調査レポート

『新型コロナウイルス感染症に関する調査⑥』コロナ禍における妊婦のはたらき方の実態調査~ママたちのコロナとの向き合い方を考える~

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コロナ禍_妊婦_はたらき方

1.はじめに

コロナウイルスが国内で猛威を振るうようになり、10ヶ月が経過しようとしている。コロナ禍で出産された妊婦たちは、不安を抱えながら出産と育児に奮闘し、また、コロナ以降に妊娠が明らかになった妊婦たちは、コロナ禍で妊娠期間を過ごし、出産を迎えようとしている。

ウイルスの流行から10ヶ月。流行初期の2020年2月に妊娠がわかった妊婦も、11月、12月には出産を迎える。そこで今回、コロナ禍で妊娠期間を過ごした妊婦たち、出産を迎えたママたちの声を調査した。妊婦たちはどのような心境でコロナと向き合って妊娠期間を過ごしていたのか。そんな彼女たちのコロナ禍でのはたらき方、妊活、産院での状況について、3回にわたり報告する。

2.調査概要

調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ 
調査対象:末子妊娠中の女性
調査期間:2020年10月23日(金)~2020年11月6日(金)
有効回答者数:2,527名

3.結果・考察

・コロナ禍での妊婦における「リモートワーク中心」のはたらき方割合は11.29%に留まる。
・感染リスクを減らしたい一方で、41.05%の妊婦が「職務内容の変更」は望んでいない。

①はたらき方の変化

現在、仕事をしており「フルタイム勤務」「時短勤務・パートタイム」「自営業・フリーランス」と回答した被験者(n=1,187)に、出社とリモートワークの割合を聞いた。

「出社(ほぼ100%)」と回答した被験者は77.67%にのぼり、リモートワーク中心のはたらき方を行っている妊婦たちは全体の11.29%に留まった(図1)。
コロナ_はたらき方

さらに妊娠期別に見ていくと、妊娠2ヶ月から8ヶ月までの妊婦の出社割合はほぼ横ばいであり、妊娠2ヶ月の時点で11.54%であったリモートワークの割合も、妊娠9ヶ月の時点で12.50%と大きな伸びは見られなかった(図2)。

また、産休直前の妊娠10ヶ月ではじめてリモートワークの割合が18.92%まで伸びる結果となり、コロナ禍においても産休直前まで従来のはたらき方を続ける妊婦たちの姿が浮き彫りになった。

2020年4月には厚生労働省より、妊娠中の女性労働者等に配慮した、休みやすい環境整備、テレワークや時差通勤の活用促進等について、各企業へ協力要請が出されたが(注1)、妊婦に対するリモートワークはあまり推進されていないようである。

注1:厚生労働省 「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた妊娠中の女性労働者等への配慮について要請」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10656.html

コロナ_はたらき方

②はたらき方に対する考え

次に、仕事をしている(産休中・求職中を含む)妊婦たち(n=1,815)の考えを聞いた。「(とても)あてはまる」の割合が多い順に並び替えた結果が図3である。その結果から、(1)感染リスクを減らしたい、(2)収入減は避けたい、(3)職務内容やはたらき方は大きく変えたくない、という3つのポイントが見えてきた。

コロナ_はたらき方_リモートワーク

(1) 感染リスクを減らしたい
「通勤回数を減らしたい」と考える妊婦は63.80%に上った。また、「接客」「商談」を減らしたい、「出社時間を変更したい」と考える妊婦もそれぞれ50%を超えている。このことから、人混みや人との接触機会を減らし、感染リスクを減らしたいと考えている妊婦が多いことが伺える。

(2)収入減は避けたい
次に、「休職したい」にあてはまると回答した妊婦は40.33%に対して、あてはまらないと回答した妊婦は33.66%となった。産休を前倒し、(無給での)休職に対する抵抗が伺える。

2020年6月15日には、妊娠中の女性が有給で休暇を取得できるよう「休暇取得支援助成金」(注2)の申請受付が開始しているが、事業主側での申請が必要であること、医師の診断書が必要であること、などクリアしなければならない要件が障壁となっている可能性もある。

無給での休職期間が長くなることを避けたいと考える妊婦が多いことも想定できることから、妊婦への周知がどの程度なされているかも疑問が残る。

(3)職務内容やはたらき方は大きく変えたくない
とくに特徴的であったのが、「職務内容を変更したい」にあてはまると回答した妊婦は29.91%なのに対して、あてはまらないと回答した妊婦は41.05%と上回った点である。その理由として、産休後も仕事を続けたいと考える妊婦たちにとって、産休前に異動すると元の仕事に復帰できないのではないかという不安や、妊娠期間中に新しい仕事を覚えることや、新たな人間関係を構築することへの負担が考えられる。

同様に「リモートワークに切り替えたい/増やしたい」にあてはまると回答した妊婦が39.83%なのに対して、あてはまらないと回答した妊婦が32.90%となったのも、現状の職種によっては変えられない実状が影響しているであろう。

注2:厚生労働省 「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13819.html

4.おわりに

感染者数の増大、外出自粛要請等を背景に、「リモートワーク」が推進されているというニュースや情報を目にするようになったが、実態は、妊婦であっても従来のはたらき方と大きく変わっていないことが明らかになった。但し「リモートワークが推進されていない」ことは、業態や職種によってやむを得ないケースもあり、妊婦が望んでいることは「リモートワークの推進」とは一概に言えないこともわかった。

妊婦が望んでいるのは「今の仕事を安心した形で継続できる」ことだ。そのために、企業としては妊娠中だけでなく、安心して復帰できる職場作りを目指し、病院や自治体、そしてメディアは、妊婦が必要とする支援策や情報を正しく発信していくことが一層求められるであろう。

コズレ子育てマーケティング研究所では、このように変化していく子育ての現状をお伝えするとともに、今できる支援とは何かを明らかにしていきます。

本調査の詳細レポート、及び子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。(コズレ子育てマーケティング研究所 惣宇利)

【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。

出典:「新型コロナウイルス感染症に関する調査(株式会社コズレ)」
https://cozre.co.jp/5233/
(コズレ子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)

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