調査レポート

コロナ社会におけるママの自己肯定感の変化 ~自己肯定感の高さは育児用品の購買選択時にどのような影響を与えるか~

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ママの自己肯定感

1.はじめに

新型コロナウイルス感染拡大から3年目を迎えた2022年。

コロナ禍での妊娠・子育てが当たり前になりつつある中、ママ達の心理的側面である「自己肯定感」にはどのような変化があったのだろうか。

本レポートでは、2019年・2020年・2021年に行った3回の調査結果を比較し、ママの自己肯定感がどのように変化してきたのかをお伝えする。

また、自己肯定感の高さによって、育児用品や自らの洋服・化粧品の購入における考えにどのような影響があるのかについても考察していきたい。

2.調査

主体:子育てマーケティング研究所
方法:インターネット・リサーチ
対象:妊娠中、ならびに0歳以上の子を持つ女性1,482名
期間:2021年11月18日(木)~2021年12月3日(金)

3.結果・考察

ママの自己肯定感の変化

新型コロナウイルス流行前とくらべ、「自己肯定感が高い」妊婦さん・子育て中ママが増えている傾向にある

「次の各項目について、今現在のあなたのお気持ちをお答えください」という自己肯定感を測る10の質問項目(Mimura & Girffiths (2007)による日本語版RSES-J 自尊感情を測定する尺度)を用いて、2019年9月、2020年8月、そして2021年11月の調査結果を比較した。

ここでの自己肯定感とは、「自分は大切な存在」「自分はかけがえのない存在」だと思える心の状態のことを言う。

<自己肯定感を測る10の質問項目>

1.私は、自分自身にだいたい満足している。

2.時々、自分はまったくダメだと思うことがある。

3.私にはけっこう長所があると感じている。

4.私は、他の大半の人と同じくらいに物事がこなせる。

5.私には誇れるものが大してないと感じている。

6.時々、自分は役に立たないと強く感じることがある。

7.自分は少なくとも他の人と同じくらい価値のある人間だと感じている。

8.自分のことをもう少し尊敬できたらいいと思う。

9.よく、私は落ちこぼれだと思ってしまう。

10.私は、自分のことを前向きに考えている。

これらの各項目に対して、「4=強くそう思う、3=そう思う、2=そう思わない、1=強くそう思わない」という4段階で回答してもらった。

ただし、2.5.6.8.9の質問に対しては「4=強くそう思わない」「3=そう思わない」「2=そう思う」「1=強くそう思う」で測る。また、自己肯定感の高低基準は、上記10の質問結果の合計が「30点以上を高い、20点以下を低い」とされている。

では、妊婦さんと子育て中ママの自己肯定感の変化をみてみると、妊婦さんでは「自己肯定感が高い」割合は、2019年(18.30%)よりも2020年(20.60%)の方が高く、2021年は20.99%で2020年とほぼ同率となった。同様に、子育て中ママも「自己肯定感が高い」割合は、2019年(14.62%)よりも2020年(18.73%)の方が高く、2021年は18.23%で2020年とほぼ同率となった。

一方、子育て中ママの「自己肯定感が低い」割合は、2020年(13.41%)よりも2021年(16.79%)の方が高く、2019年とほぼ同率になった。

今回の調査結果から、新型コロナウイルス流行前(2019年9月)とくらべ、自己肯定感が高い妊婦さん・子育て中ママが増えている傾向にあることがわかった(図1)。

図1 妊婦さんと子育て中ママの自己肯定感の変化

ママの自己肯定感の変化

では、新型コロナウイルス流行後の2020年8月と2021年11月において、「自己肯定感が高い」割合が維持されている理由はどのようなことであろうか。自己肯定感が高いグループに属するママに聞いた「自己肯定感が高くなると思うとき」の自由記述回答から探っていく。

<自己肯定感が高くなると思うとき>

・「自分の中での目標や決めたことを達成できたとき」

・「コロナの影響もあり、人間関係を築くことが難しいと感じるようになったが、その分、人との繋がりの大切さを実感するようになった」

・「毎日平凡に暮らしていて、それが当たり前ではないなと感じた時にそう思います」

ママ自身で目標を決めたり、それを達成できたときは自分自身を褒めたりすることで自己肯定感が高くなるという回答が多く見受けられた。他人からの承認が得られにくいコロナ禍では、自分で自分をケアする力を身につけたママ達が増えているのではないかと想像する。

また、「人との繋がりの大切さを実感するようになった」という回答も興味深い理由のひとつだろう。コロナ流行前は、他人と交流することは当たり前のようにできていたが、現在では難しい。

コロナ禍という脅威の中で、人との繋がりや何気ない日常の大切さを感じているママ達も増えているのではないだろうか。

子育て中ママの育児用品・自身のモノ(洋服・化粧品)の購入に対する考え

自己肯定感が高いグループは、低いグループにくらべて「他人の意見を気にせず、自分が良いと思うものを購入したい」と思っている

つぎに、0歳以上の子どもを持つ子育て中ママ834名に、「育児用品を購入したり選んだりする際の、あなたの考えに近いものをお選びください」という質問と「あなた自身の洋服や化粧品を購入したり選んだりする際の、あなたの考えに近いものをお選びください」という2つの質問を行った。

これら2つの質問に対して、5つの項目を用意し「非常にそう思う・そう思う・どちらともいえない・そう思わない・全くそう思わない」の5段階で回答してもらった。

<5つの項目>

1.他人の意見を気にせず、自分が良いと思うものを購入したい。

2.高機能・高性能なものを選びたい。

3.高価格なものを選びたい。

4.長い期間使用できるものを選びたい。

5.失敗したくないと思う。

その結果を「自己肯定感が高いグループ」と「自己肯定感が低いグループ」で比較した結果が図2である。

図2 育児用品と自身のモノに対する考え

育児用品と自身のモノに対する考え

本レポートでは、5つの項目のうち「他人の意見を気にせず、自分が良いと思うものを購入したい」という項目に注目する。

まず、「育児用品」について見てみると、自己肯定感が高いグループは、自己肯定感が低いグループにくらべて「そう思う」と回答した割合が高い(高いグループ:63.16%、低いグループ:50.00%)。「自身の洋服や化粧品」についても、自己肯定感が高いグループの方が低いグループにくらべて「そう思う」と回答した割合が高いという結果になった(高いグループ:66.45%、低いグループ:60.00%)。

つまり、自己肯定感が低いグループに属するママ達は、自己肯定感が高いグループに属するママ達にくらべ、他人の意見を気にする傾向にあるのかもしれない。

たとえ「自分が良いと思った」商品であっても、他人に意見を求めたり、クチコミを気にする可能性が高い。その結果、「みんなが良いと言っている」全く別の商品を購入している可能性もある。

4.おわりに

本レポートでは、「妊婦さんと子育て中ママの自己肯定感の変化」と「子育て中ママの育児用品と自身のモノの購入における考え」についてお伝えした。

新型コロナウイルス流行前とくらべ、自己肯定感が高い妊婦さん・子育て中ママが増えている傾向が継続していることがわかった。

新型コロナウイルス流行後も「自己肯定感が高い」割合が維持されている理由として、「自分で自分をケアする力」や「何気ない日常の大切さを感じられる力」を身につけたママ達が増えているからではないかと考える。

また、育児用品や自身のモノの購入における考えのうち「他人の意見を気にせず、自分が良いと思うものを購入したい」という項目について、自己肯定感が高いグループのほうが低いグループにくらべ、その傾向が高いことがわかった。

不透明で先の見えない社会を生き抜くママたちも、ときに自分を自分で正当化できないときもあるだろう。それに気づいた家族や身近な人が育児で孤立しがちなママを褒めたり、何気ない日常の大切さを共有したりすることが大切なのかもしれない。

(子育てマーケティング研究所 山内)

 

【出典の記載についてのお願い】
調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。

出典:「新型コロナウイルスに関するママの自己肯定感調査(株式会社コズレ)」
http://www.cozre.co.jp/blog/7239
(子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)
(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)

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