調査レポート

11歳以下の新型コロナワクチン接種の実態調査(2022年3月) ~小児向けワクチン接種への理解と意識~

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子ども

1.はじめに

新型コロナウイルス感染症の流行から2年。最近では、オミクロン株による急速な新型コロナウイルスの感染拡大により、国内においても、感染者全体に占める小児(5~11歳)の割合が増えていることが報告された。

これらを背景に、日本でも5~11歳を対象としたファイザー社のワクチンが2022年1月21日に薬事承認され、接種がスタートした。なお、ファイザー社のワクチンは、5~11歳の小児においても、デルタ株等に対して、中和抗体価の上昇や発症予防効果が確認されているという(※1)

一方で、新型コロナワクチンの接種(成人)については、『新型コロナウイルス感染症の緊急のまん延予防のために実施する趣旨に鑑み、予防接種法上の「接種勧奨」及び「努力義務」の規定は原則として適用されることとなっていますが、

  • 小児におけるオミクロン株の感染状況(感染者、重症化の動向)が未だ確定的でないこと(増加傾向の途上にあること)
  • オミクロン株については小児における発症予防効果・重症化予防効果に関するエビデンスが必ずしも十分ではないこと(オミクロン株の出現以前の知見であること)

も踏まえ、現時点では、小児について努力義務の規定は適用せず、今後の最新の科学的知見を踏まえ、引き続き議論することが適当である』とされている。(※2より引用)

このような状況下で、ママパパたちは「感染への不安」と「ワクチン接種」に対してどのような理解と意識を持っているか報告する。

厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」

※1 https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0114.html

※2 https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0126.html

2.調査

調査主体:コズレ子育てマーケティング研究所

調査方法:インターネット・リサーチ

調査対象:末子妊娠中および15歳未満のお子さまをもつママパパ(うち女性1,172名)

調査期間:2022年3月4日(金)~2022年3月19日(土)

有効回答者数:1,192名(うち第一子妊娠中142名)

3.結果・考察

(1)感染が不安な主な理由は、0~4歳では「マスクができないから(23.03%)」、5~6歳では「保育所などで感染者が出ているから(53.06%)」

まず始めに0~4歳までの乳幼児がいる家庭(n=1,020)と、5~6歳までの未就学児がいる家庭(n=105)に、現在のお子さまの周囲での感染状況を聞いた(図1)。

0~4歳までの乳幼児がいる家庭では、「同居家族に感染者が出ている」「子どもの通う保育所・幼稚園・学校などで感染者が出ている」があわせて28.73%であるのに対し、5~6歳までの未就学児がいる家庭では、「同居家族に感染者が出ている」「子どもの通う保育所・幼稚園・学校などで感染者が出ている」があわせて73.34%(+44.61pt)と、感染と隣り合わせにある状況がわかる。このことからも、今回の接種対象を5歳以上に拡大した意図が伺える。

図1 お子さまの周囲での感染状況

お子さまの周囲での感染状況

次に、お子さま(0~6歳までの乳幼児・未就学児)の感染リスクをどのように感じているかを「保育状況別」に聞いた(図2)。その結果、お子さまの感染リスクが「かなり高い」及び「高い」と感じている割合は、「保育園児のいる家庭(n=332)」では57.23%、「幼稚園児のいる家庭(n=97)」では42.27%となり、「集団保育をしていない家庭(n=627)」では21.53%となった。このことから、集団保育時間が長くなるほど感染リスクが高いと感じていることがわかった。

図2 お子さまの感染リスク(保育状況別)

図2 お子さまの感染リスク(保育状況別)

しかし、お子さまのコロナ感染への不安度を同じく「保育状況別」に聞いたところ、お子さまへの感染が「とても不安」及び「やや不安」と感じている割合は、「保育園児のいる家庭」では88.86%、「幼稚園児のいる家庭」では87.63%、さらに「集団保育をしていない家庭」では90.91%となった(図3)。これは、感染のリスクの高い低いに関わらず、子どもがコロナに感染することに対して不安を感じていると考えられる。

図3 お子さまのコロナ感染への不安度(保育状況別)

図3 お子さまのコロナ感染への不安度(保育状況別)

次に、お子さまの感染リスクが高いと考える理由を年齢別に比較した(図4)。0~4歳までの乳幼児がいる家庭では最も多いのが「保育所などで感染者が出ているから(37.90%)」で、次いで「マスクができないから(23.03%)」となった。5~6歳までの未就学児がいる家庭では最も多いのが「保育所などで感染者が出ているから(53.06%)」で、次いで「通園しているから(24.49%)」となった。年齢によって不安を感じる理由の程度が異なることがわかる。

図4 お子さまの感染リスクが高いと考える理由

図4 お子さまの感染リスクが高いと考える理由

(2)5~11歳に対するワクチン接種承認は8割以上に認知されているが、半数以上が「しばらく様子を見てから接種したい」と回答

続いて、日本でも5~11歳を対象にワクチン接種が承認されたことを受け、「5~11歳のワクチン接種が承認されたことについて知っているか」を聞いた(図5)。

今回接種対象となった「5~6歳の未就学児(n=105)」では82.86%、「11歳未満の小学生(n=69)」では79.71%と、該当する年齢層においては8割程度、内容まで認知されていることが明らかになった。

図5 「5~11歳までのワクチン接種承認」に対する認知度

「5~11歳までのワクチン接種承認」に対する認知度

次に、今回新たに対象となった【5~11歳のお子さまについて】、該当するお子さまをお持ちの家庭(n =145)に、ワクチン接種を希望するか否か聞いた(図6)。その結果、2022年3月の調査時点において「すでに1回以上接種した」のは1%ほどにすぎず、「できるだけ早く接種をしたい」が16.55%、「しばらく様子を見てから接種したい」が56.55%と、今後の接種希望者が7割強となった。一方、「接種は希望しない」も25.52%と、対象の1/4はワクチン接種に対し消極的であることもわかった。

図6 【5~11歳のお子さまについて】ワクチン接種を希望するか否か

【5~11歳のお子さまについて】ワクチン接種を希望するか否か

そこで、お子さまへの接種意向と周囲の感染状況の関係を比較した(図7)。できるだけ早く接種をしたいと回答した家庭(n=24)のうち66.67%は「子どもの通う保健所・幼稚園・学校などで感染者が出ている」状況にあり、しばらく様子を見てから接種したいと回答した家庭(n=82)では74.39%が「子どもの通う保健所・幼稚園・学校などで感染者が出ている」状況にある。

一方で、接種は希望しないと回答した家庭(n=37)では、「同居家族に感染者が出ている(13.51%)」割合が他の接種意向回答群と比較して高いが、「子どもの通う保健所・幼稚園・学校などで感染者が出ている(56.76%)」割合は他の接種意向回答群と比較して低かった。ただし、周囲の感染状況(感染者が出ている、一方、感染が迫っている様子がない)は接種意向に大きな影響を及ぼしていないことがわかった。

図7 「5~11歳までのお子さまのワクチン接種」を望む割合と周囲の感染状況

「5~11歳までのお子さまのワクチン接種」を望む割合と周囲の感染状況

次に、お子さまへの接種意向と、ウイルス感染への不安度の関係を比較した(図8)。その結果、できるだけ早く接種をしたいと回答した家庭(n=24)では「とても不安+やや不安」の割合が86.96%、しばらく様子を見てから接種したいと回答した家庭(n=82)では96.20%、接種は希望しないと回答した家庭(n=37)では80.00%となった。このことから、感染に対する不安を感じていないから接種を見送っているのではなく、接種を希望しない層も同様に8割以上の家庭でお子さまへの感染に不安を感じていることが明らかになった。

図8 「5~11歳までのお子さまのワクチン接種」を望む割合とウイルス感染への不安度

「5~11歳までのお子さまのワクチン接種」を望む割合とウイルス感染への不安度

(3)ワクチン接種を希望する/しないの差は、ワクチン接種への不安度が大きな要因となっている

次に、お子さまへの接種意向と5~11歳のお子さまを持つママパパの接種状況との関係を比較した(図9)。ママパパに接種経験がある場合「お子さまへの接種は希望しない」割合は17.36%であるが、ママパパに接種経験がない場合「お子さまへの接種は希望しない」割合は68.18%(+50.82pt)にも上った。このことから、ママパパに接種経験がない家庭ほど、お子さまのワクチン接種も望んでいないことが明らかになった。

図9 「5~11歳までのお子さまのワクチン接種」を望む割合とママパパの接種状況

「5~11歳までのお子さまのワクチン接種」を望む割合とママパパの接種状況

さらに、お子さまへの接種意向とワクチン接種に対する不安度との関係を比較した(図10)。その結果、「接種は希望しない」と回答した被験者のうち75.68%がとても不安、16.22%がやや不安と回答し、「しばらく様子を見てから接種したい」と回答した被験者のうち51.22%がとても不安、43.90%がやや不安と回答した。

つまり、接種を希望する/しないの差は、ワクチン接種への不安度が大きな要因となっていると考えらえる。

図10 「5~11歳までのお子さまのワクチン接種」を望む割合とワクチン接種への不安度

「5~11歳までのお子さまのワクチン接種」を望む割合とワクチン接種への不安度

そこで、前問で「接種は希望しない」と回答した被験者(n=37)にワクチン接種を希望しない主な理由を聞いた(図11)。その結果、「安全性に疑問(67.57%)」が最も多く、次いで「副反応が心配(13.51%)」となった。このことから、ワクチンの安全性が確保されることで初めてワクチン接種が進むのではないかと考えられる。

図11 【5~11歳のお子さまについて】ワクチン接種を希望しない主な理由

【5~11歳のお子さまについて】ワクチン接種を希望しない主な理由

ワクチン接種を不安に感じる具体的な理由を自由回答で聞いたところ、

事例が無いので副反応等が心配です。実際にコロナに感染したときの子どもの症状よりひどくなるのでは、と接種する決心がまだつかないです。』

『私自身も副反応がひどかったので、このつらさを小さな子どもが味わうのかと思うと不安だし、長期的にみたときのワクチンの影響については未知なので接種させるのは不安。』

という声が見られた。

一方、コロナ禍での体験談として、

『保育園に通わせています。乳児クラスはマスクができないので感染者が出ると不安です。2月には息子のクラスで感染者が出て濃厚接触者になってしまいました。』

昨年夏に子どもが陽性となり、私も陽性であった。そのとき妊娠初期だったので本当に不安だった。子どもだけの陽性だったら一人でホテル療養はできず、家族全滅だったかもしれない。特に小さい子にはかかってほしくないと思う。』

という声が挙がった。

4.おわりに

2022年1月からオミクロン株による「第6波」で爆発的に感染者数が増えたことは記憶に新しい。その後、2月上旬をピークに緩やかな減少傾向になったものの、新年度を迎え、再び新規感染者数が増加傾向に転じており、「第7波」が懸念されている。

ママパパたちは「感染への不安」と「ワクチン接種に対する不安」の両方を抱えながら、ワクチン接種をするか/しないかの選択を迫られている実態が明らかになった。もちろん「しばらく様子を見てから判断する」という選択があっても良いだろう。また、迷っている場合には、かかりつけ医に相談するなど、専門家を頼ることも必要になってくるだろう。

子どもにとって最適な選択をしたならば、どちらを選択しても、親が子の健康を願う気持ちは変わらないことを互いに認め合いたいと思う。

(子育てマーケティング研究所 惣宇利)

 

【出典の記載についてのお願い】

調査結果を利用する際は出典を記載してください。出典の記載例は以下の通りです。

出典:「11歳以下の新型コロナワクチン接種の実態調査 2022年3月(株式会社コズレ)」

http://www.cozre.co.jp/blog/7673

(子育てマーケティング研究所 http://www.cozre.co.jp/blog/)

(cozre[コズレ]マガジン http://feature.cozre.jp/)

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