1. はじめに
日本では長らく「持ち家=戸建て」が家族の住まいの理想とされ、子育て世帯にとってマイホーム購入は人生の大きな目標とされてきた。一方で子育て世帯は、出産や子の成長によって家族構成や生活スタイルが短期間で変化しやすく、住み替えが発生しやすいライフステージにある。近年はこうした変化に柔軟に対応できる住まいとして賃貸を積極的に選ぶ動きも見られるが、その実態は十分に明らかになっていない。そこで本調査では、子育て世帯が住み替えの選択肢として賃貸をどう捉え、実際に賃貸を選択した層がどのような価値を感じているのかを明らかにした。
本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部である。「4.調査項目」記載のうち、掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。
2. 調査
調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:妊娠中および0歳以上の子を持つ親
調査期間:2026年6月8日(月)〜2026年6月21日(日)
有効回答数:498名
3. 結果・考察

📊 本章で言及する全グラフ(図1〜図12)は、記事末尾にまとめて掲載しています。
各小見出しの「→ 図〇」の番号と対応していますので、あわせてご参照ください。
住み替えを想定する層は4割超、実施済も約46%(→ 図1・図2)
子の成長に合わせて予定・許容する住み替え回数を尋ねたところ、「現在の住まいのまま予定なし(0回)」が約57%である一方、1回以上を予定または許容する層が約43%に上った(→ 図1)。さらに妊娠以降に実際に住み替えを行った層は約46%、検討中を含めると約65%に達した(→ 図2)。子育て世帯にとって住み替えは例外的な出来事ではなく、ライフステージの節目ごとに繰り返し発生しうる行動であると考えられる。
子育て世帯はライフステージの節目で住み替えの機会を持ちうる層であり、一度きりの購入客にとどまらない継続的な顧客として捉えることが、賃貸・売買双方の事業機会につながる可能性がある。
検討段階では新築戸建てが過半、賃貸マンションも約34%(→ 図3)
住み替え時に検討した住居の種別は、新築一戸建て(購入)が約51%と過半を占めた一方、賃貸マンション・アパートも約34%が検討していた(→ 図3)。持ち家志向が依然として強いなかでも、賃貸は購入と並ぶ有力な比較対象として検討テーブルに載っていることが示唆される。
賃貸は購入できない層の消去法ではなく、購入と同じ土俵で比較される選択肢になりつつあり、賃貸物件も購入検討層に向けた訴求余地が大きいと考えられる。
賃貸系が約28%、検討から実選択へ存在感(→ 図4)
住み替えた住居は、新築一戸建てが約49%で最多だが、賃貸マンション・アパートが約26%、賃貸一戸建てを合わせると賃貸系が約28%を占めた(→ 図4)。検討段階で賃貸を挙げた層の多くが、賃貸を選び取っている構図が見て取れる。
子育て世帯の3〜4組に1組が賃貸を住まいとして選んでおり、ファミリー向け賃貸市場には確かな需要が存在すると考えられる。
賃貸選択の最大理由は「いつでも引っ越せる」柔軟性(→ 図5)
賃貸を選んだ理由は、「ライフステージの変化に合わせていつでも引っ越せる」が約42%で最多、次いで「最初から賃貸一択だった」が約33%、「購入に比べ初期費用・ローンの負担が少ない」が約22%であった(→ 図5)。金銭面よりも、変化に対応できる可動性を重視する層が上位に立った点が特徴的である。
ファミリー向け賃貸の訴求では、価格の安さ以上に「暮らしの変化に合わせて住み替えられる自由度」を前面に出す方が響く可能性が高い。
賃貸で死守したのは駅近の利便性と実家との距離(→ 図6)
購入を断念してでも賃貸で確保したかった周辺環境は、「通勤・通学の利便性(駅近など)」が約45%で最多、次いで「実家・義実家との距離の近さ」が約31%、「保育園・幼稚園の入りやすさ」が約27%と続いた(→ 図6)。希望するエリアの物件が予算内では賃貸にしかなかった、という状況が背景にあると考えられる。
好立地・子育て支援環境の整ったエリアでは、購入をあきらめた層の受け皿として賃貸需要が集中しやすく、そうした立地での賃貸供給には優位性があると考えられる。
賃貸化で約4割に月1万円以上の家計余裕、使途は子への投資(→ 図7・図8)
賃貸化で生まれた毎月の家計の余裕は「1万円未満」が約61%だが、1万円以上の余裕を実感する層も約39%に上った(→ 図7)。浮いたお金の使い道は「子どもの将来への投資・貯蓄」が約68%、「子どもの教育費」が約48%と、子どもへの支出が上位を占めた(→ 図8)。
賃貸化による家計の余力が子への教育・投資に振り向けられており、「賃貸だからこそ教育にお金をかけられる」という価値訴求が子育て世帯に刺さる可能性がある。
「何かあれば引っ越せる」気楽さが約8割の安心につながる(→ 図9)
「何かあれば引っ越せばいい」という賃貸の気楽さが精神的安心感に寄与しているかを尋ねたところ、「非常に大きく寄与」約27%と「ある程度寄与」約53%を合わせ、約8割が精神的な安心につながると回答した(→ 図9)。ローンという長期債務を負わないことが、変化の多い子育て期の心理的な支えになっていると考えられる。
賃貸の価値は物理的な住み替えやすさだけでなく精神的な身軽さにもあり、この安心感を言語化して伝えることが差別化につながると考えられる。
維持管理の丸抱えに約86%が魅力、敬遠されるのは修繕費の積立(→ 図10・図11)
メンテナンスや設備交換を大家(管理会社)が丸抱えする点には、「非常に魅力を感じている」約36%と「ある程度魅力を感じている」約50%を合わせ、約86%が魅力を感じていた(→ 図10)。自分で維持管理する場合に最も億劫な業務は「修繕費用の積み立てや資金管理」が約36%で最多であった(→ 図11)。
維持管理・修繕の負担からの解放は賃貸の強力な便益であり、管理品質やレスポンスの良さを訴求することで賃貸の魅力をさらに高められる可能性がある。
隣人トラブル回避も一定の購入回避要因(→ 図12)
購入を躊躇した理由として隣人トラブルのリスクが影響したかを尋ねたところ、「非常に大きく影響した」約9%と「ある程度影響した」約30%を合わせ、約39%が影響を認めた(→ 図12)。過半の約61%は影響しなかったとする一方で、一定層にとっては固定的な近所付き合いを避けたい心理が賃貸選択の一因になっていることが示唆される。
「合わなければ移れる」という賃貸の可逆性は、ご近所リスクを懸念する層への訴求点になり得ると考えられる。
4. 調査項目
- 長子(第一子)のお子さまの年齢
- 子の成長に合わせて予定・許容する住み替え回数
- 妊娠以降の住み替えの実施状況
- 住み替え時に検討した住居の種別
- 実際に住み替えた住居の種別
- 「賃貸」を選んだ理由
- 購入を断念してでも賃貸で死守したかった周辺環境
- 賃貸化で毎月家計に生まれた余裕
- 浮いたお金の使い道
- 購入躊躇の理由としての隣人トラブルリスクの影響度
- 賃貸の気楽さが精神的安心感に寄与する程度
- 維持管理を大家(管理会社)が丸抱えする点への魅力度
- 自分で維持管理する場合に最も億劫に感じる業務
※本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部。掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。
5. おわりに
まず住み替えの意向・実態については、子育て世帯の約43%が子の成長に合わせた今後の住み替えを想定し、約46%がすでに住み替えを実施していた(→ 図1・図2)。持ち家志向が根強いなかでも、賃貸は検討段階で約34%、実際の選択でも賃貸系で約28%を占め、購入と並ぶ選択肢として確かな存在感を示している(→ 図3・図4)。
賃貸を選んだ動機を見ると、金銭的な負担の軽さ以上に「ライフステージの変化に合わせていつでも引っ越せる」柔軟性が最重視されていた(→ 図5)。そのうえで、購入を断念してでも駅近の利便性や実家との距離といった立地条件を死守しようとする傾向がうかがえた(→ 図6)。
実際に賃貸を選んだ層は、そこから生まれた家計の余力を子どもへの投資・教育費に振り向け(→ 図7・図8)、「何かあれば引っ越せる」気楽さや維持管理を大家に委ねられる点に高い価値を感じていた(→ 図9〜図11)。加えて、固定的な近所付き合いを避けたい心理も、一定層にとって賃貸選択の後押しになっていた(→ 図12)。
以上から、子育て世帯にとって賃貸は「持ち家を買えない層の妥協」ではなく、変化の多いライフステージに主体的に対応するための積極的な選択肢へと位置づけが変わりつつあることが示唆される。不動産関係者にとっては、この層の可動性・立地志向・家計観を捉えた提案が、賃貸・売買双方の機会につながると考えられる。
コズレ子育てマーケティング研究所では、こうした妊娠中のママや子育て中ママのリアルな声をお伝えすると共に、市場動向を明らかにしていきます。
本調査の詳細レポート、及び子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。
(コズレ子育てマーケティング研究所 早川)
【グラフ】図1〜図12(全グラフまとめ)

【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。
出典:「子育て世帯の住み替えと賃貸選択の実態調査2026(株式会社コズレ)」https://cozre.co.jp/blog/20974
(コズレ子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)



