調査レポート

妊娠・出産の実態調査(2021年11月) ~コロナ禍での妊娠・出産はどう変化したか~

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コロナ禍,妊婦さん

1.はじめに

昨年9月末をもって国内すべての緊急事態宣言が解除されてから、およそ5ヶ月が経過。感染者数は過去最大となっており、オミクロン株による感染拡大のニュースが連日のように報道されている。

2020年の出生数は84万人(※1)と過去最少となり、妊娠・出産に大きな影響を与えていることは確かである。

このような状況下で、ママたちの心境にどのような変化があったのか、この1年でさらにどう変化したのか、コロナ禍での妊娠・出産の実態について報告する。

※1:厚生労働省『令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況』

2.調査概要

調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所

調査方法:インターネット・リサーチ

調査対象:末子妊娠中およびお子さまをもつ女性

調査期間:2021年11月18日(木)~2021年12月2日(木)

有効回答者数:1,045名(うち、コロナ禍で出産したママ596名)

(前回調査)

調査対象:末子妊娠中および生後8ヶ月まで(※)のお子さまをもつ女性

※国内感染者数が200名を超えた2020年2月以降のコロナ禍で出産した被験者

調査期間:2020年10月23日(金)~2020年11月6日(金)

有効回答者数:3,697名(うち、コロナ禍で出産したママ1,170名)

3.調査結果要約

・妊活再開のタイミングとして、「仕事のタイミングを考慮してから(22.35%)」が大幅に増加している。長引くコロナ禍で「感染状況」だけではなく、自身の「仕事のタイミング」なども見据えながら、妊活の再開を考えるようになっている。

・「面会に制限があった」のは、97.35%(0歳児ママ)にものぼることから、直近1年では、ほとんどの病産院で面会制限がかけられていたことが明らかになった。

・「マスクをしての出産」を経験した妊婦が0歳では54.09%、1歳以上では36.70%となっており、この1年で17.39ptも増加している。

4.結果・考察

①コロナ禍での妊娠に対する考え方

まず始めに、新型コロナウイルス感染症が流行する前(2020年2月以前)、お子さまの妊娠を希望されていたかどうかを全被験者(n=1,045)に聞いた。

その結果、「強く望んでいた」「望んでいた」と回答した割合は73.87%となった(図1)。

 

図1 コロナ禍以前、お子さまの妊娠を希望していたか

コロナ禍以前、お子さまの妊娠を希望していたか

次に、前問で「答えたくない」と回答した被験者を除く1,041名に、新型コロナウイルス感染症が流行した後(2020年3月以後)の妊活や妊娠に対する行動変化について聞いた。

その結果、「とても変化した」「少し変化した」と回答した割合は40.25%、「まったく変わらない」「あまり変わらない」と回答した割合は41.79%とほぼ同じ割合になっており、コロナが妊活に対する行動変化に与えた影響は、4割程度であることが明らかになった(図2)。

 

図2 妊活(妊娠・不妊治療等)に対する行動変化

妊活(妊娠・不妊治療等)に対する行動変化

さらに、「とても変化した」「少し変化した」と回答した被験者419名のうち、妊娠後にコロナが流行したと回答した被験者を除く361名に、妊活(妊娠・不妊治療等)にどのような行動の変化があったかを比較した。

その結果、「今までと変わらず妊活を継続した(46.26%)」が最も多く、2020年の43.56%と比較して2.7pt増加し、「より前向きに妊活を継続した(12.47%)」が2020年の10.76%と比較して1.71pt増加したことから、妊活そのものは継続していた層が6割程度いたことがわかる(図3)。

 

図3 妊活(妊娠・不妊治療等)に対してどのような行動変化があったか

妊活(妊娠・不妊治療等)に対してどのような行動変化があったか

次に、「一時的に中断・延期」および「妊活を取りやめた」と回答した被験者85名に、妊活を再開するタイミングを聞いた(複数回答可)。

その結果、「感染者数が落ち着いてきたら(23.53%、前年比8.25pt減)」、「安全に出産ができる体制が整っているとわかったら(18.82%、前年比8.30pt減)とそれぞれ減少している(図4)。

一方、「仕事のタイミングを考慮してから」が22.35%と前年に比べ13.03pt増となっている。長引くコロナ禍で「感染状況」だけではなく、自身の「仕事のタイミング」なども見据えながら、妊活の再開を考えるようになっている。

 

図4 妊活を再開するタイミング

妊活を再開するタイミング

なお、「その他」の自由回答では、以下のようなものが挙げられた。

【自由回答】

・コロナで延期になった結婚式が終わったらと考えていたが、いつ出来るかわからなくなったので妊活を前倒しした。

・いつまで経ってもコロナは終息しないし、自分の年齢的なことも考えて

・一時的に中断したが、完全収束が難しそうだと感じ、自分の年齢や、上の子との年齢差を考えると長く中止するわけにもいかなかったので、ワクチンが完成し、これからワクチン接種が広まるだろうと思えたところで再開。

②コロナ禍での出産の実態

次に、コロナ禍での出産の実態について調査した。前回調査(2020年10月)では、「国内感染者数が200名を超えた2020年2月以降をコロナ流行後」として、お子さまの月齢で2群にグルーピングしたが、今回調査では、感染拡大から2年近くが経過したことから、お子さまの出産時期を聴取し(図5)、「コロナ禍で出産した」と回答した被験者グループ(n=596)を調査対象とした。

 

図5 お子さまの出産時期

お子さまの出産時期

このコロナ禍で出産したママたち(n=596)に対して、出産時に希望したこと、そのうち実際にできたことを聞いた。

希望したことで最も多かったのが「面会(パートナー)」であったが、実現できたのはそのうちの32.47%(2020年61.70%、前年比29.23pt減)に留まった(図6)。次に多かったのが「立ち合い出産(パートナー)」であったが、実現できたのは40.85%(2020年52.79%、前年比11.94pt減)となった。退院するまで赤ちゃんと対面できないなど、前年以上に病産院での感染対策が強化され、ご家族にも一層我慢が強いられた実状が明らかになった。

 

図6 出産にあたって望んだこと、できたこと(複数回答可)

出産にあたって望んだこと、できたこと_2020

出産にあたって望んだこと、できたこと_2021

さらに、望んだ妊婦が多いにも関わらず実現しなかった割合が顕著であった「面会(パートナー)」「立ち合い出産(パートナー)」について、月齢ごとに感染者数推移と比較した。なお、緊急事態宣言発令時を赤で示した(図7)。

その結果、おおよそ感染者数の増減に伴い、病産院の制限がより強化されていることがわかる。緊急事態宣言下であるかどうかが、病産院が定める面会・立ち合いのガイドラインに影響していると考えられる。

 

図7 望んだにも関わらず実現しなかったこと(月齢別)、及び国内感染者数推移

望んだにも関わらず実現しなかったこと

③コロナ禍での病産院の状況

続いて、実際にコロナ禍で出産されたママたちに、コロナ禍での病産院の状況について聞き、お子さまの月齢「0歳(n=453)」「1歳以上(n=79)」で比較した。

その結果、「面会に制限があった」のは、0歳が97.35%(「とてもあてはまる」「あてはまる」と回答した割合)にものぼることから、直近1年では、ほとんどの病産院で面会制限がかけられていたことが明らかになった(図8)。1歳以上では92.41%と、この1年で4.94pt増であることから、面会制限がより強化されていることがわかる。また、「立ち合い出産に制限があった」のも0歳が91.39%、1歳以上が82.28%(9.11pt増)となっており、こちらも多くの病産院でガイドラインが設けられていたことがわかる。

 

図8 コロナ禍での病産院の状況

コロナ禍での病産院の状況_0歳

コロナ禍での病産院の状況_1歳

なかでも、「マスクをしての出産を推奨された」妊婦が0歳では54.09%、1歳以上では36.70%となっており、この1年で17.39ptも増加している。

なお、分娩時に妊婦がマスクをする必要があるかどうかについて、厚生労働省からは『医療機関において適切に感染予防対策がなされている場合や妊婦の状況によっては、分娩時にマスクをすることは必須ではありません。ただし、医療機関の施設設備の状況・職員のワクチン接種状況や地域の流行状況などによっては、妊婦ご本人ならびに周囲の妊婦の皆様を守るためマスク着用が必要な場合がありますので、主治医とご相談ください。』(※2)との見解がなされているため、病産院の判断でマスク着用がお願いされているケースが増加しているようだ。

※2:厚生労働省『新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)』

④コロナ禍における困りごと・不安

最後に、コロナ禍での妊娠・出産における困りごと・不安を自由回答で聞いたところ、正しい情報が得られないことに困ったり、家族のサポートが得られないことに対して不安を感じたりしている声が多く挙げられた。

【自由回答】

・妊婦は重症化しやすいといったニュースも流れていたため、出掛けるのも怖かったけど、仕事や買い物には行かないといけなかったので不安は常にあった。ワクチンについても情報が不十分だったのでどういった選択をするのがベストなのかわからず戸惑った

・両親学級が無いため、自分の知識不足を実感したりパートナーに対して親としての自覚をもたせたりするのが大変だった。立ち会い出産や入院中の面会が出来ないことで、自分自身のメンタル維持に苦労した

・立ち会い面会全てNGだった為、陣痛〜退院まで1人でした。一人で陣痛に耐えるのがキツかったので、もっと側で支えてくれるスタッフさんがいて欲しかった。

5.おわりに

今回の調査では、コロナ禍であっても「妊娠・出産」を諦めないママたちの姿が見えてきた。長引くコロナ禍で先が見えない中、安心して出産できるように病産院も感染対策を一層強化している現実も明らかになった。しかし、一人で出産に臨むということも、ママたちには新たな不安要素になっている。

今後一層、少しでもママたちの不安を取り除くことができるように、ワクチン接種やマスクの着用など、妊婦が必要な情報に簡単にアクセスできるようにすることや、家族に代わる精神的な面でのサポートが求められてくるだろう。

(子育てマーケティング研究所 惣宇利)

 

【出典の記載についてのお願い】

調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。

出典:「妊娠・出産の実態調査 2021年11月(株式会社コズレ)」

http://www.cozre.co.jp/blog/7417

(子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)

(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)

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