1.はじめに
新型コロナウイルスが国内で流行し始めてまもなく2年になる。「妊娠から誕生」、そして「生後1歳まで」の期間があわせて1年10ヶ月であることを考えると、随分と長い期間、ママたちはコロナ禍での妊娠・出産、子育てという大きな不安に直面している。2020年の出生数は84万人と1899年の統計開始以降もっとも少ない出生数となった一方で、多くのママたちが妊娠・出産という大きな不安を乗り越えたことも事実である。
変異株の流行などいまだ余談を許さない状況に変わりない。このような状況下で、妊婦たちの就労状況がどう変化したかを報告する。
2.調査概要
調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:末子妊娠中の女性
調査期間:2021年11月18日(木)~2021年12月2日(木)
有効回答者数:末子妊娠中の女性483名
(前回調査)
調査期間:2020年10月23日(金)~2020年11月6日(金)
有効回答者数:末子妊娠中の女性2,527名
3.調査結果要約
・コロナ禍で、はたらく妊婦の割合が前年と比較して6.39pt減少
・コロナ禍における妊婦のリモートワーク導入率は、前年と比較して5.04pt増加
・2021年9月の緊急事態宣言解除後、「通勤」「接客」を控えたいと考える妊婦が7pt以上減少
4.結果・考察
①コロナ禍でのはたらき方
初めに、末子妊娠中の妊婦483名に現在の就労状況を聞いた。「産休・育休中(24.84%)」は、2020年(23.31%)と比較して1.53pt増加している。また、「仕事はしていない(33.33%)」も2020年(28.18%)よりも5.15pt増加しており、はたらく妊婦の割合が若干減少していることが明らかになった(図1)。
一方、妊娠中の現在も「フルタイム勤務」「時短勤務・パートタイム」「自営業・フリーランス」としてはたらく妊婦の割合は40.58%と、2020年46.97%と比較して6.39pt減少している。その内訳として、「フルタイム勤務(26.29%)」が2020年(30.91%)よりも4.62ptも減少し、「時短勤務・パートタイム(前年比1.23pt減)」「自営業・フリーランス(前年比0.54pt減)」もそれぞれ減少していることがわかる。こうしたことから、妊娠を機に退職や、産休を前倒しで取得するなど、自ら外出や人との接触を控えている状況が伺える。
図1 現在の就労状況
次に、妊娠中の現在も「フルタイム勤務」「時短勤務・パートタイム」「自営業・フリーランス」として勤務をしている妊婦(n=196)を対象に、現在のはたらき方を聞いた。
2021年の調査では「出社(ほぼ100%)」が73.47%と2020年と比較して4.20pt減少し、また「リモートワーク(ほぼ100%)」が11.22%と前年比5.07pt増加した(図2)。
「出社」および「出社中心」の割合は80.61%と、2020年の84.07%から3.46pt減少し、「リモートワーク」および「リモートワーク中心」の割合は16.33%と、2020年の11.29%から5.04ptと大幅に増加した。このことから、全体に占める割合は少ないものの、リモートワークが推進されていることが明らかになった。
図2 現在のはたらき方(在職者)
②はたらき方に対する考え
次に、コロナ禍と緊急事態宣言解除後のはたらき方に対する考えを聞いた。
各項目に対して「とてもあてはまる」「あてはまる」と回答した割合が、コロナ禍では「通勤回数を減らしたい(66.77%)」、「出社(出勤)時間を変更したい(54.97%)」、「接客を減らしたい(52.79%)」と続いた(図3)。
とくに2020年の結果と比較して、「リモートワークに切り替えたい/増やしたい」の割合が39.83%から52.79%と12.96ptも上昇していることわかる(図4)。これは、前述のとおり「リモートワーク」が浸透したことにより、リモートワークへの理解と、未導入の企業でも導入を希望する妊婦が増えていると考えられる。
図3 コロナ禍でのはたらき方に対する考え(2021年)
図4 コロナ禍でのはたらき方に対する考え(2020年)
同様に、2021年9月の緊急事態宣言解除後について同じ質問をした結果、コロナ禍において上位であった「通勤回数を減らしたい(66.77%)」が緊急事態宣言解除後(59.31%)では7.46pt、「出社(出勤)時間を変更したい(54.97%)」が緊急事態宣言解除後(48.13%)では6.84pt、「接客を減らしたい(52.79%)」が緊急事態宣言解除後(45.65%)では7.14ptと大きく減少している(図5)。
図5 緊急事態宣言解除後のはたらき方に関する考え
このことから、昨年9月に緊急事態宣言が解除されたことで、直後の調査(11月)では、妊婦においても、通勤や接客を避けたいという考えが緩和されつつあったと考えられる。
職種によっては、通勤と接客を伴う必要があるので、緊急事態宣言の解除は、従来どおり働くための、ひとつのきっかけになっていると考えられる。
しかし2022年2月時点では、母体と赤ちゃんを感染から守るために、依然として予断は許されない状況に転じている。
5.おわりに
緊急事態宣言が解除されたことで、妊婦たちは産休前に再び従来どおり働くことに期待を持っていたかもしれない。しかし本調査の直後、さらなる変異株の感染が国内でも急速に拡大し始めた。
はたらく妊婦たちは、産休・育休後、再び元の仕事や元のポジションに戻れるのか、不安を抱えながらコロナ禍を過ごしているだろう。「リモートワーク」など周囲の理解を得ながら、『妊婦と赤ちゃんのための新しいはたらき方』が広まることを願いたい。
(子育てマーケティング研究所 惣宇利)
【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。
出典:「妊婦のはたらき方 実態調査 2021年11月(株式会社コズレ)」
(子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)