調査レポート

里帰り出産と夫の育児当事者意識調査2026~里帰りママの約7割が実感。「新生児期の共有」が父親の主体性を分ける~

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1. はじめに

産後の母体回復や周囲のサポートを得やすい「里帰り出産」は、今も多くの家庭で選択される慣習である。一方、近年は夫婦が共に育児を担う「チーム育児」への関心が高まり、産後の最も濃密な新生児期を夫婦で共有できるかどうかが、その後の父親の関わり方を左右するとの見方も出てきている。里帰りには明確なメリットがある反面、夫が新生児期の育児に接する機会を物理的に減らしうる側面も指摘される。そこで本調査では、里帰り出産の実態と、夫の育児への関わり方・当事者意識との関係、さらに「夫が里帰り先に頻繁に通うこと」がその関係をどう変えうるのかを明らかにした。

本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部である。「4.調査項目」記載のうち、掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。

2. 調査

調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:経産婦
調査期間:2026.05.29-2026.06.18
有効回答数:322名

3. 結果・考察

📊 本章で言及する全グラフ(図1〜図17)は、記事末尾にまとめて掲載しています。

各小見出しの「→ 図〇」の番号と対応していますので、あわせてご参照ください。

里帰り出産は今も約4割。多くが「1ヶ月以上」の長期滞在(→ 図1・図2)

本調査の対象となった母親のうち、里帰り出産を行った人は約44.1%であった(→ 図1)。滞在期間は「1ヶ月以上〜2ヶ月未満」が約42.3%と最多で、1ヶ月以上に及んだ人は合計で約7割を占める(→ 図2)。里帰り出産は依然として広く選択される慣習であり、その背景には産後の母体回復や、周囲の手を借りやすいという明確なメリットがあると考えられる。一方で、この「1ヶ月以上」という期間は、新生児期という育児の最も濃密な時間と重なる。

里帰りは母体回復に資する合理的な選択である一方、その長さゆえに、夫が新生児期の育児を経験する機会と物理的に重なりにくい構造を内包していると考えられる。

里帰り中、夫の約3人に2人は「普段通り仕事中心」(→ 図3・図4)

里帰り中の夫の来訪・滞在頻度は「ほぼ毎日」が約28.2%である一方、「週に1日程度」以下も合計で約4割にのぼる(→ 図3)。また里帰り中の夫の過ごし方では「普段と変わらず仕事中心の生活」が約65.5%と突出し、「頻繁に実家へ通い育児に関与」は約28.9%にとどまる(→ 図4)。この結果は、夫の意欲の問題というより、勤務や物理的距離といった制約の中で、関わりたくても関わりにくい状況が生じやすいことを示唆している。里帰りという形態は、母子が実家に滞在する分、夫が日常的に新生児と接する場面を構造的に減らしやすい。

夫が新生児期の育児から離れやすいのは、個人の姿勢以前に、里帰りという物理的な距離がもたらす構造的な側面が大きいと考えられる。

育休取得の有無が、産後の関与時間を大きく分ける(→ 図5・図6)

新生児期に夫が育休やまとまった休暇を取得した割合は約46.9%であった(→ 図5)。産後1ヶ月までの1日あたりの家事・育児関与時間を育休取得別に見ると、育休を取得した夫は「1日6時間超」が約40.4%に達する一方、取得しなかった夫は「ほとんど関与なし」が約46.8%と最も多い(→ 図6)。両者の関与時間には明確な差が見られる。これは、夫の関与度合いが本人の意欲だけでなく、育休という「関わるための時間的条件」に強く規定されることを示している。

夫が育児に深く関与できるかどうかは、まず時間という機会が確保されているかに大きく左右されると考えられる。

関わる機会が「主体性」を育てる――育休取得層で主体的な夫が約6割(→ 図7)

自宅で本格的に夫婦の育児が始まった後の夫の姿勢を見ると、育休を取得した層では「主体的に責任を持って担う」が約59.6%にのぼる。一方、取得しなかった層では同項目が約36.8%にとどまり、「指示すれば動く(指示待ち)」が約47.4%とこれを上回る(→ 図7)。新生児期に関わる時間を持てた夫ほど、その後も主体的に育児へ向き合う傾向が読み取れる。これは、初期に育児を経験する機会を通じて育まれる可能性があることを示唆している。

父親の主体性は、初期にどれだけ育児に関わる機会を得られたかによって育まれていく可能性がある。

スキルは着実に育つ一方、「名もなき育児」の把握は妻に集中(→ 図8・図9)

夫の育児スキルについては「一通りスムーズにこなせる」が約57.5%と過半数を占め、目に見える作業面では着実に育っている様子がうかがえる(→ 図8)。一方で、予防接種の管理や育児用品の在庫把握といった「名もなき育児」への理解度では、「言われれば気付くが、基本的には妻がすべて管理している」が約61.2%と大半を占めた(→ 図9)。おむつ替えや沐浴のような可視的なスキルは経験で習得が進む一方、段取りや管理といった見えにくい役割は妻に偏りやすい。

目に見える育児スキルと、見えにくい「管理・段取り」の役割とでは習得・分担の進み方が異なり、後者の可視化と共有が次の課題になると考えられる。

夫の来訪頻度が低い層でギャップを感じる割合が高い傾向(→ 図10・図11)

里帰りから戻った際に夫婦間で育児理解のギャップを感じた人は、全体で合計約68%にのぼる。これを夫の来訪頻度別に見ると(参考値)、「非常に大きなギャップを感じた」は夫がほぼ毎日来訪した層で約27.5%、来訪が週1日以下の層では約41.3%と差が見られた(→ 図10)。さらにギャップの原因では「夫の当事者意識・関心が低い」が約37.4%で最多だが、「夫が一人で育児をする機会がなかった」約24.7%、「新生児期の過酷さを共有しなかった」約22.4%と、機会・共有の不足を挙げる声も合わせて半数近くを占める(→ 図11)。

ギャップは夫個人の資質に帰されがちだが、データ上は「共有された経験の量」と密接に関係しており、里帰り中に夫が関わる頻度を高めることで縮小し得ると考えられる。

妻の約半数が「自分の負担の方が大きい」と実感(→ 図12・図13)

本格的な育児生活が始まった後の妻自身の負担感では、「夫の協力はあるが自分の負担が大きい」が約50.3%と最も多く、「ほぼワンオペ状態」も約16.8%にのぼる(→ 図12)。また夫に言えずに我慢した本音としては「指示待ちでなく主体的に動いてほしい」約47.2%、「名もなき育児・見えない家事に気づいてほしい」約43.8%が上位を占めた(→ 図13)。これらは、妻が夫の協力そのものを否定しているのではなく、「主体性」と「見えない負担への気づき」を求めていることを示している。

妻が求めているのは作業量の多寡以上に、夫が自ら状況を把握して動く「主体性」であり、ここにコミュニケーション設計の余地があると考えられる。

約7割が「新生児期の共有」を重視。里帰りの設計に余地(→ 図14・図15)

新生児期の過ごし方が夫の当事者意識に影響したかでは、「非常に影響した」約31.4%と「多少影響した」約38.8%を合わせ、影響を実感する人が約7割に達する(→ 図14)。また里帰り出産によって妻と夫の当事者意識に差ができると思うかでは、「とても思う」約30.4%・「やや思う」約34.5%で、肯定的な回答が合計約64.9%にのぼった(→ 図15)。当事者である母親自身が、産後初期の経験共有の重要性と、里帰りに伴う意識差のリスクを実感している。

多くの母親が「新生児期をどう共有するか」を父親の当事者意識を左右する分岐点と捉えており、里帰りの設計においてこの視点が鍵になると考えられる。

次は「夫婦で」「工夫して」――見直し志向が約6割(→ 図16・図17)

次の機会に里帰り出産を選びたいかでは、「里帰りせず最初から夫婦ふたりで育てたい」が約41.9%と最多で、「条件付きで里帰りしたい(夫に経験させる工夫をした上で)」約15.2%と合わせ、何らかの見直し・工夫を志向する回答が約6割近くを占めた(→ 図16)。夫の主体性を促すために必要だった取り組みでは「特定の役割を完全に任せる」約43.7%、「里帰り中も頻繁に来てもらい育児に巻き込む」約41.5%、あるいは、夫が一人で育児を担う時間を設ける、といった選択肢が上位に並ぶ(→ 図17)。

母親たちが求めているのは里帰りの全面否定ではなく、身体回復のメリットを得つつ夫を育児から隔離しない「両立の工夫」であり、ここに具体的な提案余地があると考えられる。

4. 調査項目

  • あなたの性別
  • 現在の状況(長子の年齢)
  • 里帰り出産をしたか
  • 産後の実家・義実家での滞在期間
  • 里帰り中の夫の来訪・滞在の頻度
  • 里帰り中の夫の過ごし方(複数回答)
  • 新生児期における夫の育休・まとまった休暇の取得
  • 産後1ヶ月までの夫の1日あたりの家事・育児関与時間
  • 自宅復帰後の夫の育児・家事に対する姿勢
  • 夫の育児スキルへの評価
  • 「名もなき育児」など細かなタスクへの夫の理解度
  • 夫婦間で感じた育児理解のギャップ
  • ギャップを感じた原因
  • 育児における妻自身の負担・心理的ストレスの実感
  • 夫に言いたかったが我慢した本音(複数回答)
  • 新生児期の過ごし方が夫の当事者意識に与えた影響の実感
  • 次の機会があれば里帰り出産を選びたいか
  • 夫の主体性を促すために必要だった取り組み(複数回答)
  • 里帰り出産で妻と夫の当事者意識に差ができると思うか
  • 里帰り出産と夫の当事者意識醸成についての考え方
  • 里帰り出産に関する自由回答

※本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部。掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。

5. おわりに

本調査から、里帰り出産は今も約44.1%が選択する慣習であり、その多くが新生児期と重なる1ヶ月以上の長期滞在であることが分かった(図1・図2)。一方、里帰り中の夫は約65.5%が普段通り仕事中心で過ごし、来訪頻度も限られる傾向にあった(図3・図4)。これは夫の姿勢以前に、里帰りが夫と新生児期育児との物理的な距離を生みやすい構造によるところが大きいと考えられる。

産後の夫の関与は、育休という時間的機会の有無に強く左右され、育休取得層では1日6時間超の関与が約40.4%、主体的な姿勢も約59.6%にのぼった(図5〜図7)。父親の当事者意識は生来の資質ではなく、初期に育児へ関わる機会を通じて育つものであることが示唆される。もっとも、目に見えるスキルは育っても「名もなき育児」の管理は妻に偏りやすい点は、次の課題として残る(図8・図9)。

夫婦の理解ギャップは、夫の来訪頻度が低いほど大きく、原因にも「機会・共有の不足」が多く挙がった(図10・図11、参考値含む)。妻の約半数が自身の負担の大きさを実感し、その本音は「主体的に動いてほしい」「見えない負担に気づいてほしい」に集約された(図12・図13)。これは夫の協力を否定するものではなく、主体性と気づきを求める前向きな声と読み取れる。

母親自身も新生児期の共有の重要性を実感しており(図14・図15)、次回は「夫婦で」「工夫して」と見直しを志向する声が約6割を占めた(図16・図17)。重要なのは里帰りの是非そのものではなく、身体回復というメリットを保ちつつ夫を育児から隔離しない「両立の設計」である。商品・サービスの提供においても、産後初期から夫婦が共に育児へ向き合える仕組みづくりに、大きな提案余地があると考えられる。

コズレ子育てマーケティング研究所では、こうした妊娠中のママや子育て中ママのリアルな声をお伝えすると共に、市場動向を明らかにしていきます。
本調査の詳細レポート、及び子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。
(コズレ子育てマーケティング研究所 早川)

【グラフ】図1〜図17(全グラフまとめ)

【出典の記載についてのお願い】

調査結果を利用する際は出典を記載してください。
出典:「里帰り出産と夫の育児当事者意識調査2026(株式会社コズレ)」https://cozre.co.jp/blog/19875
(コズレ子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)

この記事の著者

株式会社コズレ 取締役 早川修平の写真

著者: 早川 修平(株式会社コズレ 取締役/MBA)

NTT東日本にて法人営業、マーケティング、経営企画を経験後、慶應義塾大学大学院(在学中、米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院へ留学)にてMBAを取得。戦略コンサルティングファーム「ローランド・ベルガー」にて自動車・金融業界など幅広いクライアント向けにマーケティング戦略立案、ビジネスプロセス改善の支援に従事。

その後、子育て世代向けWebメディア「コズレ」を創業期から運営責任者として牽引し、会員数100万人超のプラットフォームへと成長させる。累計500件以上の子育て世帯を対象とした市場調査を主導し、育児用品メーカーや子育て関連サービス企業向けに、定量・定性データに基づくマーケティング戦略やプロモーション施策を多数提案・実行している。また、子育て世代の購買行動やニーズを踏まえたマーケティング手法に関するセミナーや講演会の講師も務める。

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