1.はじめに
商品を購入する際、自分が使用するためのものとして選択するときに比べ、他の誰かに贈るためのものとして選択するときのほうが、悩みや考慮すべき事項が増えるのではないだろうか。
義理の親へのお歳暮であれば、パパ(夫)に好みを聞いたり、手渡しがいいのか宅配でもいいのかと悩んだり。ママ友へのプチギフトであれば、相手の好みに合っているか、価格は高すぎないかなどに気を配ったりするだろう。
では、出産祝いとして「ベビーグッズ」を選択するとき、贈り手はどのようなことを意識するのだろうか。一方、受け手はどのような気持ちを抱くのだろうか。
本レポートでは、贈り手が出産祝いとして「ベビーグッズ」を選択するときに気にすることと、受け手がもらったモノに対して感じることの共通点と相違点などをお伝えする。
2.調査
主体:子育てマーケティング研究所
方法:インターネット・リサーチ
対象:末子妊娠中から1歳の子を持つ女性2,073名
(末子妊娠中:33.91%、末子0歳:49.35%、末子1歳:16.74%)
期間:2021年10月5日(火)~2021年10月19日(火)
3.結果・考察
人生で初めてもらった出産祝いの相手は誰で、何をもらう?
友人・知人からもらった割合が最も高い
本調査の有効回答者2,073名のうち、出産祝いをもらった経験があるママ1,650名に、人生で初めてもらった出産祝いの相手について聞いたところ、「友人・知人にもらった」と回答した割合が37.52%と最も多かった(図1)。
図1 出産祝いをもらった相手(単数回答 n=1,650)
出産祝いを贈るタイミングは、一般的に生後1週間から生後1ヶ月の間とされているため、受け手はこの時期に集中してもらうことになり、贈り手である友人・知人もまた、この時期に贈ることが予想される。
「出産」は、ママ本人だけでなく、パパや両家の親、家族にとって一大事である。そのため、他人でありながら受け手との関係性が深いであろう友人・知人は、受け手本人だけでなく、周囲の関係する人々に対して失礼のないよう贈る期間を順守した結果、人生で「初めて」受け取ってもらえたのかもしれない。
反対に親は、生後1週間から生後1ヶ月の間はママの産後ケアや赤ちゃんのお世話を手伝っている可能性もあるため、出産祝いを贈る時期はもっと後になるのかもしれない。また、親が出産前に出産準備品を贈った場合は、受け手には出産祝いとは認識されなかった可能性もある。
友人・知人からは「ベビーグッズ」、親からは「現金」をもらう割合が高い
次に、出産祝いをもらった相手に「何をもらったのか」を聞き、また贈り手別に示したのが図2と図3である。
もらった出産祝いとして多いのは、ベビーグッズ(現物)が68.42%、現金が38.61%であり、eギフトは現状0.36%とわずかであった。
図2 もらった出産祝い(複数回答 n=1,650)
図3 贈り手別 もらった出産祝い
贈り手別に見ると、友人・知人、兄弟・姉妹、職場(の上司・同僚・部下)からは、「ベビーグッズ」をもらった割合が圧倒的に高かった。一方、親戚からは、「ベビーグッズ」と「現金」の割合がほぼ等しく、親からは、ベビーグッズよりも「現金」をもらった割合のほうが高かった。
もらったベビーグッズの中では「ベビー服」の割合が最も高い
では、もらったベビーグッズの具体的な内容はどのようなものだろうか。全体の結果を見ると、ベビー服が50.58%と最も多く、続いてスタイが32.68%、おくるみ・タオル類が30.82%という結果になった(図4)。
図4 もらったベビーグッズ(複数回答 n=1,129)
なお、セット商品をもらった場合は、セット内容をすべて回答してもらっている。
上位に挙がっているベビーグッズの特徴としては、①ギフトセットにしやすい ②気軽に使ってもらえそう ③やや小物、なことである。
実際、多くのメーカーやブランドが、ベビー服やスタイ、おくるみやタオル類がセットになった出産祝いのギフトセットを販売している。
ベビーグッズの贈り手として「友人・知人」の割合が多いという結果からみても、大型商品や高額商品は避けられがちであることが分かる。
親からもらったベビーグッズは「ベビーカー」や「ベビー布団」が上位に
では、贈り手が「親」の場合、どのようなベビーグッズをもらったのだろうか。図5で示す通り、ベビー服が54.46%と最も多く、続いてベビーカーが34.65%、ベビー布団が30.69%という結果になった。
図5 親からもらったベビーグッズ(複数回答 n=202)
ベビー服がもっとも贈られる点は全体の結果と同じであるが、ベビーカーやベビー布団、チャイルドシートなどの大型商品や高額商品が上位にくるという結果がおもしろい。
この理由として、①受け手は親に対して欲しいものをリクエストしやすい ②経済的支援として高額商品を購入してあげたいという親側の気持ちの表れ、などが考えられる。
出産祝いにベビーグッズを贈る際は、受け手のイメージを気にするより自らの気持ちを込めるべき?
ところで、出産祝いを選ぶときに贈り手はどのようなことを意識して商品選択を行うのだろうか。また反対に、受け手はもらったモノに対してどのようなことを感じるのだろうか。両者を比較してみることにした。
なお本レポートでは、出産祝いの中でも「ベビーグッズを贈った人と受け取った人」に絞って考察してみたい。
ここでは、広島国際大学心理科学部 木野和代・岩城達也「贈り物に付与された価値とモノへの愛着―贈り主による認知の分析―(『感情心理学研究』第16巻第一号、2008年、73-86ページ)の77ページ(※1)より、「受け取り手への効果」(※2)、「品物に対するイメージ」(※3)の項目を参考に、選択肢として用い調査を行った。各項目は以下のとおりである。
図6 品物に対する評価項目
(引用元)
※1: 「贈り物に付与された価値とモノへの愛着―贈り主による認知の分析―(『感情心理学研究』第16巻第一号、2008年、73-86ページ)の77ページ
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsre/16/1/16_1_73/_pdf)
※2:同上
※3:同上
贈り手に対する質問は図6における表現で行い、「とてもよくあてはまる」「ややあてはまる」「どちらともいえない」「あまりあてはまらない」「全くあてはまらない」の5段階で回答してもらった。受け手に対しては、受け手からみた表現に変更し、同じく5段階で回答してもらった。
贈り手が出産祝いにベビーグッズを贈るときに気にしたのは、質が良く生活に役立つものであり、かつ受け手のイメージに合うこと
まず、贈り手が出産祝いのベビーグッズを選ぶときに意識したことの結果が以下である(図7)。なお、ここでは全体2,073名のうち、出産祝いにベビーグッズを贈った経験があるママ1,355名に聞いている。
図7 贈り手が出産祝いのベビーグッズを選ぶときに意識したこと
贈り手が商品選択の際に気にしたこととして割合が高かった上位3項目は、
・質がよい:89.67%(とてもよくあてはまる37.20%+ややあてはまる52.47%)
・生活に役立つ:87.75%(とてもよくあてはまる41.18%+ややあてはまる46.57%)
・相手のイメージに合う:80.66%(とてもよくあてはまる29.74%+ややあてはまる50.92%)
であった。
反対に、感情面への効果(「安らぎや安心感を与える」など)と自己表現性(「あなた自身を表現している」など)の項目は低い結果となった。無難なプレゼントのような「これを持っていれば安心かつ安らげるよ」という気持ちや、バレンタインデーのチョコレートのような「私の気持ちを受け取ってほしい」ということはあまり気にしていないということが分かった。
このことから、出産祝いにベビーグッズを贈る人は、贈り手自身や自らの気持ちを表現したものというよりも、①(高価ではないが)質がよく、②赤ちゃんとの生活に役立ち、③受け手のママのイメージに合う、ことを重視して商品選択をしているようである。
受け手が出産祝いにもらったベビーグッズに感じたのは、質が良く生活に役立つことのみならず、気持ちの高ぶり
次に、受け手が出産祝いとしてもらったベビーグッズに感じたことの結果が以下である(図8)。なお、ここでは全体2,073名のうち、出産祝いにベビーグッズをもらった経験があるママ1,129名に聞いている。
図8 受け手が出産祝いとしてもらったベビーグッズに感じたこと
受け手が出産祝いとしてもらったベビーグッズに感じたこととして割合が高かった上位3項目は、
・生活に役立つ:90.26%(とてもよくあてはまる56.60%+ややあてはまる33.66%)
・質がよい:87.34%(とてもよくあてはまる41.72%+ややあてはまる45.62%)
・生活を便利にする:86.36%(とてもよくあてはまる50.84%+ややあてはまる35.52%)
であった。
利便性や客観的価値(質のよさ)に関しては、贈り手が商品選択の際に気にした通りに、受け手にもそれが伝わっているようである一方、贈り手が商品選択の際に気にした「相手のイメージに合う(あなたのイメージに合う)」に関しては、受け手は65.99%(とてもよくあてはまる26.84%+ややあてはまる39.15%)と、贈り手が意識していたのと比べ低くなった。
むしろ、贈り手があまり気にしていなかった感情面への効果に関しては、「気持ちが高ぶる」が82.37%(とてもよくあてはまる44.02%+ややあてはまる38.35%)、「元気づけられる」が82.29%(とてもよくあてはまる46.59%+ややあてはまる35.70%)と高い効果が得られていることが分かった。
このことから、出産祝いにベビーグッズをもらった人はもらったモノに対して、①赤ちゃんとの生活で役立つと感じ、②質のよさも理解しているが、③贈り手が思っているほど自分のイメージには合っていないと感じている。しかし、贈り手が思っている以上に気持ちが高ぶったり元気づけられたりといった感情がアップするということも感じているようだ。
親から出産祝いとしてもらったベビーグッズに感じたのは、質が良く生活に役立つことのみならず、気持ちの安らぎや落ちつき
最後に、贈り手が「親(n=202)」だった場合に受け手が感じたことについてふれておきたい。その結果は以下のとおりである(図9)。
図9 贈り手が「親」だった場合に受け手が出産祝いとしてもらったベビーグッズに感じたこと
前述したとおり、親から贈られるベビーグッズは、大型商品や高額商品が多く、受け手からリクエストしやすいこともあり、「あなたの好みに合う」割合が82.67%(とてもよくあてはまる48.51%+ややあてはまる34.16%)と高くなっている。
また、感情面への効果として印象深い点としては、全体と比べて「安らぎや安心感がある」「気持ちが落ちつく」項目において、「あてはまる」と回答した割合が高いことである。
<安らぎや安心感がある>
・全体:56.24%(とてもよくあてはまる23.56%+ややあてはまる32.68%)
・贈り手が親の場合:68.81%(とてもよくあてはまる35.64%+ややあてはまる33.17%)
<気持ちが落ちつく>
・全体:43.58%(とてもよくあてはまる19.13%+ややあてはまる24.45%)
・贈り手が親の場合:50.50%(とてもよくあてはまる29.21%+ややあてはまる21.29%)
出産祝いにベビーグッズを贈ると、受け手は贈り手が思う以上に気持ちが高ぶったり元気づけられたりするということは前述したとおりだが、親から贈られるベビーグッズは、他人から贈られたベビーグッズよりも感情を穏やかにしてくれる効果もあるようだ。
これは、受け手が出産祝いを通して、親からの自分や孫への愛情を感じ取っているからではないかと考えられる。そのため、親から贈られるベビーグッズに対して感じることは、他人からのものに比べ、心理的な作用が大きく影響するのではないだろうか。
4. おわりに
本レポートでは、人生で初めてもらった出産祝いの相手や、もらったモノ、贈り手が出産祝いとして「ベビーグッズ」を選択する際に意識したこと、受け手がもらったモノに対して感じたことの共通点と相違点などをお伝えした。
贈り手との関係によって、もらう商品カテゴリーは異なり、親からもらうベビーグッズは他者からもらうそれと比べ、ベビーカーやベビー布団などの高額商品や大型商品が上位に挙がってくるのが特徴であった。これは他者に比べ、受け手がリクエストしやすいことが大きく影響していると言えるだろう。
また、出産祝いとしてベビーグッズを贈る際、贈り手が商品選択時に気にすることは「質がよい」こと、「生活に役立つ」こと、そして「相手のイメージに合う」ことであった。
しかし、受け手から見ると、あまり「自分のイメージに合う」とは感じていない代わりに、贈られたベビーグッズに対して「気持ちが高ぶる」「元気づけられる」といった感情面の効果を得ている割合が高くなったことは非常に興味深い結果である。
さらに、贈り手が親の場合は、各項目とも「とてもよくあてはまる」と回答した割合が全体と比べて大きく上回った。これは、受け手の親に対する心理的な作用が大いに影響しており、たとえ他人と同じ商品を親からもらったとしても評価は高くなると予想される。
以上のことから、出産祝いは、贈り手が思う以上に受け手は感情面でプラスな効果を得ていることが分かる。出産祝いを受け取ることで、「子育てをがんばろう」と思えたり、「私の子育てを応援してくれる人がいる」と思ってくれたりするのである。
(子育てマーケティング研究所 山内)
【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。
出典:「出産祝いに関する調査(株式会社コズレ)」
http://www.cozre.co.jp/blog/6993
(子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)