1. はじめに
2026年6月3日に厚生労働省が発表した令和7年の人口動態統計(概数)によると、出生数・合計特殊出生率はいずれも10年連続で低下した。少子化に歯止めがかからない状況が続いている。少子化を打開するためには、「第一子を持つ人をいかに増やすか」と、「すでに子どもがいる家庭にもう一人を迎えてもらうか」という、2つの方向性がある。本稿では後者に着目し、「もう一人迎えたい」という親の意向と、それを阻む日々の育児負担との綱引きを分析した。具体的には、「子どもの数(1人・2人・3人)」と、「子ども1人世帯における第2子出産への前向き・後ろ向き」という2つの切り口から、どの段階で、誰が、何を負担に感じ、意向が揺らぐのかを明らかにした。なお、子ども3人世帯および後ろ向き層については回答者数が限られるため、傾向を示す参考値として掲載している。
本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部である。「4.調査項目」記載のうち、掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。
2. 調査
調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:パートナーと同居し0歳以上の子を持つ親(全体469名。子供1人312名/2人119名/3人38名。うち子供1人で追加出産に前向き245名/後ろ向き44名)
調査期間:2026.05.20-2026.06.04
有効回答数:469名
3. 結果・考察
📊 本章で言及する全グラフ(図1〜図6)は、記事末尾にまとめて掲載しています。
各小見出しの「→ 図〇」の番号と対応していますので、あわせてご参照ください。
【分析1】子どもの数による追加出産意向と負担の変化
1人世帯は次子への意向が高く、出産の壁は「2人→3人」にある(→ 図1)
追加出産に前向き(「強く」+「どちらかといえば」)と回答した割合は、子供1人世帯で約79%に達し、次の子を望む割合が高い(→ 図1)。一方、2人世帯では約44%、3人世帯では約40%と、いずれも過半数が「これ以上は望まない」状態に転じている。つまり、多くの家庭は「2人」を志向して移行する一方、過半数が次を望まなくなる実質的な壁は2人→3人の段階にあると考えられる。
1人世帯は次子への受容性が高い層であり、出生数の押し上げに向けた構造的な壁は、2人目以降の家庭にあると考えられる。
意向の動機は「きょうだい付与」から「不安」へ反転(→ 図2)
そう回答した理由を見ると、子供1人世帯では「きょうだいを作ってあげたいから」が約73%で突出していた(→ 図2)。しかし2人・3人世帯ではこの動機は約16%へと急減し、代わりに「経済的な不安」(約14%→約40%→約47%)、「体力的な不安」(約19%→約32%→約42%)、「精神的なゆとりがない」(約12%→約21%→約34%)が子ども数とともに高まる。子を思う前向きな動機が満たされた後は、不安が意向を左右する主因へと入れ替わると考えられる。
多子世帯では「与えたい気持ち」ではなく「抱えきれるかという不安」への対応が訴求の起点になる。
負担感は子ども数とともに増し、3人世帯で顕著(→ 図3)
主要な負担を強く感じる割合は、子ども数が増えるほど高まる(→ 図3)。睡眠不足ストレスを「日常的に強く感じる」は約24%・約27%・約40%、固定育児を「非常に辛い」は約12%・約13%・約29%と3人世帯で約2.5倍に達した。家計にゆとりがない層も3人世帯で約79%、教育費の将来不安「非常に強い」も約37%と最も高い。子ども数の増加が、心身・経済の両面で負担を積み増している実態が示唆される。
多子世帯は負担が複合的に重く、単一の支援では解消しにくい層であると考えられる。
負担軽減による意向の押し上げ効果は、多子ほど弱まる(→ 図4)
「負担が軽減されれば出産意向が強くなる」割合は、子供1人世帯では可処分所得で約76%、睡眠・自分時間で約77%、固定育児で約75%と高い(→ 図4)。一方、2人世帯では約55〜59%、3人世帯では約40〜53%へと低下し、いずれの項目でも「変わらない」が増える。子どもが増えるほど、負担を取り除いても意向が動きにくくなると読み取れる。
負担軽減を起点とした意向喚起は、動かしやすい子供1人世帯を主たる標的に設計することが効果的であると考えられる。但し、既に次子への意向が高く伸びしろは限定的といえる
【分析2】子ども1人世帯における前向き・後ろ向きの分岐要因
後ろ向きを分けるのは所得水準より「心身の負担と将来不安」(→ 図5)
子供1人世帯で前向き・後ろ向きを比較すると、最も差が開いたのは教育費の将来不安「非常に強い」で、後ろ向きが約48%(前向き約22%)であった(→ 図5)。次いで固定育児「非常に辛い」が約30%対約9%、睡眠不足ストレス「日常的に強く」が約41%対約22%、通勤の「非常に圧迫」が約34%対約18%と続く。一方で現在の家計の「まったくゆとりがない」差は約8ポイントにとどまる。後ろ向き層を分けるのは、現在の所得水準そのものより、心身の主観的負担と将来見通しへの不安であると考えられる。
後ろ向き層には、所得の多寡を問う前に、負担の実感を軽くする支援と将来不安を和らげる見通しの提示が有効と考えられる。
後ろ向き層の最大の壁は「睡眠不足・体力的負担」、年齢要因は対策困難(→ 図6)
最大のボトルネック(単一回答)を見ると、後ろ向き層では「睡眠不足・体力的負担」が約32%で最多であった(→ 図6)。次いで「可処分所得」が約25%、「その他」が約18%と続く。なお自由回答の内容を確認すると、この「その他」の大半は「ママの年齢」であり、これは支援によって対策することが難しい要因である。したがって、後ろ向き層に対して現実的に介入できるのは、最大の要因である睡眠不足・体力的負担の軽減であると考えられる。
後ろ向き層への現実的なアプローチは、対策の難しい年齢要因ではなく、睡眠不足・体力的負担の軽減に注力することであると考えられる。
4. 調査項目
- 今後の追加出産意向
- 出産意向についてそう回答した理由(複数回答)
- 平日の平均的な睡眠時間
- 睡眠不足による疲れ・ストレスの実感
- 朝の育児・家事の負担割合
- 夕方から夜の育児・家事の負担割合
- 朝夕の固定的な育児負担の辛さ・負担感
- 自身の通勤時間(片道)
- パートナーの通勤時間(片道)
- 通勤による育児・家事時間の圧迫感
- 学校関連の雑務の負担割合
- 学校関連の雑務で最も負担を感じる点
- 世帯の可処分所得のゆとり
- 教育費・子育て費用の将来的な見通しへの不安
- 可処分所得が増えた場合の出産意向の変化
- 睡眠・自分の時間が確保できた場合の出産意向の変化
- 朝夕の固定育児負担が軽減された場合の出産意向の変化
- 通勤時間が短縮された場合の出産意向の変化
- 学校関連の雑務が削減された場合の出産意向の変化
- 追加出産における最大のボトルネック(単一回答)
- 育児負担や次の子どもを持つことについて普段感じていること(自由回答)
※本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部。掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。
5. おわりに
本分析からは、追加出産意向が「子どもの数」という段階によって、また「同じ1人世帯の中でも負担の感じ方」によって、大きく異なることが浮かび上がった。
子どもの数の観点では、子供1人世帯は次子への意向が約79%と高い一方、2人世帯では約44%、3人世帯では約40%と過半数が次を望まなくなる。多くの家庭が「2人」を志向して移行する一方、出生数の押し上げに向けた実質的な壁は2人→3人の段階にある(図1)。動機も「きょうだいを作ってあげたい」から経済・体力・精神の不安へと反転し(図2)、負担感は子ども数とともに増して3人世帯で顕著に重くなる(図3)。負担軽減による意向の押し上げ効果は多子ほど弱まり、最も受容性が高いのは子供1人世帯である(図4)。
同じ子供1人世帯の中でも、後ろ向きを分けるのは現在の所得水準ではなく、教育費の将来不安・固定育児の辛さ・睡眠不足といった心身の主観的負担と将来見通しであった(図5)。後ろ向き層の最大のボトルネックは睡眠不足・体力的負担であり、自由回答で多く挙がった「ママの年齢」が対策困難であることを踏まえると、現実的な打ち手は睡眠・体力負担の軽減に絞られる(図6)。
コズレ子育てマーケティング研究所では、こうした妊娠中のママや子育て中ママのリアルな声をお伝えすると共に、市場動向を明らかにしていきます。
本調査の詳細レポート、及び子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。
(コズレ子育てマーケティング研究所 早川)
【グラフ】図1〜図6(全グラフまとめ)

【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。
出典:「追加出産意向と育児負担のセグメント分析2026(株式会社コズレ)」https://cozre.co.jp/blog/19592
(コズレ子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)


