調査レポート

子どもの教育資金が「物価高の穴埋め」に~約56.4%が貯蓄予定資金を生活費に流用~

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1. はじめに

食料品やエネルギー価格の上昇が続き、子育て世帯の家計を取り巻く環境は厳しさを増している。一方で、児童手当は所得制限の撤廃や高校生年代までの支給延長など、対象を拡大する形で拡充が進められてきた。しかし、拡充された給付が実際に何に使われ、子育てコストの負担軽減として実感されているのか、その実態は十分に明らかになっていない。そこで本調査では、長子1歳以上の子を持つ親を対象に、家計の現状、児童手当の受給・使途、そして物価高が貯蓄や給付の実感に与える影響を明らかにした。

本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部である。「4.調査項目」記載のうち、掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。

2. 調査

調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:長子1歳以上の子を持つコズレ会員
調査期間:2026年5月29日(金)〜2026年6月10日(水)
有効回答数:243名

3. 結果・考察

📊 本章で言及する全グラフ(図1〜図12)は、記事末尾にまとめて掲載しています。

各小見出しの「→ 図〇」の番号と対応していますので、あわせてご参照ください。

世帯収入「減った」が約39.5%、税・社会保険料は約7割が負担増を実感(→ 図1・図2)

ここ1〜2年の世帯収入(手取り)の変化は、「減った」が約39.5%、「変わらない」が約39.9%であり、「増えた」は約20.6%に留まった(→ 図1)。また、税金や社会保険料の負担感については、「非常に重くなった」約28.8%と「やや重くなった」約43.2%を合わせ、約72.0%が負担増を実感している(→ 図2)。賃上げの動きが報じられる一方で、子育て世帯の手取りの実感には十分に波及していない可能性がある。

子育て世帯の約8割は手取りが増えておらず、可処分所得の伸び悩みがあらゆる消費判断の前提になっていると考えられる。

約87.2%が生活費の増加を実感、圧迫項目の最多は「食料品代」約78.3%(→ 図3・図4)

日々の生活費の負担は、「かなり増加した」約44.9%と「やや増加した」約42.4%を合わせ、約87.2%が増加を実感している(→ 図3)。生活費が増加したと回答した方に家計を圧迫している項目を尋ねると、「食料品代」が約78.3%で最多となり、「日用品・消耗品代」約71.2%、「電気代・ガス代・水道料金などのインフラ費用」約67.5%が続いた(→ 図4)。「子どもの衣服・育児用品代」も約59.9%にのぼる。節約による調整が難しい必需品分野で負担増が集中している構図がうかがえる。

生活必需品の値上げが家計圧迫の中心であり、子育て関連支出もその例外ではないことが示唆される。

児童手当は約93.4%が受給、対象拡大で「増えた」は約9.3%に留まる(→ 図5・図6)

児童手当は約93.4%が「受給している」と回答した(→ 図5)。一方、所得制限の撤廃や高校生年代までの延長といった支給対象拡大による受給額の変化については、「変わらない(もともと対象であり金額も変わらない)」が約77.5%を占め、「増えた」は約9.3%に留まった(→ 図6)。本調査の回答者は未就学児の親が中心であるため、高校生年代までの延長等の恩恵を受ける層が少なかったことが背景にあると考えられる。

制度拡充のニュースと、乳幼児を育てる世帯の受給実感との間にはギャップが存在する可能性がある。

使途の最多は「子どもの将来のための貯蓄・投資」約52.9%(→ 図7)

児童手当の主な使途は、「子どもの将来のための貯蓄・投資(学資金・ジュニアNISAなど)」が約52.9%で最多となった(→ 図7)。「子どもの衣服・育児用品・おもちゃなどの購入費」が約30.4%、「毎月の生活費の補填(電気代・ガス代・食料品代など)」が約20.7%で続く。子どものための将来資金として給付を確保しようとする意識は依然として強い一方、約2割が生活費の補填に充てている実態も見逃せない。

児童手当は「子どもの将来への投資」が主目的でありつつ、一部世帯では足元の家計維持の原資へと役割が変化しつつあると考えられる。

約37.4%が「生活費補填への割合が増えた」と実感(→ 図8)

児童手当の使途のうち「毎月の生活費の補填」に回る割合が以前より増えたかを尋ねると、「非常に増えたと感じる」約15.0%と「やや増えたと感じる」約22.5%を合わせ、約37.4%が増加を実感していた(→ 図8)。一方で「生活費の補填には回っていない」も約37.4%であり、世帯間で二極化している様子がうかがえる。物価高の影響を強く受ける世帯ほど、給付が本来意図された使途から生活維持へとシフトしている可能性がある。

児童手当の使途は世帯の家計余力によって分岐しており、「貯蓄に回せる世帯」と「生活費に消える世帯」への二極化が示唆される。

約56.4%が貯蓄予定資金を生活費に流用、貯蓄が計画通りは約18.9%(→ 図9・図10)

物価高や増税の影響で、本来は子どものために貯蓄・投資したかった資金を生活費に回さざるを得ない状況が「頻繁にある」は約21.4%、「時々ある」は約35.0%であり、合計約56.4%が流用を経験している(→ 図9)。さらに、子どもの将来のための貯蓄ペースについて「計画通り、またはそれ以上に貯蓄できている」は約18.9%に留まり、「想定よりペースが落ちている」約41.6%、「ほとんどできていない」約31.7%、「切り崩している」約7.8%と、約8割の世帯で貯蓄計画に支障が生じている(→ 図10)。

子どもの将来資金の形成が物価高によって侵食されており、教育資金・資産形成関連サービスにとって看過できない環境変化であると考えられる。

負担軽減を「非常に実感できる」は約6.6%、「穴埋め」論への共感は約83.9%(→ 図11・図12)

国から支給される各種手当が子育てコストの負担軽減につながっていると「非常に実感できる」は約6.6%に留まった(→ 図11)。「実質的な負担軽減にはなっていない(生活維持の穴埋めで消えている)」約36.6%と「まったく実感できない」約23.5%を合わせ、約60.1%が負担軽減を実感できていない。さらに、「給付は貯蓄に回らず生活維持のための穴埋めに消えており、実質的な子育てコスト削減になっていない」という意見への共感は、「非常に共感する」約49.4%と「やや共感する」約34.6%を合わせ約83.9%に達した(→ 図12)。給付額そのものよりも、物価高で目減りする実質的な家計余力が実感を左右していると考えられる。

「給付は届いているが、物価高に飲み込まれて実感が薄い」という構図が、子育て世帯の家計認識の基調になっていることが示唆される。

4. 調査項目

  • あなたのご家庭の長子(第一子)の年齢について教えてください。
  • ここ1〜2年で、ご家庭の「世帯収入(手取り)」はどのように変化しましたか。
  • ここ1〜2年で、税金や社会保険料(手取りが減る要因)の負担感はどのように変化しましたか。
  • ここ1〜2年で、日々の生活費(電気代・ガス代・食料品・日用品など)の負担はどのように変化しましたか。
  • (生活費が「増加した」と答えた方)特に家計を圧迫していると感じる項目は何ですか。(複数回答)
  • (同上)「その他」の具体的な内容を教えてください。(自由記述)
  • 現在、児童手当を受給していますか。
  • (「受給している」と答えた方)児童手当の支給対象拡大(所得制限の撤廃や高校生までの延長など)により、ご家庭の受給額は増えましたか。
  • 児童手当の主な使途(使い道)として、当てはまるものをすべてお選びください。(複数回答)
  • (同上)「その他」の具体的な内容を教えてください。(自由記述)
  • 児童手当の使途について、以前と比べて「毎月の生活費(電気代や食料品など)の補填」に回る割合が増えたと感じますか。
  • 物価高や増税の影響により、本来は子どものために貯蓄・投資したかった資金を、現在の生活費(穴埋め)に回さざるを得ない状況はありますか。
  • ここ1〜2年で、お子さまの将来のための「貯蓄ペース(年間貯蓄額など)」はどうなりましたか。
  • 現在の状況において、国から支給される各種手当(児童手当など)は、子育てコストの「削減(負担軽減)」につながっていると実感できますか。
  • 「国が支援金を拡充し手当を配っても、同時に生活必需品の値上げや増税が進行しているため、給付は貯蓄に回らず『生活維持のための穴埋め』に消えており、実質的な子育てコスト削減になっていない」という意見について、どのように感じますか。
  • 現在の子育て支援策や家計の現状について、国や自治体に対するご意見やご要望があればご自由にご記入ください。(自由記述)

※本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部。掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。

5. おわりに

本調査ではまず、子育て世帯の家計環境の厳しさが確認された。世帯収入が「減った」世帯は約39.5%にのぼり、税・社会保険料の負担増を約72.0%が、生活費の増加を約87.2%が実感している。圧迫項目の中心は食料品・日用品・光熱費といった生活必需品である(図1〜図4)。

そうした中で児童手当は約93.4%の世帯に行き渡っており、使途の最多は「子どもの将来のための貯蓄・投資」約52.9%であった。一方で、約2割の世帯は給付を毎月の生活費の補填に充てており、約37.4%は補填に回る割合が以前より増えたと感じている(図5〜図8)。

その帰結として、子どもの将来のための資金形成にも影響が及んでいる。約56.4%が貯蓄予定資金を生活費に流用した経験を持ち、貯蓄が計画通りに進んでいる世帯は約18.9%に留まった(図9・図10)。

そして、各種手当による負担軽減を「非常に実感できる」のは約6.6%にすぎず、「給付は生活維持の穴埋めに消えている」という意見への共感は約83.9%に達した。給付の拡充と物価高が同時進行する現在、子育て世帯の家計認識を捉えるうえでは、名目の給付額ではなく実質的な家計余力に着目する視点が不可欠であるといえる(図11・図12)。

コズレ子育てマーケティング研究所では、こうした妊娠中のママや子育て中ママのリアルな声をお伝えすると共に、市場動向を明らかにしていきます。
本調査の詳細レポート、及び子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。
(コズレ子育てマーケティング研究所 早川)

【グラフ】図1〜図12(全グラフまとめ)

【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。
出典:「「児童手当の使途と物価高」に関する市場調査2026(株式会社コズレ)」https://cozre.co.jp/blog/19702
(コズレ子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)

この記事の著者

株式会社コズレ 取締役 早川修平の写真

著者: 早川 修平(株式会社コズレ 取締役/MBA)

NTT東日本にて法人営業、マーケティング、経営企画を経験後、慶應義塾大学大学院(在学中、米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院へ留学)にてMBAを取得。戦略コンサルティングファーム「ローランド・ベルガー」にて自動車・金融業界など幅広いクライアント向けにマーケティング戦略立案、ビジネスプロセス改善の支援に従事。

その後、子育て世代向けWebメディア「コズレ」を創業期から運営責任者として牽引し、会員数100万人超のプラットフォームへと成長させる。累計500件以上の子育て世帯を対象とした市場調査を主導し、育児用品メーカーや子育て関連サービス企業向けに、定量・定性データに基づくマーケティング戦略やプロモーション施策を多数提案・実行している。また、子育て世代の購買行動やニーズを踏まえたマーケティング手法に関するセミナーや講演会の講師も務める。

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