調査レポート

子育て世帯における「VOD」市場調査2025 ~妊娠期以降の主要VOD契約動向と動画視聴行動の分析~

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1. はじめに

ビデオ・オン・デマンド(VOD)市場が拡大した背景には、インフラの整備やモバイルデバイスの普及に加え、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、自宅で過ごす時間が増加したことが大きく影響した。従来のテレビ放送のように決まった時間に見るのではなく、自分の好きな時に好きなコンテンツを選んで視聴したいというニーズの高まりに合わせて、国内外の様々なジャンルの映画、ドラマ、アニメなどを豊富に揃えたサービスが、ユーザーの多様な嗜好に応えた分野である。多くのVOD事業者がユーザーの「可処分時間」を奪い合う中、子育て世帯という特殊なセグメントでは、その時間そのものが育児によって断片化・圧縮されている。子育て世帯は、ライフステージの変化に伴いエンターテインメントへのニーズが劇的に変わる重要なターゲットセグメントにあたる。
本レポートでは、2025年10~11月に実施した『子育て世帯における「VOD」市場調査2025』の結果を基に、VODの知名度や利用サービス、利用頻度や利用理由、妊娠以降のVOD新規契約の実態等について分析を行った。

本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部である。「4.調査項目」記載のうち、掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。

2. 調査

調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネットリサーチ
調査対象:生後0歳以上の子を持つコズレ会員
調査期間:2025年10月22日(水)〜2025年11月19日(水)
有効回答数:564名

3. 結果・考察

調査データから明らかになった子育て世帯のVOD利用における「認知・検討」から「契約・利用」「解約」までの各フェーズを追い、それぞれの段階で有効と考えられる施策を考察していく。

知名度は「Netflix」、利用率は「Amazon Prime Video」がトップ

サービスの知名度に関しては、「Netflix」が約9割で最も高く、次いで「Amazon Prime Video」「Disney+」が8割超、「Hulu」「U-NEXT」「TVer」が7割超で続く結果となった。一方、現在利用しているサービスでは「Amazon Prime Video」が約59%でトップであった。
この結果は、高い知名度が必ずしも利用率に直結しないことを示唆している。ブランド認知はサービスの検討候補に入るための前提条件であるが、最終的な契約には別の要因が影響すると考えられる。特に「Amazon Prime Video」の利用率の高さは、動画コンテンツだけでなく、ECサイトでの迅速な配送や、プライム会員特典全体の「家族としての実用性」が、子育て世帯の合理的な価値観に強く訴求している結果であると分析できる。具体的には、Amazonファミリーに登録することで得られるおむつなどベビー用品のクーポンや登録者限定のセールに参加できるといった実利的な特典が存在する。

契約行動のトリガーは「妊娠期」と「即決」傾向

妊娠以降の新規利用検討者は回答者の約4割、そのうちの約6割が実際に契約に至っている。これは、全体(調査対象)の約22%が妊娠以降に新規契約していることを表しており、子育て世帯におけるVODサービスの導入意欲の高さが裏付けられている。
新規利用開始時期としては「妊娠初期」が約2割で最も多く、中期・後期を合わせると妊娠期間全体で利用を開始した人は4割近くにのぼる。この背景には、つわりなどで外出が難しくなり自宅で過ごす時間が増えることや、出産・育児で多忙になる生活に備えて事前に情報収集や娯楽を確保しておきたい、といった妊娠中の生活者のインサイトがうかがえる。
検討期間については「即決」が約半数を占め、1週間以内で見ると約75%に達する。この「即決」傾向は、妊娠・出産期の親が膨大な情報に晒され、時間的・精神的な負荷が高い状態にあることの裏返しとも考えられる。意思決定のスピードが非常に速いことも、複雑な情報を比較検討する余裕が少ないという、この時期のニーズの切実さを物語っていると言える。

契約の決め手は「家族全員のコンテンツバランス」と「口コミ」

サービスを選んだ理由としては、子ども向けコンテンツの充実だけでなく、大人向けコンテンツの充実も同様に挙げられており、家族全員が楽しめるコンテンツのバランスが重視されていることがわかる。
契約時に参考にした情報源としては「口コミ」が約24%で最も多く、友人や知人からのリアルな推奨が意思決定に大きな影響を与えていることがわかる。このことから、「信頼性の高いソーシャルプルーフ」が最適なプロモーション戦略において重要となることが示唆される。

VODは「子育てインフラ」に

契約後の利用実態を見ると、VODが子育て世帯の日常に深く浸透している様子がうかがえる。
利用目的は「自分のリラックス・娯楽」が約68%でトップ、次いで「夫婦・家族で一緒に楽しむ」が約52%であった。また、利用頻度は「毎日」が43%で最多となっている。
これらのデータは、VODが単なる娯楽ツールではなく、育児に忙しい親が「自分の時間」を確保するための息抜きの手段であり、同時に家族のコミュニケーションを円滑にする「家族の時間」のツール、いわば子育て世帯の感情的・娯楽的ニーズを管理する「子育てインフラ」の必須要素となっていることを示している。

解約と継続の分岐点

妊娠以降契約したサービスの解約理由としては、「見たい作品がなくなった」「忙しくなり視聴時間が取れなくなった」がそれぞれ約37%で上位を占めた。一方で、今後の利用意向については、半数以上が「しばらく続ける予定」と回答しており、解約を検討している層は10%未満と低い。このことから、一度契約したユーザーのロイヤルティは比較的高い傾向にあるといえる。
注目すべきは、他社サービスの利用意向であり、「Disney+」「Netflix」には3割近い利用意向が見られる。これは既存ユーザーの離反リスクであると同時に、競合からの乗り換えを促す好機でもある。

4. 調査項目

  • 主要VODの知名度
  • 利用しているVOD
  • 利用目的
  • 利用頻度
  • 1回あたり平均利用時間
  • 1ヶ月あたりの平均利用額
  • 妊娠以降に契約検討したVOD
  • 妊娠以降に契約したVOD
  • 妊娠以降に契約したVODを選んだ理由
  • 妊娠以降利用開始までの検討期間
  • 妊娠以降利用開始した時期
  • 妊娠以降利用前に参考にした情報源
  • 妊娠以降契約したVODの利用継続状況
  • 妊娠以降契約したVODをやめた理由
  • VODを利用していない理由
  • 利用しているVODの数
  • サービスの使い分け状況
  • 今後の継続意向
  • 今後利用してみたいVOD

※本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部。掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。

5. おわりに

本調査から見えてきた、子育て世帯のVOD市場を攻略するための要点は、以下の3つに集約される。
① 最大の契約契機である「妊娠期」のターゲットに、最適なタイミングでアプローチすることが不可欠である。
② 意思決定の重要な情報源となる「口コミ」を戦略的に創出し、活用することが成功の鍵である。
③ 「自分時間」と「家族時間」の両方を満たすサービス価値を伝え、継続的な関係を構築することが重要である。
これらの課題を解決し、子育て世帯から選ばれるVODサービスとなるためには、ターゲット層への深い理解に基づいた戦略的なマーケティング活動が不可欠である。

上記のポイントに対して、コズレでは、以下のようなソリューションでご支援可能である。

まず、妊娠中のターゲットに的確にアプローチするには、妊娠日数や子どもの日齢で細かくセグメントできるコズレの「プレミアムレコメンドメール」が極めて有効である。これにより、関心が最も高まる検討ピーク時に直接的な介入を可能にする。

また、継続利用を促すには、日常の利用シーンに寄り添った情報発信が重要となる。例えば、子どもの月齢に合わせたコンテンツのレコメンドが鍵となる。0歳児の親には「親の息抜きになる30分ドラマ」、3歳児の親には「親子で楽しめる最新アニメ映画」といった具体的な情報を「ターゲティングメール」で配信し、サービスの「自分時間」と「家族時間」双方の価値を定期的に想起させることがエンゲージメントの維持に直結すると考えられる。

さらに、信頼性の高い口コミを戦略的に創出するためには、「タイアップ記事」の「座談会」オプションを活用し、実際の利用者の声をコンテンツに反映させる手法が考えられる。
それに加えて、ターゲットが求める価値を、短時間でかつ直感的に伝えるコミュニケーションが不可欠であるといえる。そのための解決策として、コズレの「タイアップ記事」は有効である。特に、複雑な料金プランやサービス内容もストーリー形式で分かりやすく伝えられる「マンガ型」オプションは、このセグメント特有の心理状態と情報収集の制約に対応する上で、極めて合理的な選択肢となる。

競合コンテンツへの関心が高いセグメントに対しては、「コズレDM」でトライアルを促す「モニターキャンペーン」のオファーも有効である。これにより、防御的なリテンション施策を、攻撃的な獲得施策へと転換させることが可能である。子どもの月齢や住所でターゲットを精密に絞り込み、魅力的な乗り換えオファーを直接届けることで、離反を防ぎつつ、競合ユーザーの獲得を狙うことができるのである。

株式会社コズレでは、こうした妊娠中のママや子育て中ママのリアルな声をお伝えすると共に、市場動向を明らかにしていきます。
本調査の詳細レポート、及び子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。

(コズレ子育てマーケティング研究所 早川、水島)

 

出典:『子育て世帯における「VOD市場調査」2025~妊娠期以降の主要VOD契約動向と動画視聴行動の分析~(株式会社コズレ)』https://cozre.co.jp/blog/17039
(コズレ子育てマーケティング研究所
http://www.cozre.co.jp/blog/
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/

 

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この記事の著者

株式会社コズレ 取締役 早川修平の写真

著者: 早川 修平(株式会社コズレ 取締役/MBA)

NTT東日本にて法人営業、マーケティング、経営企画を経験後、慶應義塾大学大学院(在学中、米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院へ留学)にてMBAを取得。戦略コンサルティングファーム「ローランド・ベルガー」にて自動車・金融業界など幅広いクライアント向けにマーケティング戦略立案、ビジネスプロセス改善の支援に従事。

その後、子育て世代向けWebメディア「コズレ」を創業期から運営責任者として牽引し、会員数100万人超のプラットフォームへと成長させる。累計500件以上の子育て世帯を対象とした市場調査を主導し、育児用品メーカーや子育て関連サービス企業向けに、定量・定性データに基づくマーケティング戦略やプロモーション施策を多数提案・実行している。また、子育て世代の購買行動やニーズを踏まえたマーケティング手法に関するセミナーや講演会の講師も務める。

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