をあげたりしている。苦痛と感じながらもママ達はあの手この手でなんとか歯みがきをしてもらおうと努力していることがわかる。
反対に、歯みがきが「苦痛と感じるグループ」の方が「苦痛と感じないグループ」に比べて、「親が笑顔で取り組むようにする」割合は低いという結果になった。(苦痛と感じるグループ(28.93%)、苦痛と感じないグループ(40.18%))
歯みがきが「苦痛と感じないグループ」に属するママ達が行っている工夫を実践していくことで苦痛が軽減されるのだとすれば、さまざまな方法を試すと同時に、ママ自身が笑顔で子どもの歯みがきに取り組める方法を見つける必要があるのかもしれない。
それは、子どもと一緒に歯みがきを楽しめるモノやサービスであるのかもしれないし、パートナーや家族が子どもの歯みがきに対して、もっと参加・協力していく必要があるのかもしれない。
その他の子育てや家事をパートナーや家族が分担するのもひとつの手である。そうすれば、ママの気持ちに余裕ができて笑顔で歯みがきに取り組めるようになるかもしれない。
4.おわりに
本レポートでは、子どもの歯みがきにかかる時間とママの苦痛度合いについて紹介した。
子どもの歯みがきに5分以上かかる場合、苦痛と感じるママの割合は高くなる。苦痛に感じないように、かつ、継続的な子どもとの歯みがきを考えると、5分以内に終わらせる方が良いだろう。
歯みがきを苦痛と感じないママ達は、1日に2回以上、子どもに歯みがきをさせている割合が高いことも分かった。また、子どもが歯みがきをするよう工夫していることのひとつとして、「親が笑顔で取り組んでいる」割合が高いことも明らかになった。
もし、子どもの歯みがきに苦痛を感じているママ達が「笑顔で歯みがきに取り組む」ことができるようになれば、苦痛は軽減されるのかもしれない。
いずれ、子どもはひとりで歯みがきができるようになる。その日がくるのを楽しみにしながら日々の歯みがきに取り組んでみてはいかがだろうか。
なぜならば、歯みがきも立派な子育てのひとつなのだから。
注記:集計結果は小数点以下第3位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にはならない場合がある。
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コズレ子育てマーケティング研究所では、このように変化していく子育ての現状をお伝えするとともに、今できる支援とは何かを明らかにしていきます。
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【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。
出典:「子どもの歯みがきに関する調査(株式会社コズレ)」
https://cozre.co.jp/4995/
(コズレ子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)