調査レポート

育児用品の販促、児童手当の「支給月」に寄せるべきか~児童手当支給月と購入意欲の実態調査~

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1.はじめに

近年、児童手当は支給対象や支給額の拡充が進み、子育て世帯の家計を支える存在として注目が高まっている。一方で、まとまった収入が入る「支給月」が、育児用品の購入や検討の起点になっているのかは、これまで明らかになっていない。仮に支給月が購買のきっかけとして機能しているのであれば、育児用品を扱う小売の販促・セール時期の設計に示唆を与えうる。そこで本調査では、児童手当の支給月が育児用品の購入意欲に与える影響、影響する/しない層それぞれの理由、そして店頭フェアで実際に響く訴求の実態を明らかにした。

本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部である。「4.調査項目」記載のうち、掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。

2.調査

調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:長子が0〜2歳の子を持つコズレ会員
調査期間:2026年6月9日(火)〜2026年6月29日(月)
有効回答数:227名

3.結果・考察

📊 本章で言及する全グラフ(図1〜図15)は、記事末尾にまとめて掲載しています。

各小見出しの「→ 図〇」の番号と対応していますので、あわせてご参照ください。

支給月を「意識している」のは約3割にとどまる(→ 図1)

児童手当の支給月について、「把握しており、意識している」と回答した親は約30.0%であった(→ 図1)。「なんとなく把握している」を含めれば約64.8%が一定の認知を持つ一方、能動的に意識している層は3割程度に限られる。背景には、児童手当が口座へ自動入金される性質上、支給の事実を意識せずとも家計に取り込まれていることがあると考えられる。

支給月そのものを起点とした訴求を設計する場合、「意識している」層は限定的であることを前提に置く必要があると考えられる。

使い道は「貯蓄」が約6割で最多、購入トリガーになりにくい(→ 図2)

児童手当の主な使い道は「子どもの将来のために貯蓄している」が約58.5%で最多であった(→ 図2)。「おむつ・ミルクなどの日用品」(約22.1%)「生活費」(約21.6%)が続く一方、「ベビーカー・チャイルドシートなどの高額育児用品」に充てる層は約1.4%にとどまる。児童手当は将来に備える「ストック」として位置づけられ、目の前の購買原資として消費される割合は低いことが示唆される。

支給月を高額品購入の起点と捉える仮説は、使い道の構造の面からは支持されにくいと考えられる。

支給月で購入意欲が「高まる」のは約23.9%にとどまる(→ 図3)

支給月・入金タイミングで育児用品の購入意欲が高まるかを尋ねたところ、「とても高まる」「やや高まる」の合計は約23.9%にとどまり、「あまり変わらない」「まったく変わらない」の合計が約76.1%を占めた(→ 図3)。すなわち、支給月が購買の起点になっている層は全体の約4分の1に限られる。前述の通り、児童手当が貯蓄や生活費に充てられていることが、購入意欲との連動を弱めていると考えられる。

支給月を購買喚起の主軸に据えるよりも、意欲が高まる約4分の1の層を見極めて狙うアプローチが現実的であると考えられる。

意欲が高まる層は「まとまった金額」「子どものために」が動機(→ 図4)

購入意欲が高まると回答した層に理由を尋ねたところ、「子どものために使いたい気持ちになるから」が約39.6%、「まとまった金額が入るため、購入しやすくなるから」が約34.0%であった(→ 図4)。金銭的な余裕そのものよりも、子どもに還元したいという心理的な動機が同等以上に働いていることがうかがえる。

高まる層に対しては、家計面の訴求に加え「子どものために」という情緒的な文脈を重ねることが、購買の後押しになりうると考えられる。

変わらない層は「貯蓄・生活費」「必要なときに買う」が理由(→ 図5)

購入意欲が変わらないと回答した層では、「児童手当は生活費や貯蓄に充てているから」が約50.3%、「必要なタイミングで購入するため、支給月は関係ないから」が約40.2%であった(→ 図5)。育児用品は必要に迫られて購入される性質が強く、支給月という外部のタイミングに購買が引きずられにくいことが示唆される。

多数派である「変わらない層」には支給月訴求が届きにくく、必要発生のタイミングを捉える設計の方が有効と考えられる。

支給月の購入対象は「日用品」が中心、高額品は限定的(→ 図6)

支給月に合わせて購入・検討したい育児用品では、「購入・検討したいものはない」が約63.1%と最多であった(→ 図6)。挙げられた品目のなかでは「おむつ・ミルクなどの日用品」が約20.3%で最も高く、「子ども服・靴」(約10.8%)が続く。一方、ベビーカー(約5.4%)やチャイルドシート(約5.9%)といった高額品は限定的であった。支給月が購買に結びつく場合でも、その対象は高額品ではなく消耗品に偏ることが示唆される。

支給月を活かすのであれば、高額品よりも日用品の「まとめ買い」を軸とした提案が相性が良いと考えられる。

高額品・消耗品とも「影響あり」は約2割、消耗品がやや高い(→ 図7・図9)

支給月が購入に影響したかを商材タイプ別に尋ねたところ、高額育児用品では「大きく/少し影響した」の合計が約19.8%(→ 図7)、消耗品・普段使いの用品では約23.4%であった(→ 図9)。いずれも「影響しなかった」が約7割を占めるが、消耗品の方がわずかに影響を受ける層が厚い。日々消費され買い足しが発生する消耗品の方が、まとまった入金のタイミングと結びつきやすいことが背景にあると考えられる。

支給月の効果を見込むのであれば、高額品より消耗品カテゴリーの方が反応を得やすいと考えられる。

影響する層では「家計負担の大きさ」が後押しになる(→ 図8)

高額育児用品で支給月が影響したと回答した層では、「高額商品は家計への負担が大きいため、支給月の方が検討しやすいから」が約40.9%、「まとまった収入があるタイミングで購入したいから」が約34.1%であった(→ 図8)。高額であるがゆえに、購入の踏ん切りをつける「きっかけ」として支給月が機能している構図がうかがえる。

高額品で支給月を活かす場合は、家計負担を和らげる文脈(分割・ポイント還元など)と組み合わせることが後押しになりうると考えられる。

検討しやすくなる金額帯は「影響しない/金額問わず」が多数(→ 図10)

支給月に合わせて検討しやすくなる金額帯を尋ねたところ、「児童手当の支給月は購入判断に影響しない」が約35.6%、「金額に関係なく、必要なタイミングで購入する」が約31.5%と、特定の金額帯を挙げない回答が合計で約7割近くを占めた(→ 図10)。金額帯を挙げた層では「10,000円以上」(約8.1%)がやや高い。支給月を「ここから上の金額なら検討しやすい」という閾値として捉える層は少数であることが示唆される。

価格帯を区切った支給月訴求の効果は限定的であり、金額の線引きよりも必要発生のタイミング設計を優先すべきと考えられる。

特設フェアには約5割が「見に行きたい」と高い関与を示す(→ 図11)

店頭でベビーカーやチャイルドシートなどの特設フェアが開催された場合の行動では、「店舗に見に行きたい」が約50.5%、「実物を試してみたい」が約45.9%、「複数の商品を比較したい」が約35.1%であった(→ 図11)。支給月の有無にかかわらず、フェアという「場」そのものへの関与意欲は高い。育児用品は実物の確認や比較が重視される商材であることが、この高い反応につながっていると考えられる。

支給月を前提とせずとも、見る・試す・比べる体験を提供するフェアは集客装置として有効と考えられる。

フェアで効くのは「割引・セール価格」、支給月限定は弱い(→ 図12)

特設フェアで購入・検討意欲が高まる内容では、「割引・セール価格」が約77.0%と突出し、「ポイント還元」(約39.6%)「商品の試用・体験」(約32.4%)が続いた(→ 図12)。一方、「児童手当支給月に合わせた限定キャンペーン」は約6.3%にとどまった。フェアの集客力を左右するのは支給月という時期性ではなく、価格メリットと体験価値であることが明確に示されている。

店頭施策は、支給月を看板に掲げるより、割引・ポイント還元・体験を前面に出す方が広く反応を得られると考えられる。

高額品は約8割が「実物確認」を希望、ショールーミングが主流(→ 図13・図14)

高額育児用品の購入前には、「必ず実物を確認したい」が約58.1%、「できれば確認したい」が約24.8%で、合計約82.9%が実物確認を望んでいる(→ 図13)。最終的な購入チャネルは「実店舗で確認し、そのまま実店舗で購入」が約45.5%、「実店舗で確認し、後日ECサイトで購入」が約30.6%であった(→ 図14)。確認は実店舗で行うが購入はECに流れる、いわゆるショールーミングが一定割合で発生していることがうかがえる。

高額品のフェアは、実物を確認できる場としての価値を高めつつ、その場での購入動機(限定特典・即日持ち帰り等)を併せて設計することが鍵になると考えられる。

魅力的なフェア表現は「ポイント還元」「家計にやさしい」が上位(→ 図15)

魅力を感じる育児用品フェアの表現では、「ポイント還元・特典付きフェア」が約45.0%、「家計にやさしい育児用品フェア」が約44.1%、「実際に試せる体験フェア」が約35.6%が上位を占めた(→ 図15)。一方、「児童手当支給月のまとめ買い応援」は約6.3%にとどまった。ここでも、家計支援・お得感・体験といった普遍的な価値が支持され、児童手当を直接的に冠した表現は支持されにくいことが一貫して示された。

フェアの訴求軸は、児童手当という固有名を前面に出すのではなく、「家計にやさしい」「ポイント還元」「試せる」といった普遍的な便益に翻訳して打ち出す方が効果的と考えられる。

4.調査項目

  • 長子の年齢
  • 児童手当の支給月の把握状況
  • 児童手当の主な使い道
  • 支給月・入金タイミングでの育児用品の購入意欲の変化
  • 購入意欲が高まる理由/変わらない理由
  • 支給月に合わせて購入・検討したい育児用品
  • 高額育児用品の購入への支給月の影響と、その理由
  • 消耗品・普段使いの用品の購入への支給月の影響
  • 支給月に合わせて検討しやすくなる金額帯
  • 特設フェア開催時にとりたい行動
  • 特設フェアで購入・検討意欲が高まる内容
  • 高額育児用品の購入前の実物確認意向
  • 高額育児用品の最終的な購入チャネル
  • 魅力を感じる育児用品フェアの表現

※本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部。掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。

5.おわりに

本調査からは、「児童手当の支給月が育児用品購入の起点になっている」という仮説は、全体としては支持されにくいことが示された。支給月で購入意欲が高まる層は約23.9%にとどまり、児童手当の主な使い道も「貯蓄」が約6割を占める。多数派にとって育児用品は必要発生のタイミングで購入されるものであり、支給月という外部の時期に購買が引きずられにくい構造がうかがえる(図2・図3・図5)。

ただし、約4分の1の「高まる層」には確かな手応えがある。この層では「まとまった金額」に加え「子どものために使いたい」という情緒的動機が働き、対象は高額品よりも、おむつ・ミルクなどの日用品の「まとめ買い」に偏る。支給月を活かすのであれば、高額品ではなく消耗品のまとめ買いを軸に、家計支援と情緒の文脈を重ねる設計が現実的と考えられる(図4・図6・図7・図9)。

小売の販促・セール時期への示唆としては、児童手当の支給月そのものを看板に掲げる打ち出しは弱いことが一貫して確認された。フェアで意欲を高めるのは「割引・セール価格」(約77.0%)であり、魅力を感じる表現も「ポイント還元」「家計にやさしい」が上位である一方、「児童手当支給月」を冠した表現はいずれも1割未満にとどまる。同時に、高額品は約8割が実物確認を望み、確認は実店舗・購入はECというショールーミングも一定割合で生じている。店頭フェアは、支給月という時期性よりも、価格メリット・体験価値・実物確認の場という普遍的な便益を軸に設計する方が効果的と考えられる(図11〜図15)。

なお、長子の年齢による差異も確認したが、購入意欲の変化(図3)など中核的な指標では一貫した年齢差は見られなかった。高額品への関心が0歳層でやや高い傾向はあるものの、これは耐久消費財の取得期にあたることによる限定的なものと考えられ、年齢を主たる軸に据えるほどの差ではないと判断した。

コズレ子育てマーケティング研究所では、こうした妊娠中のママや子育て中ママのリアルな声をお伝えすると共に、市場動向を明らかにしていきます。
本調査の詳細レポート、及び子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。
(コズレ子育てマーケティング研究所 早川)

【グラフ】図1〜図15(全グラフまとめ)

児童手当支給月と育児用品購入 実態調査2026 図1〜図15 グラフまとめ

【出典の記載についてのお願い】

調査結果を利用する際は出典を記載してください。
出典:「児童手当支給月と育児用品購入 実態調査2026(株式会社コズレ)」https://cozre.co.jp/blog/20349
(コズレ子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)

この記事の著者

株式会社コズレ 取締役 早川修平の写真

著者: 早川 修平(株式会社コズレ 取締役/MBA)

NTT東日本にて法人営業、マーケティング、経営企画を経験後、慶應義塾大学大学院(在学中、米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院へ留学)にてMBAを取得。戦略コンサルティングファーム「ローランド・ベルガー」にて自動車・金融業界など幅広いクライアント向けにマーケティング戦略立案、ビジネスプロセス改善の支援に従事。

その後、子育て世代向けWebメディア「コズレ」を創業期から運営責任者として牽引し、会員数100万人超のプラットフォームへと成長させる。累計500件以上の子育て世帯を対象とした市場調査を主導し、育児用品メーカーや子育て関連サービス企業向けに、定量・定性データに基づくマーケティング戦略やプロモーション施策を多数提案・実行している。また、子育て世代の購買行動やニーズを踏まえたマーケティング手法に関するセミナーや講演会の講師も務める。

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