1. はじめに
近年、共働き世帯の増加やライフスタイルの多様化が進むなかで、家庭内における家事分担のあり方が社会的な注目を集めている。特に子育て中の家庭では、限られた時間と体力の中で、「いかに効率的に、そしてストレスなく家事を回すか」が大きな課題となっている一方で、依然として家事の多くが女性(妻)に偏っているという現実がある。このような背景のもと、2025年4月〜5月「子育て世帯(妊娠中~1歳までの子どもを持つ家庭)」を対象に行った調査により「夫婦の家事分担の実態」や「やりたくない家事」、そのやりたくない家事の外注サービス・代替製品への「支払意思」が明らかとなった。
2. 調査
調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:妊娠中~生後1歳の子どものいる方
調査期間:2025年4月25日(金)〜 2025年5月8日(木)
有効回答者数:372名
3. 結果・考察
妻に偏る家事負担。担当項目は58項目中55項目
日常の家事58項目中、妻が主に担当する家事が55項目にのぼることが判明。夫が担当する項目はわずか3つにとどまった。特に妊娠中や生後すぐなど子育て初期の時期は、妻の身体の変化や負担も大きく、身体的負担に加え慣れない環境による精神的負担の増加も懸念される。
「夫にお願いしたい家事」TOP3は?
妻が夫にメインで担当してほしいと望んでいる家事は以下の通り(複数回答)
・ゴミを出す(40.61%)
・お風呂を掃除する(38.40%)
・エアコンのフィルター掃除をする(30.39%)
これらは夫の実際の担当項目ともほぼ合致しており、家庭内での分担の最適化ニーズが伺える。
“やりたくない家事”のリアルとその市場性
やりたくない家事で最も多かった「エアコンのフィルター掃除(31.99%)」は、高所にあるため作業が物理的に大変で、脚立や椅子が必要になるなど準備の手間がかかる上、『掃除しなければならないのはわかっているけれど、目に見える汚れではないためつい後回しに』したくなる、優先順位が下がりやすい家事と考えられる。
続いて「コンロ上の換気扇掃除(28.49%)」もエアコン同様高所である上、長期間蓄積した油汚れを落とす必要があり、強力な洗剤や手袋など特別な道具が求められる。掃除そのものが体力的に重労働であるうえ、作業後の後始末も面倒であり、『始めるまでが億劫』という意識を持ちやすい。また、細かいパーツの分解・再組立てが必要な場合もあり、慣れない人にとってはハードルが高い。
次に「トイレ掃除(26.34%)」は『誰かが使うたびにすぐ汚れる』という徒労感があり、特に家族に男性や小さな子どもがいる場合、汚れや臭いが強くなりやすく、掃除の頻度や丁寧さが求められる点がストレスになると考えられる。
「洗面所・浴室・トイレの換気扇掃除(26.08%)」もエアコン掃除同様、見えにくい場所にあり、『掃除の効果が実感しづらい』点でモチベーションが上がりにくい家事の代表格といえるのではないだろうか。
やりたくない家事の中でも、最もやりたくない家事1位が「トイレ掃除(9.68%)」。『汚い』という印象の強さからも心理的な抵抗感大きいのと推測される。次に複数回答では12位にいたものの単一回答では2位に上昇した「ご飯を作る(8.33%)」。多くの人にとって料理は『作るだけ』ではなく、『考える・準備する・片付ける』といった一連の流れがセットになっており、それが”やりたくない”と感じる大きな要因ではないだろうか。3位が高所での作業や、見えにくいホコリの除去など面倒なポイントが多い「エアコンのフィルター掃除(7.26%)」であった。
サービス・製品への支払意思あり!その決定権は「夫婦で」
家事項目の中の「乾いた洗濯物の取り込む、たたむ」「トイレを掃除する」「食品の買い物をする」など51項目は家事代行サービスに置き換えられ、「部屋の温度・湿度を管理、調整する」「お風呂にお湯を入れる」「洋服などのひどい汚れの予洗い」など14項目はAI搭載家電や特化型商品などで実現できるのではないか、という仮説のもと調査を行った。なお、「食器や調理器具を洗う」「家じゅうの床の掃除機をかける」など、サービスにも家電などにも置き換えられる項目に関しては、どちらにも回答してもらっている。
<家事代行サービスへの支払意思(月額)>
「最もやりたくない家事」を代行してくれるサービスに対して、月額でどの程度の費用を支払う意思があるかという質問に対し、「利用しない」と答えた人は約36%にとどまる一方で、「5,000円未満であれば利用したい」と考えている人が最も多く(約52%)占めている。「5,000円以上でも利用したい」と回答した人も約12%存在しており、全体の64%が何らかの形でサービス利用に前向きであることがわかった。これは、子育て世帯の中で、金額次第では家事のアウトソーシングを受け入れる層が相当数存在することを示している。
<代替製品(例:AI搭載家電など)への購入意思額>
サービスと同様に「最もやりたくない家事をやってくれる機能が搭載された製品」に対する購入意思額を尋ねたところ、「購入しない」と答えた人は約27%であり、家事代行サービスと比べて若干低い結果となった。最も多かったのは「5,000円未満であれば購入したい」という層で約43%、「5,000円〜19,999円未満」で約27%となっている。これらの結果から、代替製品に対しては比較的柔軟な支払い姿勢が見られ、一定の価格帯であれば導入へのハードルはそれほど高くないと考えられる。
<決定権は「夫婦で」>
64%以上の家庭では、「妻と夫で意見を出して決める」と回答。つまり、購買意思決定者は「妻=主担当」だけではなく、夫の納得感もマーケティング上無視できない要素と考えられる。
参考にしている情報源は「SNS上の口コミ」と「ネット記事」
家事代行サービスや代替製品の導入を検討する際に、参考にされている情報源として最も多かったのはSNS上の口コミ(48.39%)であり、次いでネット記事(約34.68%)、企業の公式(約34.14%)という結果となった。このことから、子育て世帯に対しては、企業側からの一方的な広告よりも、リアルなユーザーの体験談やレビューが投稿されるSNSの影響力が非常に大きいことが分かる。また、ネット記事や公式情報も一定の信頼を得ていることから、情報発信においてはSNSと子育てメディアの双方を活用した戦略が非常に重要であると言えるのではないか。
4. おわりに
家庭内の“やりたくない家事”は、今後ますますテクノロジーとサービスによって代替されていく領域と考えられる。「トイレ掃除」「エアコンのフィルター掃除」など“嫌われ家事特化”訴求の製品開発・広告や、「5,000円未満」価格帯を意識したサブスク・トライアル設計などが有効ではないだろうか。
今後も、働き方改革と共働き家庭の増加により現実的に迫られる「家事の見直し」ニーズに対し、SNS上でのユーザー生成コンテンツ(UGC)活用やマイクロインフルエンサー施策はもちろんのこと、共働き夫婦での意思決定を前提としたLP設計・広告コピーも重要だと考えられる。
株式会社コズレでは、こうした妊娠中のママや子育て中ママのリアルな声をお伝えすると共に、市場動向を明らかにしていきます。
本調査の詳細レポート、及び子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。
(コズレ子育てマーケティング研究所 水島・早川)
【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。
出典:「子育て世代の“やりたくない家事”と支払意思調査 外注サービス・代替製品への利用意向は?(株式会社コズレ)」
https://cozre.co.jp/15074/
(コズレ子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)
※コズレでは子育て世代の調査・子育て世代向けマーケティングのコンサルティングを承っております。詳細は下記よりお問合せください。