1. はじめに
2026年10月以降、国内の企業・団体による個人情報の漏えい事案が相次いで報じられている。不正アクセスの手口にはAI技術の悪用も疑われており、個人の注意だけでは防ぎきれないとの指摘もある。子育て世帯は、病産院や園をはじめ、出産・育児の過程で多くの場面に子どもの氏名や生年月日を登録しており、漏えいの影響は親自身にとどまらない。しかし、相次ぐ事案を受けて親の意識や行動がどう変化したのか、とりわけ子どもの個人情報をどう捉えているのかは明らかになっていない。そこで本調査では、子育て中のコズレ会員を対象に、個人情報漏えいへの不安や直近1か月の意識・行動の変化、企業に求める対応を明らかにした。
本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部である。「4.調査項目」記載のうち、掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。
2. 調査
調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所
調査方法:インターネット・リサーチ
調査対象:0歳〜小学生以上の子を持つコズレ会員
調査期間:2026.10.21-2026.10.28
有効回答数:246名
3. 結果・考察

📊 本章で言及する全グラフ(図1〜図19)は、記事末尾にまとめて掲載しています。
各小見出しの「→ 図〇」の番号と対応していますので、あわせてご参照ください。
直近1か月の漏えいニュース、約9割が見聞き(→ 図2)
直近1か月に国内の企業・団体による個人情報漏えいのニュースを見聞きした割合は、「内容を含め、ある程度詳しく知っている」約44%と「見聞きしたが、詳しい内容は知らない」約47%を合わせて約91%に達した(→ 図2)。「見聞きしていない」は約7%にとどまる。
10月以降の相次ぐ報道が、子育て世帯にも広く届いていることがうかがえる。ただし詳しい内容まで把握している層は半数に届かず、漏えいが起きているという認識は共有されつつも、自分にどう関係するのかまでは理解が及んでいない層が一定数存在すると考えられる。
漏えい報道への接触はほぼ全層に及んでおり、企業には自社の取り組みを平易に伝えるコミュニケーションが求められる局面にあると考えられる。
約6割に漏えい関連の経験、直近1か月の不審連絡も約半数(→ 図3・図4)
これまでの経験では「利用している企業・サービスで漏えいまたはその可能性が公表された」が約41%で最多、「自分の情報について個別に通知された」が約24%、「不正ログインや不正利用など実際の被害を受けた」が約12%であり、「経験したことはない」は約28%にとどまった(→ 図3)。直近1か月では「不審なメールやSMSが届いた」が約49%、「不審な電話がかかってきた」が約30%にのぼる(→ 図4)。
漏えいはニュースの中の出来事ではなく、通知や不審連絡という形で生活に入り込んでいる様子がうかがえる。不審連絡と漏えいの因果関係は本調査からは判断できないが、こうした体験の積み重ねが不安を実感に変えている可能性がある。
漏えいは「自分ごと」の体験となりつつあり、通知や不審連絡への対処法をセットで示す情報提供の価値が高まっていると考えられる。
「とても不安」は自分約55%に対し、長子は約69%(→ 図5・図6)
自身の個人情報の漏えいに「とても不安を感じる」「やや不安を感じる」と回答した割合は合計約92%、長子についても約92%と、いずれも9割を超えた(→ 図5・図6)。一方、「とても不安を感じる」に絞ると、自身の約55%に対し長子は約69%と、約14ポイント上回る。
不安を感じる層の広がりは同程度だが、不安の強さは子どもの情報でより大きい。子どもは自ら判断・対処できず、登録した情報の責任を親が負うという意識が、不安の強さに表れている可能性がある。
子どもの情報を預かるサービスには、大人向け以上に手厚い安心材料の提示が求められると考えられる。
約3人に2人が、1か月前より注意・関心を高めた(→ 図7)
1か月前と比べた個人情報の取り扱いへの注意・関心は、「自分と長子の情報の両方について高まった」が約46%で最多となり、「主に自分の情報について」約13%、「主に長子の情報について」約8%を合わせると、約67%が高まったと回答した(→ 図7)。「特に変わらない」は約25%、「以前より低くなった」は約1%であった。
直近1か月の報道や身近な体験を受け、短期間で意識が引き上げられたことが示唆される。ただし本設問は回答者自身の振り返りによる比較であり、意識の高まりが持続するかは継続的な観察が必要である。
意識が高まっている今は、企業が自社の情報管理を点検し、その内容を発信する好機であると考えられる。
不安の核心は「身近さ」と「漏えいした情報の行方の見えなさ」(→ 図8)
漏えいについての感じ方では「自分や家族にも起こりうる身近な問題だと感じる」が約76%で最多となり、「情報が誰に渡り、何に使われるのか分からないことが不安」が約56%、「自分で気をつけても、防ぎきれないと感じる」が約37%と続いた(→ 図8)。一方、「企業・団体の情報管理に不信感がある」は約13%にとどまり、「以前ほど驚かなくなった」は1%に満たない。
漏えいが続いても慣れは広がっておらず、身近な問題として受け止められている。また、企業・団体の情報管理そのものへの不信感は限定的である。不安の源泉は、ひとたび漏えいした情報が誰の手に渡り、どのように悪用されるのか見通せないことにあると考えられる。
万一の漏えい時に想定される影響と対処法を平時から分かりやすく示すことが、子育て世帯の不安を和らげる可能性がある。
対策は認証強化が中心、サービス利用を控える動きは限定的(→ 図9)
直近1か月に行った対策では「二段階認証など、ログイン時の認証の強化」が約45%、「パスワードの変更や使い回しの見直し」が約35%、「利用していないサービスの退会や登録情報の削除」が約21%であった(→ 図9)。一方、「新しい会員登録やアプリの利用を控える」は約13%、「プレゼントやキャンペーンへの応募を控える」は約3%にとどまり、「長子の情報を登録しているサービスを見直す」も約2%であった。
不安が高まる中でも、サービスの利用自体を控える動きは限定的であり、利用は続けつつ自分でできる防御を強める行動が中心と考えられる。子どもの情報については、見直しの手がかりが乏しいことが背景にある可能性がある。
子育て世帯は信頼できるサービスの利用を続ける傾向にあり、子どもの情報管理を支援する情報提供や機能には潜在的なニーズがあると考えられる。
困りごとは「何をすればよいか」「効果が分からない」が各約45%(→ 図10)
対策を取るうえでの困りごとは「具体的に何をすればよいか分からない」が約46%、「対策をしても、どこまで効果があるか分からない」が約45%と拮抗し、「手間や時間がかかる」約38%、「利用しているサービスが多く、すべてを管理できない」約35%が続いた(→ 図10)。「特に困っていることはない」は約8%にとどまる。
大半が何らかの困難を抱えており、知識不足と効果への疑念が行動の壁になっていると考えられる。育児で多忙な中、多数のサービスを個別に管理する負担の大きさもうかがえる。
優先順位を示した具体的な対策ガイドが、子育て世帯の行動を後押しする可能性がある。
登録が多いのは生年月日・氏名、心配は住所・氏名・顔写真(→ 図11・図12)
長子について登録・提出している情報は「生年月日」約76%、「氏名」約72%、「自宅の住所」約64%が上位であった(→ 図11)。一方、漏れると特に心配な情報は「自宅の住所」約74%、「氏名」約57%、「顔が分かる写真・動画」約57%で、「生年月日」は約26%にとどまる(→ 図12)。
生年月日は多くの場面で登録されている一方、単独で心配される度合いは相対的に低い。心配は住所や顔写真など、子どもの身元や所在の特定につながる情報に集中しているとみられる。
住所や顔写真など「特定につながる情報」の取り扱い方針を明示することが、子育て世帯の安心感を高めると考えられる。
最大の懸念は「居場所の特定」で約62%(→ 図13)
長子の情報が漏れた場合に心配なことは「居場所を特定され、つきまといなどの危険が生じること」が約62%で最多となり、「詐欺やなりすましに悪用されること」約53%、「写真・動画を無断で転載・加工されること」約40%、「不審な連絡や勧誘が届くこと」約39%が続いた(→ 図13)。
金銭的な被害以上に、子どもの身の安全への懸念が上位に来ている。写真の無断転載・加工への懸念が約4割にのぼる点には、画像生成AIの普及なども影響している可能性がある。
子どもの情報を扱う企業には、情報セキュリティを「子どもの安全」の文脈で説明することが求められると考えられる。
登録先を把握しているのは約半数、家庭の対策は「最低限の登録」が中心(→ 図14・図15)
長子の情報の登録・保存先を「ほぼすべて」「ある程度」把握している割合は約54%、「あまり」「ほとんど」把握していない割合は約30%、「分からない」は約12%であった(→ 図14)。家庭での取り組みは「登録・提供する情報を必要最低限にしている」が約40%で最多である一方、「特に行っていることはない」も約33%にのぼった(→ 図15)。
約3割は登録先を把握できておらず、「不要になったサービスの登録情報の見直し」(約19%)が進みにくい一因となっている可能性がある。家庭の取り組みは登録時の抑制が中心で、登録後の管理まで手が回っていない様子がうかがえる。
登録情報の確認・修正・削除をしやすくする設計は、利用者の不安を和らげ、継続利用を支える要素になると考えられる。
子どもの写真共有は限定公開・家族間が中心(→ 図16・図17)
長子の顔が分かる写真・動画は「家族・親族など特定の相手との共有」が約37%、「承認したフォロワーなど限定した相手への投稿」が約37%で、「不特定多数が見られる状態での投稿」は約11%にとどまった(→ 図16)。「一度も投稿・共有したことはない」は約25%である。本人の意向確認については「年齢や発達の状況から、本人への確認はまだ難しい」が約61%を占めた(→ 図17)。
写真の共有は公開範囲を意識した使い分けが進んでいるとみられる。また回答者の多くが3歳未満の子を持つため本人確認が難しい段階にあり、共有の判断が親に委ねられている現状がうかがえる。
公開範囲を細かく選べる写真共有機能は、子育て世帯にとって重要な安心材料になると考えられる。
登録への抵抗感を左右するのは「必要性・目的の分かりやすさ」(→ 図18)
長子の氏名・生年月日の登録・提供に抵抗を感じる相手は、「医療機関」が約7%、「習い事・学習塾」が約13%、「園・学校」が約18%と低い一方、「通販・小売店の会員サービス」約41%、「SNS」約40%では相対的に高かった(→ 図18)。
抵抗感の差は相手の業種そのものよりも、その情報がなぜ必要なのかが利用者に伝わっているかどうかによって生じていると考えられる。提供の目的が明確な場面では、子どもの情報であっても登録への抵抗は小さい。
子どもの情報を求める際に利用目的と必要性を丁寧に示すことで、登録への心理的なハードルを下げられる可能性がある。
企業に求めるのは「不正アクセス対策の徹底」が約60%(→ 図19)
長子の情報を扱う企業・施設・サービスに求めることは「不正アクセスや誤送信などを防ぐ対策を徹底すること」が約60%で最多となり、「集める情報を必要最低限にすること」約37%、「必須・任意の項目と、情報が必要な理由を明確にすること」約28%、「漏えいが起きた際、速やかに知らせること」約20%が続いた(→ 図19)。
漏えい後の対応以上に、まず漏らさないための対策が強く求められている。加えて収集の最小化や理由の明示が上位に入っており、情報の「集め方」そのものへの関心も高いことが示唆される。
防御対策の徹底とあわせ、収集項目の絞り込みと理由の明示に取り組む企業は、子育て世帯から選ばれる存在になり得ると考えられる。
4. 調査項目
- 長子の年齢
- 直近1か月の個人情報漏えいニュースの見聞き
- 個人情報に関するこれまでの経験
- 直近1か月に自身・家族に起きたこと
- 自身の個人情報が漏えいすることへの不安
- 長子の個人情報が漏えいすることへの不安
- 1か月前と比べた個人情報の取り扱いへの注意・関心の変化
- 個人情報の漏えいについて感じていること
- 直近1か月に個人情報を守るため新たに・意識して行ったこと
- 個人情報を守る行動を取るうえで困っていること
- 長子について登録・提出・投稿している情報
- 長子について漏れると特に心配な情報
- 長子の情報が漏れた場合に特に心配なこと
- 長子の情報の登録・保存先の把握度
- 長子の情報を扱う際に家庭で行っていること
- 長子の顔が分かる写真・動画の投稿・共有状況
- 写真・動画の投稿・共有時の長子本人への意向確認
- 長子の氏名・生年月日の登録・提供に抵抗を感じる相手
- 長子の情報を扱う企業・施設・サービスに特に求めること
- 長子の個人情報に関する不安・困った経験・要望(自由回答)
※本ブログにおいて掲載しているデータは調査の一部。掲載していないデータについては、プロモーション等のご提案の過程でお伝えをしていくので、お問合せいただきたい。
5. おわりに
本調査から、子育て世帯の約9割が直近1か月に個人情報漏えいの報道に接し、約半数が不審なメールやSMSを受け取るなど、漏えいがニュースの中の出来事ではなく身近な体験となっている実態が明らかになった(図2〜図4)。
不安は9割超に広がり、その強さは自身よりも子どもの情報で大きい。約3人に2人が1か月前より注意・関心を高めており、慣れや諦めはほとんど見られない。不安の核心は、漏れた情報が誰に渡り何に使われるのか分からない点にあると考えられる(図5〜図8)。
行動面では、サービスの利用を控える動きは限定的で、二段階認証やパスワードの見直しなど自分でできる防御を強める対応が中心である。一方、何をすればよいか、効果があるのかが分からないという壁もあり、子どもの情報の管理には支援の余地が残されている(図9・図10、図14〜図17)。
子どもの情報で特に懸念されているのは、住所や顔写真など身元・所在の特定につながる情報と、居場所の特定による危険である。企業に対しては不正アクセス対策の徹底に加え、収集の最小化と理由の明示が求められている。登録への抵抗感は必要性や目的が伝わるかどうかで変わることから、情報管理の取り組みを「子どもの安全」の文脈で分かりやすく発信する企業が、子育て世帯の信頼を得ていくと考えられる(図11〜図13、図18・図19)。
コズレ子育てマーケティング研究所では、こうした妊娠中のママや子育て中ママのリアルな声をお伝えすると共に、市場動向を明らかにしていきます。
本調査の詳細レポート、及び子育てマーケットに関する各種調査・コンサルティング・広告メニュー等についてご関心をお持ちいただいた場合にはお気軽にお問い合わせください。
(コズレ子育てマーケティング研究所 早川、中臣)
【グラフ】図1〜図19(全グラフまとめ)


【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。
出典:「子育て世帯の個人情報意識調査2026(株式会社コズレ)」https://cozre.co.jp/blog/23124
(コズレ子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)


